第69回日本皮膚科学会西部支部学術大会
第69回日本皮膚科学会西部支部学術大会
2017年10月28日~29日
熊本県熊本市
大阪大学医学部皮膚科学教室
高藤円香
2017年10月28日~29日の間、熊本大学 尹浩信先生の会頭のもとくまもと県民交流館パレアと熊本市国際交流会館にて第69回日本皮膚科学会西部支部学術大会が開催され、学会へ参加させていただきました。熊本県は、私自身が南スーダンへPKO活動中に熊本の震災が発災し、自衛隊の同期が救援活動に行った場所であり、震災後始めて訪れました。会場が2つに分かれていたことで、自然と商店街などを歩き、ハロウィン前ということもあってか、仮装している人が集まっていたり、ほんの少し前に震災があったとは思えないほど活気に満ちていました。
懇親会ではくまモンのお出迎え、武将に扮したパフォーマーによる演舞の披露、バイオリニストのAyasaさんによるバイオリンで情熱大陸、前前前世やオリジナル曲など迫力のあるバイオリンの生演奏に心踊りました。
さて、今回の学会のテーマは「熊本と皮膚科学を楽しもう」であり、アナライザーを使用した悪性腫瘍や膠原病の治療や診断に関する参加型のセッション、診療ガイドライン講習会などがあり、大変勉強になりました。
さらにはシンポジウムやセミナーで、通院距離や費用対効果といった問題、患者のモチベーションを上げることによるアドヒアランスを良くするための工夫といった問題にまでふみこみ、より良い治療とはということを考えるいい機会となりました。
今回、私は「小児に発症した尋常性白斑とその鑑別疾患の臨床及び超微細構造の検討」という演題で発表させていただきました。小児の尋常性白斑と脱色素性母斑の間には鑑別について、Wood灯、ダーモスコピー所見、病理組織、電顕における検討の結果を発表しました。今後も低侵襲な鑑別の方法について層別化していくなど、さらに精進してまいりたいと思います。
今回、大変光栄なことに、今回演題賞銀賞に選出して頂きました。会頭の尹教授に深くお礼申し上げます。
高藤円香
平成29(2017)年10月30日掲載
9th World Congress on Itch
9th World Congress on Itch
October 15-17, 2017
Wroclaw, Poland
大阪大学医学部皮膚科学教室
大学院博士課程
奥田 英右
ポーランドのヴロツワフで開催されました第9回世界かゆみ学会に参加させていただきました。今回海外の学会に初めて参加させていただいたのですが、Discussionも活発にされており、海外の学会の雰囲気に触れることができました。 阪大の新入生を対象にしたアトピー検診についてポスター発表をさせていただきました。
学会では、様々な発表がされており最近の知見に触れることができました。
▷アップルウオッチを用いたかゆみ研究では、計測された掻破時間とビデオを用いた実際の掻破時間の間には相関した関係がみられる。▷乾癬, アトピー性皮膚炎の病変部位において、透明化技術を用いて神経の数, フィラメントの長さを解析できる。
学会開催前に皮膚科施設を訪問させていただき、皮膚科学の発展に貢献された先生方のお話について伺いました。 皮膚科施設では、外来診察室など様々なところを見学させていただきました。 ムラージュでは、様々な病気の描写がなされており、その精巧さに驚きました。
今回のオープニングセレモニーの開催された博物館の横には、学会の表紙にもでてくる銅像がありました。オープニングセレモニーでは、plenary sessionのほかに、ピアノコンサート等のイベントもありました。合唱、アカペラもあり楽しい雰囲気でした。また、学会期間中に他大学の先生方と交流させていただくことができました。かゆみの研究内容について、意見を交わすことができ有意義な時間を過ごすことができました。
- ヴロツワフの小人
- Wroclaw University
奥田 英右
平成29(2017)年10月25日掲載
第81回日本皮膚科学会東部支部学術大会
第81回日本皮膚科学会東部支部学術大会
The 81st Annual Meeting of the Eastern Division of JDA
2017年9月23日(土)・24日(日)
ビッグパレットふくしま
会長:山本 俊幸(福島県立医科大学医学部皮膚科学講座 教授)
大阪大学医学部皮膚科学教室
林 美沙
2017年9月23日~24日、福島県立医科大学 山本俊幸先生の会頭のもとビッグパレットふくしまで第81回日本皮膚科学会東部支部学術大会が開催され、参加させていただきました。福島県は、昨年の第40回皮膚脈管・膠原病研究会、今年の春の第13回加齢皮膚医学研究会に続いて3回目の訪問でした。今までは福島市での開催であったため、郡山ははじめてで、駅前がとても栄えており震災があったことを感じさせないくらい活気を感じました。懇親会ではラーメンやご当地餃子などもあり、とてもおいしくいただきました。また懇親会の最後には山本会頭のサプライズダンスを拝見でき、華麗に踊られる姿に驚くとともにすばらしい思い出ができました。
さて、今回の学会のテーマは「自分で掴み取る皮膚科学」でした。診断基準やガイドラインが年々ふえてきており、診断をある程度公平につけれるようになってきていますが、皮膚をみて、皮膚に触れて診断をするという皮膚科医の醍醐味を改めて考えさせられるプログラムであったと思います。特にシンポジウム「原著に触れる旅」ではいろいろな疾患の原点を見ることができ、拝聴していて純粋に楽しく思いました。また免疫チェックポイント阻害薬や生物学的製剤が多数発売されここ数年で皮膚科の治療は大きく変わってきていますが、その中で掌蹠膿疱症の口腔内のマイクロバイオーム解析や金属アレルギーの話題など、治療の基本となる患者指導がとても大切であるということを再確認できたと思います。
私は「ツベルクリン反応施行後急性増悪した、IL-36RN遺伝子のヘテロ変異を認めた膿疱性乾癬の1例」について発表させていただきました。IL-36RN遺伝子の変異については近年多数報告されており既知の事実ではありますが、その発症に関与するトリガーなどはまだ不明なことが多数あります。今回われわれはツベルクリン反応で誘発された症例を経験し報告させていただきました。報告に際しご協力いただきました、藤田保健衛生大学 杉浦一充教授、名古屋大学 秋山真志教授に感謝致します。大変光栄なことに、今回会長賞に選出して頂きました。会頭の山本教授に深くお礼申し上げます。
林 美沙
平成29(2017)年10月23日掲載
47th Annual ESDR Meeting 2017
47th Annual ESDR Meeting 2017
European Society for Dermatological Research
Salzburg, Austria
27-30 September 2017
大阪大学医学部皮膚科学教室
神谷 智
先日、オーストリアのザルツブルクで開催されたESDRに参加してきました。私自身は今回始めて、“Exploring the niche of dermal neurofibroma in von Recklinghausen’s disease: evidence for the involvement of polydom ”という、自分の研究テーマを発表する貴重な機会をいただきました(写真)。ポスター発表だけでも700以上ある大規模な学会で、講演を含めて見て回れたのは一部だけでしたが、印象に残ったものをいくつか報告します。
まず私の研究テーマでもある、neurofibromatosis type 1(以下、NF1)関連のポスターでいくつか。Dr. S Peltonenはポスター発表にて、NF1の患者における小児の悪性腫瘍のリスクを、1420名の患者でコホート研究された結果を発表されていた。確かに中枢神経系を中心に注意が必要という結果で、あらためてNF1の患者で画像検査をフォローすることの大切さを実感しました。
Dr. J Leppavitraは、NF1患者での先天奇形の頻度を、1410人の患者のretrospective
studyされた結果を報告されていました。心血管系、泌尿器系、筋骨格系、頭頸部といった区分に分けて検討されていて、日常の診療でもあらためて注意が必要だと感じました。
北海道大学の乃村先生は、先天性魚鱗癬の中でもichthyosis with confetti type1(以下、IWC-Ⅰ)という病型の症例報告をされていました。この疾患は、17番染色体のKRT10遺伝子に片アレルに変異があるが、時間経過とともに組み換えが起こり、両アレルとも正常なアレルの細胞ができ、正常な皮膚領域を形成するという疾患ということです。もしほかの遺伝疾患でもこのような現象が起こるのであれば治療もしやすくなるだろうと思ったのですが、私が研究しているNF1では、年齢とともに皮膚型の腫瘍がむしろ増加する場合が多いですし、どうやらIWC-Ⅰ特有の現象のようです。以前、私は基礎の研究室で組み換えの実験をしていたこともあり、興味深く拝聴しました。学会期間中は天候にも恵まれ、充実した出張でした。
神谷 智
平成29(2017)年10月23日掲載
9th World Congress on Itch
9th World Congress on Itch
Wroclaw, Poland
平成29年10月15日-17日
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
第9回世界痒み学会に参加した。第8回は2年前に私たちが奈良で開催し、本年はポーランドのブロツワフ大学皮膚科の主催であった。3年前、同皮膚科でセミナーを行って以来2回目の訪問となった。ポーランド語は耳障りがよく、当時使った「こんにちわ」「お会いできて光栄です」「おいしいです」などといった言葉を覚えている自分に驚いた。今回、新しく私の脳に残った言葉を一つ。ポーランドの象徴の一つ「こうのとり」は「Bocian(ボッチャン)」。街の紹介は過去の訪問記に譲ることとする。学会で得られた知見と私の感じたことについて述べてみたい。
▷真性多血症の一症状として知られるaquagenic pruritusは水に皮膚が浸漬したのち1?10分で激しい痒みの生じる疾患である。これまでハイドロキシウレアや光線治療が適用されてきたが、逆に痒みを増強することも少なくないという。患者のなかにJAK2の変異が見つかっており、JAK2の治験が始まっているとのことたった。このほか、JAKを標的とした治療は様々な疾患に適用されつつあるようで学会内で異様な盛り上がりを見せていた。私が2日目午後のconcurrent1の座長をしている間、concurrentIIでは最近CellにIL-4が痒み(JAKを含む)に関わるとする論文を出したキム ブライアンが飛び入りで発表を行い、会場が盛り上がっていたようだ。午前のセッションではバウチスタらのグループがCXCL1/IL-8と痒みの関連を報告していたのだが、双方の研究グループの研究手法で共通していたのがVitD3によって皮疹を誘発した”アトピー(?)”モデル動物を用いていることであった。会場からはビタミンD3がアトピーのどういった側面を表現しているのが明らかにしなければならないという意見が多く出され、私も同感であった。▷これらのことからマウスモデルがヒトの痒みを真の意味で表現しているのかについて改めて「懐疑的」に考えさせられた。そう思ったVitD3モデル以外の理由として、いくつかの演題が「痒み」をsomatosensory sensationの一つとして扱っていたことである。気持ちは分からないでもない。アロネシスは触(圧)覚や熱痛覚は痒みを増強する現象を指すため、痒みは体性感覚と密接な関係がある。しかし教科書の体性感覚の記載には「痒み」は含まれていない。体性感覚をマウスの有毛部で検討した場合、その結果を直接ヒトに落とし込むことができるだろうか?全身毛で覆われる動物の毛で受容する触覚は種ごとに特徴的な発達を示しているだろう。▷この疑問は私たちの行っている研究にも示唆を与える。本学会では研究生の松本さんと1年半検討してきたアロネシスに関する研究結果を報告した。表皮は体外からの様々な刺激を感受し、グルココルチコイドを産生し恒常性を維持しようとする。表皮特異的にグルココルチコイド産生経路を欠損させた(表皮がグルココルチコイドを産生できない)マウスは触(圧)覚を加えると掻破行動を示す。これは表皮由来の神経栄養因子やケモカインによる神経の感受性亢進によって生じていた。触覚と痒みの関係を考える上で毛による感覚感受を常に念頭におくべきであろう。片山先生はこのグルココルチコイド変換酵素であるHSD11b1の発見の経緯、アトピー性皮膚炎の病態への関与と臨床上問題となっているsteroid withdrawalを取り上げ、皮膚ホメオスタシスが損なわれることが慢性アレルギー炎症と痒みに関わることを発表された。▷順天堂大学の富永先生は風によるアロネシス誘発モデルを提唱された。このアイデアには感服する。風を感受するのが毛であるならば、本研究は触覚受容と痒み発生における毛の重要性を間接的に立証している。
▷話しを少しもどす。バウチスタのグループはCXCL1が好中球の遊走だけでなく痒みの誘発にも関わるとした。私たちは過去に血管内皮細胞を冷却するとCXCR2リガンドが高発現し、冬季潰瘍性網状皮班や凍傷で増加することを示した(Yang L, Murota H, , Katayama I, et al. J Dermatol Sci. 2016 ;82:57-9. )。私たちの結果と合われば、凍瘡(しもやけ)が痒いのは冷却された血管内皮細胞に由来するCXCL1が関わるのかもしれない。▷治療の面では心理面に関する議論を今後活発に行うべきとの意見が出された。心理的な側面が痒みに与える影響は大きく、特に疼痛、のどの渇き、感情(情動)が大きな影響を与えるのだそうだ。またplacebo, nocebo効果は痒みに強く影響するため、これらは臨床研究の結果に大きな影響を与える。ネザーランドのエバー教授は”verbal suggestions and conditioning”が慢性痒みの解決に有効と解説した。臨床試験では効果?副作用の説明がplacebo/nocebo効果を生む可能性は否定できない。▷疫学では透析の痒みについて、2013年以降、患者数は減少傾向にあるものの、半数が痒みを訴えているようである。特に四肢、頭皮、背中の痒みが透析・腎関連の特徴であるとのことだった。▷私どもの教室の奥田先生は思春期アトピーの痒みの重症度に関わる悪化因子について検討した結果を報告した。▷片山教授が座長を担当されたセッションではかねてからの知人であるシンガポールスキンセンターのテイ先生によりヒト皮膚の立体的な神経支配を私たちと全く同じ透明化技術を用いて3Dイメージングされていていた。神経の数、神経の分岐数なども測定可能になったという。▷フランスのブレスト大のミザリー先生のグループはシガテラの問題を取り上げた。日本でも問題となる魚毒である。私が責任編集させていただきたVisualDermatology(今後発売予定)では、琉球大学の山本雄一先生にお願いし、シガテラの情報を寄稿いただいているのでご一読いただきたい。▷このほか、TLR3, MrgprA3/C11、Α2 GABAAなどの関与について興味深い発表を拝聴した。
写真説明:ブロツワフの名物の一つが街のいたるところにある小人の像である。初日の記念講演は歴史的建造物であるブロツワフ大学の教室で行われた。大学に掲げられたWCIの旗のもと、本を読むのは小人の教授だ。風貌から垣間見れる知性、暖かさ、吸い込まれそうな懐の深さに圧倒される。
痒みとは何か?教科書的には痒みは体性感覚に含まれないため、その実態を説明しにくい感覚である。。痒みと痛みは同じかといえば”Yes and No”である。痒みよと痛みは上向性の伝達シグナルと下降抑制系を部分的に共有しているようだが、outputは異なる。痒みをイメージする映像を見ると、体性感覚にも異常が出る”下降賦活(?)”の経路も存在するとのことだ。さらに痒み感覚は多様である。”くすぐったい””ちくちくする”、”ヒリヒリする’など様々な痒みがある。この多様性はなぜ生じるのだろうか?痒みは未解決の問題が多いものの、見方を変えると科学的好奇心を「掻き」立てる研究テーマである。皮膚科医の臨床的な視点はその解釈により深みを与えるはずだ。
室田 浩之
平成29(2017)年10月20日掲載
IPCC(International Pigment Cell Conference)2017
IInternational Pigment Cell Conference (IPCC)
Denver, Aug 25~30,2017
平成29年8月26日-30日
大阪大学医学部皮膚科学教室
高藤円香
International Pigment Cell Conference (IPCC)2017へ参加させていただきました。初めての国際学会であり、さらに日本からの出発前に約1時間の遅延があり、どうなるのか、何もかもがドキドキでした。
入国審査にも1時間半の時間がかかり、やっとの思いで到着したDenverの街は、白人が多いアメリカンな街でしたが、気温は高い一方で湿度が低くかなり過ごしやすい街で、滞在間は日本の夏を忘れて過ごすことができました。
今回、光栄にもJSPCRよりtravel awardsという身に余る賞をいただくこともできました。(写真上)
しかしながら、全てが英語のセッションはそもそも基礎研究的な知識の乏しい私には”ただ英語のシャワーを浴びてる”状態であり、冗談で笑っている周囲の人たちに置いていかれながらの聴講でした。
メラノーマの分野ではランチョンセミナーでは免疫チェックポイント阻害薬の併用に関する最新の情報や、白斑に関しては活性酸素の産生の原因やsuction blisterなどによるNCESのnbUVB照射によるEカドヘリンやMMPSの値の検討など、私自身が関わっている分野にも色々な報告がなされ、今後とも勉強が必要だと感じました。
間の時間には、山形大学や近畿大学の先生方ともお話しさせていただく機会があり、日本の様々なところで研究がなされているのだと実感しました。参加までに様々なご指導ご鞭撻いただいた先生方に深く感謝するとともに、今後とも精進してまいります。
平成29(2017)年9月8日掲載
IPCC(International Pigment Cell Conference)2017
IPCC(International Pigment Cell Conference)2017
アメリカコロラド州デンバー
平成29年8月26日-30日
大阪大学医学部皮膚科学教室
種村 篤
8月26日-30日アメリカコロラド州デンバーで開催されたIPCC(International Pigment Cell Conference)2017に参加した。関空よりロサンゼルス経由でデンバーに向かったが、特に帰国時乗り継ぎを入れると合計20時間をなかなかハードであった。デンバー国際空港は予想以上に巨大で、滑走路が4本もあるアメリカ国内のハブ空港だそうである。国内からはJSPCR会員の先生方中心に約50名参加されたそうで、多くの日本の先生方ともお話させて頂いた。次回2020年は山形大学皮膚科鈴木民夫教授を会頭として、山形市内で開催される予定であり、鈴木教授・林雅浩先生らが精力的に情報収集されていた。さて、当科からは片山教授・壽助教・高藤先生および私の4名が参加し、片山教授は白斑に於ける肥満細胞、末梢神経との関連性を口演され大変勉強になった(CS15.05)。また、ローマのPicardo先生より、メラノサイト合成時産生されるROSが白斑患者のメラノサイトで亢進し、ROS代謝関連共転写因子であるPGC1aが代償的に増加していること、ROSが表皮由来E-カドヘリンの発現を低下させメラノサイトが遊離しやすくなることを分かりやすく説明されていた(CS03.02)。
免疫学的側面では、マサチューセッツのHarris先生のグループより、CXCR3-CXCL9/10軸の免疫応答が白斑で重要である報告がここ数年なされているが、今回血清中およびsuction blister内容液中でもCXCL9/10が増加している事、そのシグナルを受け、CXCR3+CD8+CD69+CD49a/103+ Tissue effector memory T細胞がNKG2Dを発現し、IFN-gやTNF-aを産生、炎症を惹起する事が発表されていた(CS03.05、写真1)。ただ、白斑に特異的な反応ではなくJAKシグナルと関連した一つのストーリーが出来つつあるが、全ての白斑の病態に関わる免疫応答を説明出来た訳ではないと考える。白斑の発症(もしくは維持・病勢)に免疫応答は確かに関与し、メラノサイト特異抗原に対する細胞障害性の増強およびアナジー機構の破綻がその一端にあると個人的には信じているが(本学会にてポスター発表、P110)。白斑の外科治療、特に細胞治療に関する具体的な手順も報告され大変参考になった(CS09.04、写真2)。
このように臨床から基礎まで特に白斑を中心に聴講したが、メラノーマの発表も最新データがランチョンセミナーなどで発表され知識の整理に役立った。今回の学会でお会いした先生方と改めて親睦を深める事が出来、この場で感謝申し上げます。
平成29(2017)年9月5日掲載
第33回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会
第33回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会
The 33rd Annual Meeting of the Japanese Skin Cancer Society
大阪大学医学部皮膚科学教室
種村 篤
6月30日―7月1日秋田で開催された第33回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会に参加してきた。大学赴任以来ほぼ毎年この学術大会に参加しているが、秋田に行くのは人生初めてであり、学会で最新情報に触れるのと同時に、稲庭うどん・きりたんぽ・秋田の日本酒なども期待した。前夜祭?として、米国留学先でご一緒した秋田大学呼吸器外科・消化器外科の先生らと旧知の話しに盛り上がり、親睦を深めさせて頂いた。学会では、ここ数年のメラノーマ治療及び免疫学的研究の最新情報はもちろんのこと、特に血管肉腫のシンポジウムを拝聴し、日常診療への応用に大変有意義であった。多くの新規薬剤開発が進む中、それらを如何に効率的にかつ安全に使用するかの課題をクリアしていく必要がある。また、がん遺伝子発見で御高名な黒木登志夫先生によるベキ乗側の御講演は、聞きなれないタイトルながら世の中に生じる無秩序にも統計学的に一定の規則が存在することを分かりやすくお話され、大変感銘を受けた。1日目の朝、指導していた高藤先生、太田先生の発表を残念ながら別セッションでの座長のため聴講出来なかったが、貴重な質疑応答をして頂いたと聞き安心した。2日目の朝を除き天候にも恵まれ、皮膚悪性腫瘍に関する知識のアップデートと同時に全国の皮膚悪性腫瘍に従事される先生方との親睦が出来た学会であった。もちろん上記3名物も楽しませて頂いた。
(写真)米国ジョンウェインがん研究所留学をきっかけに仲良くさせて頂いている先生方とのスナップ。中川先生、佐藤先生、本当に色々お世話になり有難うございました。
平成29(2017)年7月17日掲載
SID参加記
76TH ANNUAL MEETING PORTLAND OREGON
APRIL 26-29, 2017
OREGON CONVENTION CENTER
大阪大学医学部皮膚科学教室
神谷 智
先日、アメリカのオレゴン州ポートランドで開催されたSIDに参加してきました。
印象に残ったものをいくつか。1日目のState of the Art Plenary Lectureで、Lu Le先生の講演は毛髪の色素に関するものでしたが、neurofibromaの形成にかかわる因子についての解説もされました。von Recklinghausen’ diseaseのneurofibromaは私の研究テーマであり、大変興味深く聞くことができました。
2日目の午前のClinical Scholars Program Sessionで、Anthony Oro先生の講演では、水疱症患者の細胞にhomologous recombinationの起こったものを治療に活かすような話でした。かつて私は基礎の教室でCRISPR Cas9 systemを用いてhomologous recombinationを効率的に起こせたら、と考え実験していましたが、今後このようなアプローチも重要になるのだと改めて実感しました。続くKeith Choate先生は稀な皮膚疾患の遺伝子解析の話をされました。次世代シークエンス技術などにより皮膚科分野での遺伝子解析も飛躍的に進んでいるようで、興味深く拝聴しました。
2日目の午後にはJAK inhibitorのSymposiumがあり、出席しました。白斑、アトピー性皮膚炎などで研究がなされているということでした。特に脱毛症の患者の治療で効果を挙げつつあるというのは印象的で、この分野も興味深いと感じました。
最終日のClinical Scholars Program Sessionでは、Paul Nghiem先生の講演の中に、抗PD1抗体を用いてSCCやBCCを治療したという話がありました。私は抗PD1抗体をいえばmalignant melanomaのイメージしかなかったのですが、皮膚科領域でもほかの腫瘍にも応用できる可能性があるということで、興味深く拝聴しました。
今回、私にとっては初めての海外での学会でした。当初は高度な研究の話を英語で聞く、ということで不安だったのですが、終わってみるといろいろ勉強になることが多かったです。学会参加をお許し下さった片山先生、学会中お世話になった室田先生、松本さん、それに学会中の代診をお願いした山賀先生、奥田先生に御礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
平成29(2017)年5月15日掲載
76TH ANNUAL MEETING PORTLAND OREGON
76TH ANNUAL MEETING PORTLAND OREGON
APRIL 26-29, 2017
OREGON CONVENTION CENTER
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
オレゴン州ポートランドで開催されたSIDに参加した。ポートランドの天気は霧雨ですっきりしない、寒い天候であった。昨年のスコッツデールとのギャップが大きい。雨だったものの、ポートランド内を運行するライトレールが大変便利で、学会参加者に配布されたフリーチケットのおかげで快適に移動できた。街の印象だが、普通に会場と宿泊先を往復するだけでも親切な人に出会ったり、突然危ない雰囲気を感じたり、不思議な雰囲気であった。
今回は神谷先生、松本先生の3人で参加した。私が二人の父親と勘違いされる場面もあり、白くなった無精髭を揃えてくるべきであったと後悔した。
プログラム開始前に到着できたのはチャンスと考え、水曜日早朝より開催されていたPan-Pathific skin barrier symposiumから参加した。
Dr.Lee SE の発表に注目した。ER stressがタイトジャンクションに与える影響に関する発表ではclaudin-4とzo-1、F-actinの分布に異着目して評価が行われていた。表皮細胞ほど紫外線などの外界からの刺激をうける。興味深いのは適度(軽微)なER stressは表皮バリアを維持するのに関わるらしい。NB-UVBの効果に近いのではないかと考えた。ERストレスは今後注目していきたい。
傳田先生の発表はいつもたのしみにして拝聴している。今回は表皮細胞がbuddingして層板顆粒を分泌する過程において、細胞膜のリン脂質が重要であるとの報告であった。フルクトースはリン脂質と水素結合することでバリア回復を促し、グルコースはバリア回復に影響せず、それは水素結合できないからであろうとする結果を、簡潔ながらも美しいモデルで評価されていた。私たちが研究している汗のバリアに与える作用を考える上で大変参考になった。
韓国のグループから11b-HSD1がアトピー性皮膚炎の発症に関わるとの報告があったが、これまでに阪大を含め各国から報告されているHSDの機能に関する報告と大きな違いはなく、タイトルにつながるような直接的証拠は得られていないという印象であった。
さて、本題に入りたい。SID本体は相変わらずエキサイティングだった。
State of Art Plenary Sessionは2題で、Dr. PayneとDr. Leによる発表だった。
Dr. Amiee Payneは天疱瘡治療の最新の話題をDsg3 CAART細胞が_抗Dsg3抗体産生B細胞を選択的に減少させるシステムの構築までのプロセスを丁寧に説明され、感銘をうけた。
Dr. Lu Leの研究の予想外の展開を興味深く拝聴した。神経線維腫(NF)のモデルマウスを作成しようと末梢神経のmyelinationに関わる転写因子Krox20でCreを発現させるマウスとSCF-floxを掛け合わせたところ、生まれたマウスNFは出現しないが生後2ヶ月後から全身の毛が白くなった。Krox20はectdermから_毛軸胞になる前駆細胞のマーカーになるとのことであった。
Kliegman lectureはKupper先生で、TRMに関するupdateだった。TRMも皮膚にホーミングするためには大変なエネルギーを要するのだと知り、興味深かった。TRMに発現しているFabp4、5はpalmitateの選択的な取り込みに関わる。その結果TRM内にエネルギー源となるFFAが蓄積するとのことだった。このメカニズムは黄色腫にもつながらないだろうか。
遺伝疾患のセッションではProf. McGraphのEBにおけるKLHL24の発見(first metionineをふくむ28アミノ酸が欠失)、Prof. OroによるEBの治療、特にiPS細胞をCRISPER-Cas9でL遺伝子変異を修復した細胞で治療する試みを聞いた。またデルマトームに分布する疾患のモザイクは念頭におかなくてはならないことを再認識した。
組織再生のセッションは実に楽しかった。最近私たちは皮膚のtouch senseに興味を持っており、たくさんのメルケル細胞の話を聞けたのは大変有意義であった。(逆にメルケル細胞は昨今盛んに研究が行われているようだ)
NYのMaunt SInaiのグループはpolycombとメルケル細胞に関するpolycomb repressive complex (PRC)1 and 2は主要なepigenetic regulatorであるが、その触媒機能の欠損したマウスは正常な皮膚と毛包形成、メルケル細胞の増加を認めた。PRC1KOマウスはメルケル細胞が損なわれていた。
Prof. Millarのグループはメルケル細胞の発生に関して核心に迫る報告をした。Wnt, Edar, Shhシグナリング、特にwnt シグナリングがメルケルとtouch domeに活性が強い。ではwntシグナルはメルケル細胞の発生に重要なのだろうか?上皮のbeta-cateninは神経の分枝を阻害していた(メルケルとのシナプス形成に関わる?)。non-canonical dermal cellに由来するWnt/5aはメルケル細胞の発生を抑制する。beta cateninを阻害するDkk1処理、あるいは上皮wint10aの欠損によってメルケル細胞の数は徐々に減少するようだ。tactileやtouch senseの評価はなされていなかった。
Prof.ChristianoのグループはJAK-stat wnt-BMPシグナリング Stat5は毛の休止期に関わるとした。K5-,K14,K17特異的にでStat5をKOすると成長期になる。Stat5の下流のID1発現が休止期に関わることを見出した。
汗腺の発生について、Lu先生の発表を拝聴した。真皮に由来するShhとBMPのバランスが毛包または汗腺の形成を決める。次にのこされた課題はヒトの汗腺の機能の複雑性がどのようにして獲得されるかを解決することでああろう。
次にポスターセッションより、じっくり説明を聞けた話を3つほど・・。
タイのグループはRhodomyrtus tomentosa(天人花)と呼ばれるフトモモ科の常緑木の葉の成分 rhodomytone はIL-17Aに起因する炎症を減弱し、IMQモデル動物の炎症を改善するとの報告があった。このような天然コンパウンドの発見はその土地のライフスタイルとも直結しいて興味を引く。また、ふとした事でマイアミ大学の医学生と仲良くなった。彼らの発表では、切った毛髪を光コヒーレンストモグラフィーで観察し、その形が人種によって異なることを示した。CaucasianよりもMexicanとAsianは径が少し太く、均一に円形なのだそうだ。年齢や毛包周期との関連はこれから調べるらしい。福岡大学の佐藤先生の発表ではTuberoinfundibular peptideであるTIP39が線維芽細胞においてPTH2受容体を介してデコリンを産生し、膠原線維の直径に影響することを報告した。興味深いことにTIP39の影響は線維芽細胞よりも脂肪組織で強いらしい。強皮症やモルフェアが皮下脂肪組織楊側から硬化する事との関連も想起させる。
最終日は臨床のセッション
ジョンホプキンス大学のグループは痒みの季節性に関する疫学調査を行っていた。痒みの疫学調査はあまりなく、cross-secionalな検討ではそう痒症の有病率は8.2ー16.7%とされる。彼らはGoogle Trendsを用いた疫学調査を行い、USA and UK ans itchあるいはpainで検索した際のserach volume index(SVI)を評価した。2011以降、気温の上昇に関連して痒みの頻度は上がっていた。その傾向は特にUKで高かった。嬉しいことに、私のEuropean Journal of Painのreviewを引用して考察を組んでくれており、TRP、CGRP、 arteminの潜在的な関与を考えていた。
amelanotic melanoma (AM)は確認の遅れることで予後に大きな影響を与える疾患である。AM患者に特徴的に見られる臨床所見を明らかにするために2,276名のmelanoma患者を対象としたInternational,population-based Genes, Environment, and Melanoma (GEM) studyが行われた。その結果によるとMC1R変異体の有無はAMと関連が見いだされず、高齢者のAMの臨床症状として、背中の母斑が無い、freckleの多発あるいは日光過敏指標の高いこととしていた。この発表内容には、ある(別の)意味で驚いた。
さて、私たちは松本先生の行った痒み研究について報告を行った。これは活性型コルチゾールの産生に関わる酵素を表皮特異的に欠損したマウスの皮膚感覚異常の原因について解析したものだ。私たちは皮膚の感覚過敏(アロネシス)をマイアミ大学の秋山先生の論文を参照して解析した。実際にその秋山さんにポスターを訪れてもらい、実験のアドバイスをもらえたことは大きな収穫であった。そのほか、多くの方にポスターに足を運んでいただき、たくさんのスルドイ質問とコメントをいただき今後の課題が見えた。投稿準備中であり、大変有意義だった。
さて学会終了後、朝5時発の飛行機だったため、早めの夕食をとるため会場近くのショッピングモールのフードコートに立ち寄った。連日ランチを摂るタイミングの難しいプログラムだったのでお腹はすいていた。6ドルほどと比較的安価で山盛りのヌードルとライスが手に入り得した気分だった。思えばポートランドで消費税を払うことがなかった。これはポートランドが居住区として人気の理由の一つらしく、その恩恵に与ることができたのだった。
平成29(2017)年5月2日掲載
Vitiligo International Symposium 2016 (VIS2016) に参加して
Vitiligo International Symposium 2016 (VIS2016) に参加して
壽 順久
ローマで開催されたVIS2016に参加してきました。 ローマは初めてです。ミュンヘン経由でローマ入りする予定でしたが、ルフトハンザがストで飛行機が飛ばないというアクシデントにみまわれ、ミュンヘンで1泊、翌朝6時に出発し、なぜかウィーン経由でローマ入りしました。僕の初めてのウィーンは滞在時間わずか10分で通り過ぎてしまいました。
VIS2016、その名の通り、白斑に特化した非常にマニアックなSymposiumですが、それだけに濃密な勉強をすることができました。マニアックなだけに参加数は少ないかと思っていましたが、意外と多くていつも部屋は満員でした。
今年4月に白斑会議で韓国を訪れた時に知り合いになったBae先生たちが発表した白斑の評価に使う解析ソフトは非常に面白いもので、彼らとEAVA(East Asia Vitiligo Assosiation)を通じて共同研究することとなり、今後が楽しみです。Vitiligoの今の主流は、John Harrisの引っ張るCD8とCXCL9, CXCL10、そしてJAK inhibitorになっていて、非常に多くの発表があり面白かったんですが、同時に、僕個人的にはそれが結構強引に決着をつけようとしているように感じて、もう少し検討が必要ではないかと思いました。
僕自身は、PD-1白斑とVitiligoの比較検討とそのメカニズム解析に関して発表させていただきました。PD-1白斑はメラノーマ患者さんに抗PD-1抗体を投与した時に出る副症状ですが(肺癌患者さんに投与しても起きません!)、白斑出現者は、抗PD-1抗体が非常によく効く傾向にあることから、白斑出現患者さんを調べることでPredictorになりうるんじゃないかと思って調べています。まだまだ先は長いですが、いい結果が出て欲しいなと思います。
今回3年目の島田先生も参加したのですが、幸か不幸かオーラルプレゼンテーションに当たりまして、直前にかなりテンパっておられましたが、本番は見事に原稿を読むことなく、発表されていました。僕の3年目の頃はそんなこと全くできなかったわけで、感服しました。すごいですねえ。
あまり時間がなくて、ローマ観光は突貫でしましたが、非常に美しい街並みで感動するばかりでした。惜しむらくは、巡った3人が全て野郎だったことでしょうか。それでもメジャーどころは押さえることができたので、充実したものだったと思います。
来年は、デンバーで国際色素細胞学会が開かれます。それまでにもう少し結果を出していい話ができたらいいなあと感じています。
ローマのパスタはミラノより美味しかったです。
見事に喋りきった島田先生、お疲れ様でした。
どうしても行きたかったコロッセオ、やっぱり感動しました。
平成28(2016)年12月15日掲載
Vitiigo International Symposium , 2016
Vitiigo International Symposium
Rome November 30~December 3, 2016
Presidents: Mauro Picard
Alain Taieb
大阪大学医学部皮膚科学教室
種村 篤
2016年12月2-3日ローマで開催されたVitiligo International Symposium出席した(http://www.vis2016.org/)。この学会のPresidentはイタリアのPicardo先生とフランスのTaieb先生で、特にTaieb先生は国際的な白斑診療基準の作成を提言した先生であり、欧州を中心とした白斑診療・研究のOpinion leaderである。本学会(シンポジウムなので、討論会というべきか)開催のローマに向かう途中、思わぬアクシデントに見舞われた。ドイツミュンヘン経由でローマ入りを予定していたが、ちょうど渡欧した日が某航空会社のストライキと重なってしまい、初日はミュンヘンで1泊し翌朝ウィーン経由でローマ入りした。この時点で日本出発から24時間を経過しており、正直本当にホッとした。
さて、学会では尋常性白斑の臨床と研究の演題が上手く織り交ぜられており、臨床医としては全体的に理解しやすい内容であった。個人的に興味のあるメラノサイトを取り巻く自己免疫応答では、CXCL9/10-CXCR3 axisの演題が多くヒトでのバイオマーカーとしての有用性や創薬の可能性にまで触れられており、臨床の現場まで急接近した印象を受けた。また、悪性黒色腫に抗PD-1抗体を投与した時生じるVitiligo様脱色素斑に関して、フランスのグループが“尋常性白斑とは異なる表現型であり、よりTh1型に近い免疫学的背景を持つ”ことを示唆されていた。当科でも抗PD-1抗体投与中の患者さんに脱色素斑を生じる事を経験しており、その病態解明が尋常性白斑の本質を探る上でヒントになるのではと考える。本討論会ではいくつかのキーワードがあった。上記ケモカイン間橋の他E-カドヘリン・HSP70・CD91・MIA・NRF2などが頭に残った。一方外科治療ではトリプシン処理した単細胞移植が非常に簡便で、(実施容認された一部の国だが)世界のトレンドになりつつあることを実感した。ただ、移植条件がまだまだ最適化されておらず、さらに臨床研究が進んでいくと考える。国内でもぜひ導入したいが細胞医療のハードルが高く今後の課題だろう。2日間と短い討論会であったが、日常診療に沿った内容が多く大変勉強になった。
平成28(2016)年12月8日掲載
75th Annual meeting of Society for Investigative Dermatology
75th Annual meeting of Society for Investigative Dermatology (75th SID)
May 11-14, 2016
The Westin Kierland Resort & Spa
Scottsdale, Arizona
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
アリゾナ州のスコッツデールで開催されたSIDのannual meetingに参加した。まず開催地についてご説明したい。アリゾナはアメリカの南西部で、メキシコに面している。
中心のPhoenix空港からシャトルバスで北に向かう。周りを見渡せば土色の茶色い山々、土色の荒地、その中には高さ4mほどでろうか、まるでヒトの形のようなサボテンが散在している。会場はスコッツデールの北の端 Kierlandにあった。会場の外を歩いていて驚いた。暑い上に呼吸するたびに強い口腔内乾燥が生じる。さらに、おそらく発汗しているが自覚できない。この環境では汗は蒸散することで気化熱による体温調節をいかんなく発揮しているようであった。しかし角層の水分も損なわれているのであろう。顔の皮膚が乾燥し、目尻のシワが痛む。しらべると気温は38度、湿度は6%であった。
今回、山賀先生と研究成果の発表をするため2人で参加した。「暑いなあ」と話しながら会場内に入ると、今度は過激な空調設定のため「すごい寒い・・」と震え上がった。しかし、学会の内容があまりにも素晴らしく、私たちは唇を青くしながらも会場に釘付けとなった。SIDの魅力は皮膚の研究の最先端で活躍している研究者の話を直接聞けることだ。最初の2日間は組織リモデリングに関する最新の話題に酔いしれた。私たちの研究で引用する機会の多いJohn Varga先生、Fiona Watt先生、George Cotosarelis先生、Michael Rendl先生、Michael Longaker先生….等々、私達は講演が終わるたびに「エキサイティングやな・・」とため息をついた。
エキサイティングな理由はこうだ。皮膚のリモデリングには表皮、線維芽細胞、脂肪細胞、血球系細胞すべてが巧みに関わり合っている。そこまでは誰もが納得できる。驚きなのは、各細胞が適宜リプログラムされる過程で、その具体的なメカニズムが次々に明らかにされつつあることだ。例えば創傷治癒後の毛包周囲に脂肪細胞が出現するのだが、この脂肪細胞はmyofibroblastがBMPの作用によってリプログラムされた産物と考えられているらしい。創傷治癒後の毛包再生のリプログラミングはホットな話題だが、そこにはγδT細胞に由来するFGF9が関与しているらしい。意外な役者の登場である。制御性T細胞がmyofibroblastの活性を制御しているとの講演もあったが、その具体的なメカニズムには踏み込んでいなかった。
真皮線維芽細胞の多様性も面白い。多様性は各々マーカーによって規定される。その1つがSca1の発現の有無である。表皮に由来するβcateninの作用で真皮上層の線維芽細胞はSca1が陰性に、真皮深部の線維芽細胞は影響を受けにくいためSca1陽性の表現型となる。Sca1陽性の真皮線維芽細胞は毛包の新生に関わる。もう一つのマーカーはEngrailed-1だ。Engrailed-1 lineage derived fibroblast[EPF]は線維化を生じやすい線維芽細胞で特にCD26+EPFは線維化誘導能力が高いとされる。多くの研究成果で共通していたのはやはりwnt/βcatenin系の重要性、そして線維芽細胞を中心とした細胞のリプログラムが重要であるということだ。特にFiona Watt先生、George Cotosarelis先生、Michael Rendl先生の講演には感服した。特筆すべきはMichael Rendl先生の講演だ。毛包の発生時に毛包が形成される部位の真皮内表皮直下に出現するdermal condensatesの話には鮮烈な衝撃を受けた。皮膚の中で生じているこのミステリアスな現象の正体が解明されれば付属器再生への道が大きく開かれることだろう。そのほか、Luis Garza先生の講演では創傷治癒の際のDanger signalとして壊れた細胞に由来するdsRNAがTLR3の活性を介してwntを誘導し、創傷治癒カスケードを引き起こすとのことであった。HMGB1も含まれるが、danger signal は創傷治療の戦略確立の鍵を握っている。
Eugene M. Farber lectureはNicole Ward先生による乾癬の話だった。”ModelingMayhem-What transgenic mice can teach us about psoriasis pathogenesis”という刺激的なタイトルで、”Mice model, most of them are wrong, but some of themare true!”というメッセージから始まった。ただ内容は極めて臨床的で”乾癬の病態についてFarber先生の提唱されたサブスタンスPと神経の関与に関する理論をわかりやすく紹介された。日常診療における乾癬の見方が変わるような大変有意義なレクチャーだった。
さて、今回、山賀先生の発表がプレナリーに選ばれた。これは大変なことであり、素晴らしく名誉なことだった。詳細は山賀先生の学会参加記を参照されたい。山賀先生は汗腺から汗が漏れないメカニズムについてしっかりしたわかりやすい発表をされた。その後活発な質疑応答があった。座長のSarah Millar先生には本研究を新しい手法で想像していなかった成果を挙げたとのコメントをいただいた。その後も反響は大きく、プレナリー終了後もロビーで山賀先生の周りには人が絶えなかった。Millar先生にも改めて意見を伺い、実験に関するサジェスチョンをいただいた。
さらに山賀先生はSID-JSID collegiality awardを受賞されUniversity ofCalifornia Irvineを表敬訪問する。自分のことのように嬉しい。夢のようなひとときであったが、やるべき課題がはっきりと認識できた。引き続きしっかりと地に足をつけて研究に取り組んでいきたい。
平成28(2016)年5月15日掲載
第32回日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会
第32回日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会
会頭:佐藤 淳先生
2016年4月23日~24日
岡山コンベンションセンター
大阪大学医学部皮膚科学教室
林 美沙
2016年4月23日・24日の2日間、「晴れの国」岡山で第32回日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会が開催されました。私の実家が香川県であることもあり、今回参加させていただきました。岡山駅は昔とは違いとてもきれいで驚きました。会場までの交通の便もよく、天気にも恵まれ快適でした。
本学会のテーマは「Dermatology Tomorrow; Collaboration」。世代間や診療科間、開業医と病院と大学の医師間で枠にとらわれずにコラボレートすることで、皮膚科学がますます発展・進化し続けるという意味が込められているそうです。学会会場ではアナライザーを使用した「Derma Live!」という参加型の講演があり、より臨床に即した症例提示がされており、日常診療をしている感覚で症例を検討できました。一つ一つの症例を丁寧に説明していただき、流れていく日常診療で立ち止まることの重要性を改めて感じました。日本臨床皮膚科医会は皮膚科を専門とする臨床医の集まりでありであるため、臨床的にとても役に立つ報告やセミナーが多く、ちょっとした工夫なでも聞けて充実した2日間を過ごす事ができました。
私は大阪大学に赴任して以来、力を入れさせていただいている爪乾癬と超音波について発表させていただきました。今回の発表では今までとは違いより臨床に即した観点からの報告としました。私もそうですが、爪乾癬はあるかないかだけをみることが多くなってしまいます。しかし爪乾癬のどの症状があるのかをきちんとみることで、病変の主座を予想し、治療計画を立てることが可能ではないかと提案いたしました。また総合病院や開業医にかかわらず超音波検査は低侵襲で簡便にできる検査であり、レントゲンやMRIなどの検査機器がなくとも関節症性乾癬の発症を予測できる可能性も提示させていただいました。両者ともまだまだ検討が必要ではありますが、難治性である爪乾癬の治療に役立てることができればと思い、今後も検討を続けていきたいと思います。大変光栄なことに、今回ポスター賞を頂きました。会頭の佐藤淳先生をはじめ、審査をしていただきました方々、私のポスターに目をむけていただきました参加者の方に深くお礼申し上げます。
あるセミナーで『皮膚科医の眼の値段』というテーマがありました。まだまだ未熟者ですが、きちんと一つ一つの症例、個疹と向き合い、自分の眼で診断をつけるという皮膚科医としての価値を高めていければと思います。
平成28(2016)年4月27日掲載
第39回皮膚脈管・膠原病研究会
2017年1月22日(金)~23日(土)
第39回皮膚脈管・膠原病研究会
会長:佐野栄紀教授
会場:高知市文化プラザかるぽーと
大阪大学医学部皮膚科学教室
山岡俊文
高知で開催された第39回皮膚脈管・膠原病研究会に参加してきました。当日は年末までの暖冬とは打って変わって、最高気温が5℃程度ととても寒い一日でした。例年通り演題数も多く、スポンサーセミナーも充実しており屋外の大寒波も忘れ、室内は冬の嵐を吹き飛ばす程の南国高知の熱気に包まれていました。その熱気の力を借りて色々と学んできました。
まず、昨年10月に抗MDA-5抗体のELISA kitが発売となりましたが、今年6月頃にはcommercialレベルで測定が可能になるようです。今回の発表で、抗体価と病勢がparallelに推移すること、血中ferritin値は病勢を必ずしも反映しないことも勉強しました。過去の報告では抗MDA-5抗体陽性の皮膚筋炎では血中ferritin値が重要視され、私自身も一つの検査所見のみに囚われていたことを痛感しました。やはり血液ガス所見や全身状態など、総合的に柔軟に判断できる臨床医でありたいと思いました。その他皮膚筋炎関連では、肝臓ガンを合併する症例が少ないことが話題に上がっていました。そう言われてみれば、経験したこともありません。
全身エリテマトーデスに関しては、発売間もないヒドロキシクロロキン関連の話題も出ていました。深在性病変で瘢痕を残す可能性のある患者さんにどのタイミングで使用するのか、それとも最初からステロイド剤を使用するのかQOLの観点からも判断に困る場合も多いです。実際に2012年に全身性エリテマトーデスの分類基準が改訂され、皮膚科医の的確な判断がますます必要とされています。
その他、アルコール性肝硬変が不明熱の原因となる場合もあるようです。嗜好歴も重要で、問診の重要性も再確認できました。
最後に懇親会での話ですが、スムーズな学会発表より、どこで困って苦労したかがわかる学会発表の方がためになるとご意見を頂戴した。その瞬間我に帰り、今までの自分の発表が自己満足であったことを痛感しました。
平成28(2016)年1月26日掲載
the Palais du Pharo, Marseille, France
11th EADO Congress & 8th World Meeting of Interdisciplinary Melanoma/Skin Cancer Centers
会場:the Palais du Pharo, Marseille, France
会期:2015年10月28−31日
大阪大学医学部皮膚科学教室
講師 種村 篤
フランスのマルセイユで開催された第11回EADO (European Association of Dermato Oncology) congressに参加した。これまで南仏を含めたマルセイユに行った経験がなく、地中海に面したフランスでのアフリカの玄関口の都市であり、岩窟王で有名なイフ島があることぐらいの前情報で現地入りした。実はマルセイユはフランスで最も歴史が古く、大聖堂や城塞など歴史的建造物が今も残っていること、国立公園が都市の大部分を占めており自然豊かであること(海と山に囲まれた非常に美しい街でした)などを現地で教えてもらい、少しだけ南仏の歴史に触れた気がした。学会会場となったファロ宮殿は1852年にナポレオン3世が訪れた際、水際の居宅として建設を思い立ったとされ、マルセイユの港を一望出来る場所に立つ印象的な宮殿だった(URL: http://www.eado-melanomacenters-marseille2015.com/)。本学会での話題の中心は、やはりここ数年メラノーマ治療の目覚ましい進歩であり、数多くの一般演題およびシンポジウムで話されていた。国内でも2014年抗PD-1抗体が世界に先駆け国内で承認され、今年抗CTLA-4抗体が使用出来るようになった。概ね、日本と欧州各国の治療水準は近しくなってきたとうれしく思う一方で、圧倒的な症例数とフォローアップ期間の違いは感じられた。国立がんセンター中央病院皮膚腫瘍科の山崎直也先生が、オールジャパンで皮膚悪性腫瘍に取り組むと常々おっしゃっている意義を改めて認識した。発表の中で特に印象に残ったのが、T-VECというoncolytic HSVにGM-CSFを組み込んだ改変ウイルスのメラノーマ腫瘍内投与がつい先日米国FDAで承認になり(AMGEN社)、そのセッションとコマーシャルブースが盛況であったことである(JCO 2014)。当科を含む3施設で、進行期悪性黒色腫症例に対するセンダイウイルスベクターを用いた医師主導治験を行っており、腫瘍内にウイルス(様)調整治験薬を投与し局所+全身の抗腫瘍効果を期待する点で類似したメラノーマ対策が世界の舞台に出て来ていることに感銘を受けた。メラノーマ治療に第2・第3の選択肢が登場し、それらの最適な組み合わせ(カクテル治療)、症例の適格化、腫瘍反応性のダイナミックな評価など臨床的に多く解析されている。一方、特にT-VECの基礎的な抗腫瘍免疫活性メカニズムがまだ十分解明されておらず、少し物足りなさを感じた。臨床先行で多くの薬剤が開発・上市されているが、常にその基盤となる生体反応・免疫応答を深慮すると同時に新知見のアンテナを鋭くしておきたい
平成27(2015)年11月22日掲載
the Palais du Pharo, Marseille, France
11th EADO Congress & 8th World Meeting of Interdisciplinary Melanoma/Skin Cancer Centers
会場:the Palais du Pharo, Marseille, France
会期:2015年10月28−31日
大阪大学医学部皮膚科学教室
助教 田中 文
10月28日マルセイユで開催されたEADOに参加させていただきました。マルセイユはフランス第2の都市で古代ギリシアやローマ時代からの古い歴史を持つ港町ですが、学会は中心地から近い岬に立つファロ宮殿で絵画のような景色の中で始まりました。
皮膚悪性腫瘍とくに悪性黒色腫の治療は分子標的薬、免疫チェックポイント阻害剤の普及にともない、大きな変容を遂げました。今回の学会でもこれらの治療に関する発表が中心で、全世界的に単独および併用治療で様々な試みがなされており、非常に勢いを感じる会でした。阪大病院内でも他科の医師との会話で話題に挙げられることもあるように、大きな関心が寄せられている分野であり、おそらくこれからの数年は毎年のように新たな知見が加わってゆくと思われました。
一方で今回私はニボルマブ投与後に免疫関連間質性腎炎を生じた悪性黒色腫の一例を報告いたしましたが、今回の学会ではこれらの新規治療による有害事象の報告は全体的な統計がほとんどで、あまりこれまでの知見と変わりがなく少し残念ではありました。ほぼ同時期に日本で開催されていた日本皮膚科学会中部支部学術大会では、有害事象に関して多くの報告がなされていたとのことでしたので、日本から発信されるこのような検討や報告の蓄積が果たす役割は大きいと感じました。
また、今回の学会の参加者はOncologist、Pathologist、Plastic surgeonとそれぞれの専門が大変に多彩でした。君の専門はなんだと聞かれ、Dermatologistだと張り切って自己紹介もしてきてしまいましたので、今後の日常診療の中でDermatologist としての存在意義をもって真摯に診療に当たるべく、精進しようと考えております。
平成27(2015)年11月9日掲載
第66回日本皮膚科学会中部支部学術大会
第66回日本皮膚科学会中部支部学術大会
2015年(H27)10月31日(土)・11月1日(日)
大阪大学大学院医学研究科
情報統合医学皮膚科学教室
准教授 室田浩之
神戸大の錦織先生が会頭を務められた中部支部総会に参加した。本会のテーマは輝く皮膚科学だ。輝くためには光が必要だ。錦織先生のご専門である光に焦点を当てたセッションは聞き応えがあった。
ノーベル物理学賞受賞者である天野浩先生の紫外線LEDの話は大変興味深く拝聴した。青色LEDの開発に向けた歩みを聞き、驚愕した。研究費の制限を自分達で機械を製作するなどして障壁を乗り越えた。できるという思い込みも重要とのことであった。青色LEDは光遺伝学にも応用されている。紫外線LEDは赤外線が出ないので熱くない。この技術を飲料水の殺菌に用いられる予定で、発展途上国でのキレイな水の提供に向けた取り組みをされている。
臨床的には新規に難病指定を受けた疾患にスポットを当て、各分野の専門家の話を聞き勉強することが出来た。角化症では山西先生による「これならわかる角化症」と題した講演を拝聴し、特に顆粒変性の意義、周辺帯の詳細な構造など分かったように感じた。
一般演題では群馬大からの強皮症のレイノーに対するA型ボツリヌス毒素を用いた治療の効果に驚いた。ここでもノルエピネフリンの影響!カテコラミンには何かある。順天堂大練馬からは膠原病の異所性石灰沈着を伴った潰瘍にチオ硫酸ナトリウムによる石灰溶解が著効したとの興味深い結果が報告されていた。学生講義で水疱症を担当している私にとって、「水疱症のすべて」は聞き逃せない。診断の際のピットフォールを学び、特に自己抗体の分画や水疱症を疑った際にDIFを行うよう心がけることを再認識した。
CPCは大変聞き応えがあった。美しく主張のある臨床と病理の写真、その映像で語られる病気の生い立ち。身につまされるドラマに感動した。やはり自分の意図した病理写真、臨床写真を撮影できる技量もまた皮膚科医に必須のスキルであることを再確認した。
CPCの途中、私達教室の高橋先生による後天性皮膚弛緩症の発表を聞きに向かった。大変稀かつ原因不明の疾患のこともあり会場は大いに盛り上がった。参加者の的を得た質問と高橋先生のしっかりした受け答えの中で本疾患の病態が見えたような気がした。そんな会場の雰囲気に学会のあるべき姿を見た。
平成27(2015)年11月1日掲載
8th World Congress on Itch
8th World Congress on Itch
痒み感受に偶然はない。
大阪大学大学院医学研究科
情報統合医学皮膚科学教室
准教授 室田浩之
約1ヶ月前になる。片山先行会頭のWorld Congres on Itchが終わった。同会のトピックスは片山先生のコラムに詳細にご紹介いただいている。事務局の仕事も落ち着いた今日、学会を振り返りながら痒み研究におけるこれからの課題について考えてみた。痒みの研究を行う中で腑に落ちないことが多々ある。
A.痒み誘発実験において、
1.痒みを誘発する起痒因子の多くは痛みも誘発すること、
2.痒みはわずかな起痛因子で増強または誘発されること、
という痒みと痛みの接点。
B.動物実験において
1. cheek modelでは後ろ足で耳付近を掻くことが動物の掻爬行動であるとされる。そのためか後ろ足を使わないと痒みに対する反応ではないとされる。では背中が痒いマウスはどうするだのか?
2.起痒因子による痒み誘発実験は本当に痒みを誘発しているのか?
C.ヒトにおいて、
実験的な痒みは皮膚病に伴う痒みをどの程度反映するのか?などである。
上記を踏まえ、以下、学会で得た知識を紹介する。
痛みと痒みの関係について
von Frey博士は痒みは弱い痛覚受容であるという仮説を立てた。この説では痒みは独立した”感覚様式”ではなく本質的には痛みということになる。しかし強い痒みは痛みを誘発しない事、モルヒネやある種のオピオイドは疼痛を抑えるが痒みを増強する事、そして痛みに対する神経反射は回避反応であるが痒みは掻破反応である事、といった現象は痒みが本質的に痛みと異なること示唆している。紆余曲折はあるものの、「痒み」と「痛み」は異なる感覚との解釈で落ち着きつつあった。しかしハッショウマメの小さい棘によって誘発される痒みのメカニズム解析から、この棘の刺さる刺激を伴うことが痒み誘発に大きく影響することが報告された。ここでは痒みは痛みのコントラストであるという*Spatial contrast theory*で説明されていた。つまり痒みは痛みそのものではないが痛いところと痛くないところのコントラストが生み出す感覚ということになる。痒みコンセプトはとどまることなく漂い続けている。痒みはミステリアスだからこそ、追いかけたくなる。
動物実験について
学会から改めて感じたのは皮膚感覚の質とそれに対する衝動を判断するのは間違いなく脳であり、その感覚に抑制的に働く初動は中脳・延髄が担当する。マウスがどう感じているかは脳のどの領域が活性しているのかを調べることで可能になると考えられる。最近では私達が行っているマンガン造影MRIによってそれが可能になると期待される。さらに最近ではoptogenetics(光遺伝子学)により皮膚感覚感受の脳内回路が明らかにされつつある。これらの評価方法は動物モデルの痒みを客観的に評価する新しい指標になると期待される。
ヒトにおいて
学会内では疫学的な情報と、治験、症例提示など多彩であった。新しい治療として介在ニューロンで痒み伝達の主役となるサブスタンスP受容体(NK1R)を中和する戦略がいくつか紹介された。末梢神経終末で痒み伝達のmaster regulatorと考えられるTRPV1とTRPA1も治療標的として注目されているようだ。その他、痒み抑制に働く介在ニューロンの活性や交感神経による痒み抑制、そして痒み治療におけるプラセボ効果など興味深い研究内容が紹介された。痒みを情動として捉ええるか、感覚として捉えるかで治療の考え方はことなってくるだろう。
以上、私の興味を持った雑多な所感を述べさせていただいた。痛みではなく痒みを感じるのは偶然ではなく理由がある。それは多次元であり、切り口によって全く異なる様相を呈する。私は皮膚科医としての切り口を忘れてはならないと自戒するとともに再確認した。
最後に学会でのエピソードを紹介する。カリフォルニア大のCarstens先生は僕が左利きであることに気付き自身も左利きであると言った。するととなりに居合わせたマサチューセッツのLerner先生も「僕も左利きだ」と言った。3人で「左利きは痒み研究に向いているに違いない」とワイワイ盛り上がっていたところ、近くにいたブロツワフのSzepietowski先生がニコニコ笑いながら輪に入るや、”by chance.”とクールにその場を収めた。痒みに偶然はないが、左利きが集まるのは偶然かもしれない。
写真解説:学会の呈茶の席において和菓子の職人が本学会のためだけに特別な常用を数限定で作製してくれた。「痒み」をイメージした菓子である。表面から見える淡い赤みは、手が届きそうで届かない痒みのもどかしさが汲み取れる。二つに割ると見事な美しい層をなす、その構造に職人技を見た。「皮膚感覚をいろんなフィルターを重ねて見たところ痒みになった」、そんなストーリーを、私はけたたましい想像力で思い描いた。
平成27(2015)年11月1日掲載
第114回日本皮膚科学会
第114回日本皮膚科学会
2015年5月29日~31日 パシフィコ横浜
会頭:古川福実教授
大阪大学大学院医学研究科
情報統合医学皮膚科学教室
助教 林 美沙
2015年5月29日~31日の3日間、和歌山県立医科大学の古川福実教授の会頭のもとパシフィコ横浜で第114回日本皮膚科学会総会が開催され、参加させていただきました。総会は1年に1度の最も大きな学会で、様々な分野で基礎から最新の情報までを一度に勉強できるため楽しみにしている学会のひとつで、とても勉強になります。いろいろな疾患でガイドラインの作成が進んでおり、診断名が変更になったり、治療法が統一されたり、生物学的製剤などの抗体療法が次々と発売となり、治療選択が拡大したりと、まだまだ勉強することが多く、皮膚科の進歩のすごさを痛感するとともに診断の基本の重要性を考えさせられました。
私は今年『爪乾癬における超音波検査の有用性』について発表させていただきました。乾癬の治療法が進み、関節症性乾癬の進行を遅らせることも可能となりましたが、いまだ早期診断のツールとして有用なものはありません。そこで片山教授に超音波検査をする機会を与えていただき、関節リウマチと同様に超音波検査を活用できないかと思い手探りで開始いたしました。関節症性乾癬の発症予測因子として爪乾癬があり、超音波検査を使用することで関節症性乾癬の発症を予測できないか、また爪乾癬は治療に抵抗性であり、治療選択時に超音波検査が有用ではないかと考え、発表させていただきました。まだまだ乾癬の領域では超音波検査は確立しているもではないですが、いろいろな先生方にとても貴重なご意見をいただき、さらなる検討をしていきたいと思います。大変光栄なことに、今回ポスター賞を頂きました。会頭の古川教授をはじめ、審査をしていただきました方々に深くお礼申し上げます。このような名誉ある賞をいただきましたので、それに恥ないよう、少しずつでも乾癬の診断や治療につながると信じて日々精進していきたいと思います。
写真:会頭の古川福実教授と記念撮影
平成27(2015)年7月7日掲載
HOME IV meeting (Harmonising Outcome Measures for Eczema)
Harmonizing outcome measurements for eczema
(HOME) IV meeting
Malmo, Sweden. 4/23~24
大阪大学大学院医学研究科
情報統合医学皮膚科学教室
准教授 室田浩之
4/23-24にかけてスウェーデンのマルメで開催されたHOME IVに参加してきた。アトピー性皮膚炎に対する新しい治療の開発が世界的に進みつつある昨今、HOME meetingはNotttingham UniversityのHywel Wiliams教授が企画し、新薬の治療効果をどう評価するべきか、その項目を世界的に統一しようという趣旨の会議で2年に1回行われている。4回目にあたる本会はアトピー性皮膚炎の疫学に造詣の深いマルメ大学のAke Svenson教授(写真:演壇中央の先生)が世話人であった。
世界から約80名の参加者が集まり、そのうち50%はClinician、18%はpatient, 12%はmethodologist、18%は製薬関連だった。
これまでの会議において、軸となる主要評価項目がSigns, Symptoms, QoL, long-term outcomeに決定した。本会議ではSymptoms、QoL、Long-term controlについて定義と評価方法のコンセンサスを得ることが目的だ。
コンセンサスは次のような手順で得られる。まずmethodologistが提言を行い、それに関する全体質疑がなされる。その後、10名程度のグループに分かれ、それぞれ個室でグループミーティングを行う。再び全員が会議室に集い、各小グループのコンセンサスを代表者が発表する。最後にそれらの意見に関して全員で選挙を行い70%以上の賛成を得た定義あるいは項目をコンセンサスとする。この決定内容は後日論文として掲載される予定のため、ここでは内容紹介を差し控えたい。
さて、両日ともに議論は白熱し、初日が朝9:00~18:00、2日目が朝8:30から17:00頃までほぼ缶詰状態となった。小グループディスカッションは3回あった。私はHOMEへの参加は2回目で経験済みであったといはいえ、小グループディスカッショが最も緊張し、神経の研ぎすまされる時間であった。英会話のキャッチボールのスピード感は私にとって普通の学会では経験のできないものだ。ディスカッションには数名の患者と製薬企業関係者も含まれ、日本では経験できないような内容の議論が展開される。今回は山賀先生、進藤先生と同行した。アトピー性皮膚炎の治験評価項目の決まる歴史的なイベントを体験できるまたとないチャンスを得て、両先生ともに緊張しているのではないかと想像してい
た。しかし私の心配をよそに、山賀先生、進藤先生ともにグループミーティングで友人ができるなど、この好機をうまく生かしていた。お二人は未完の大器とお見受けした。
タイトなスケジュールゆえ、残念ながらマルメの余韻を味わうことはできなかった。会議終了後、私たちはコペンハーゲンに移り、次の目的地であるポーランドのブロツワフへ飛び立った。(ブロツワフ大学でのセミナーに続く・・・)
平成27(2015)年5月3日掲載
HOME IV meeting (Harmonising Outcome Measures for Eczema)
HOME IV meeting (Harmonising Outcome Measures for Eczema)
会場:Malmo, Sweden
会期:2015年4月23日‐24日
大阪大学大学院医学研究科
情報統合医学皮膚科学教室
大学院生 進藤翔子
スウェーデンのマルメで開催された、HOME IV meetingに、室田先生、山賀先生と参加してきました。HOME meetimgとは、アトピー診療のスタンダードを決めるもので、世界中から患者を含め様々な職種の人が集い、議論し、投票が行われます。ここで決まったことは、論文になり、世界中に発信されます。今回は4回目の開催となり、Symptoms、Quality of Life、Long term control (LTC)について活発な討論が行われました。中でも、SignとSymptomの違いについて、半日以上かけて質疑応答が行われたことには、驚きを隠せませんでした。医師として普段何気なく使い分けている事でも、世界の統一された基準を作るには、誰にでもわかりやすいように説明しなければならないことの必要性を感じました。このような調子で、なかなか予定通りに会が進行しませんでした。投票によって、アトピーのSymptomで最も重要なものはitchy、評価基準はPOEMということが決まりました。今回決められなかったものは次回に持ち越しになります。次回は2年後にブラジルで開催されるそうです。
国際的な会議に初めて参加して痛感したことは、英語のリスニングとスピーキング能力がないと得られるものが極端に少なくなってしまうこと、海外の人々は積極性があり自分から進んで話すことに長けているということです。HOMEではグループに分かれて議論する時間があり、他のメンバーが訛りながらも怒涛のように英語を話していく中、私はついていくのが難しくポカンとせざるをえませんでした。とても残念でした。物怖じしない性格と、英会話能力を身につけておかなければならないと思いました。(実現には困難を極めますが・・・)
それから、ポーランドのヴロツワフに立ち寄り、国際痒みシンポジウムのメンバーである、Wroclaw Medical UniversityのJacek教授のもとを訪れました。今年は阪大主催で奈良で開催されるので、その打ち合わせも兼ねての訪問です。
Jacek教授のご厚意で、ヴロツワフの歴史や、ポーランドの文化を学んだあと、大学で重要なイベントが行われました。室田先生の講演です。朝早く、診療が始まる前に、大勢の皮膚科医の前で、「Dermatology in Japan」について講演されました。日本人が名付けた皮膚病について取り上げておられ、私も改めて勉強になりました。
今回の出張はとても実りが多いものになりました。これからは、痒みが重要なキーワードであり、痒みの研究の発展が望まれます。また、日本と海外の皮膚科事情の違いも感じることができました。日本では自分が望む診療科に従事することができ、内科に従事する医師が最も多いですが、ポーランドを含め多くの国では科ごとに定員があり、なおかつ、どういうわけか、皮膚科が一番人気であることも珍しくないため、希望通りにいかない状況が発生しているそうです。皮膚科は、救命に直結するような場面は少ないものの、専門性が高く、心理学的な側面も絡んでおり、多くの患者から必要とされています。今後は、海外との知識の交流も念頭に置きながら、良い皮膚科医になれるよう、臨床、研究に携わっていきたいと思いました。
平成27(2015)年5月2日掲載
HOME IV meeting (Harmonising Outcome Measures for Eczema)
The Harmonising Outcome Measures for Eczema
(HOME) IV meeting Quality Hotel in Malmö, Sweden,
April 24th-25th
大阪大学大学院医学研究科
情報統合医学皮膚科学教室
大学院生 山賀 康右
4度目のHOME meetingがスウェーデンのマルメで開催され、私も参加させて頂きました。
アトピー性皮膚炎は、世界各国に多数の患者さんがおり、治療法もproactive療法や生物製剤の導入と、日々変化がみられます。新規の治療法の有効性を判断するためには、臨床試験が必要であり、複数の試験が行われます。そこで、統一した基準のもとで試験が行われることが非常に重要であります。
HOME meetingは、アトピー性皮膚炎患者の評価基準を統一することを目的としたカンファレンスです。今回は、同疾患の治療に直接たずさわる皮膚科医、小児科医のみならず、methodologist、研究者、患者さんなど多岐に渡る方々が世界各国から参加されました。
これまでのHOME meetingでは、Core Outcome Domainとして、
・clinical signs(他覚所見)
・symptoms(自覚症状)
・quality of life
・long-term control of flares
の4項目が既に選定されており、それぞれについて評価すべき項目、そして推奨する評価方法を決定する。2013年の3rd meetingでは、clinical signsについて、excoriations、erythema、oedema/papulation、lichenificationが特に重要であり、評価法としてはEASI(Eczema area and severity index)を推奨することが決定されました。
今回の4th meeting では、1日目にSymptom、2日目にQuality of lifeの2項目について議論、投票が行われました。まず全体でのPresentation、discussionの後に、6つのgroupにわかれてgroup discussionをし、各groupの意見、主張をまとめた上で、最終投票を行い、反対票が30%未満であれば可決されるという運びになります。
1日目のSymptom(自覚症状)では、特に皮疹そのものを含めるかどうかが争点となり、2時間以上に及ぶ激しいdiscussionが繰り広げられました。また、参加されていたすべての患者さんに自覚症状を伺ったところ、すべての患者さんが痒みを第一に挙げているのが印象的でした。結果としては、
・itch
・skin irritation
・sleep loss
・dryness
・redness
が評価すべきSymptomであり、評価法としてはPOEM(Patient Oriented Eczema Measure )を推奨することが決定されました。
2日目のquality of lifeでは、症状そのものを加えるかどうか、医療費を加えるかどうかが特に争点となりました。治験では医療費はかからないこと、そして国によって医療費は大きく異なることから、医療費は含めない運びとなりました。また、評価法としてDLQI(Dermatology Life Quality Index)を推奨するかどうかも争点となりました。
結果としては、大きく分けて
・physical well-being
・psychological well-being
・social well-being
が評価すべき項目であることが決定しました。
group discussionは10人程度に分かれて行われました。私のgroupは、ADの診断基準で大変著明なHanifin先生をはじめとして、ドイツのSchmitt先生、三重大学の水谷先生、イギリスの皮膚科医、スウェーデンやフランスの私同様のレジデント、デンマークの製薬会社の研究員、オランダの患者と、皮膚科医が多かったですが、様々なback groundからなる人々から構成されました。私のgroupでは患者さんの主張を重視して意見をまとめたため、発言の8割は患者さんによるものでありました。Schmitt先生の手際良くまとめておられた事も印象的でした。Group discussionを皮膚科医になって以降行ったのは初めてだったのですが、個々が意見を主張しやすく、discussionも発展しやすいと感じました。
今後他の場面でも、行っていけたらと思います。
今回のmeetingで、重要な事項が決定する場に立ち会い、参加できたこと、そしてHanifin先生やSchmitt先生、Williams先生、Takaoka先生、Flohr先生など世界各国の著明な先生方、他国のレジデントや研究者の方々と話す機会が持てたことは非常に有意義なものとなりました。次回は2年後にサンパウロで、Long-term controlに焦点を当てたmeetingが行われます。非常に有意義な時間となったので、また参加出来ればと思っております。
写真左:HOME meetingの様子。皆真剣です。
手前左にWollenberg先生、右に水谷先生がいらっしゃいます。
写真左:恐れながら、Hanifin先生と御写真を撮らせて頂きました。一生の宝物です。
Meetingの後、ポーランド ヴロツワフのJacek C. Szepietowski先生のもとを訪問させて頂きました。Jasek先生はItchとPsychodermatologyの大家であり、今秋奈良で開催するWorld Congress of Itchにも御参加くださいます。御忙しい中我々を空港まで迎えに来て下さったり、自宅にお招きくださったりと大変手厚くもてなして頂きました。そして、常にレディーファストを徹底されており、真のgentlemanであると実感しました。
Wroclaw medical universityの皮膚科は3フロアある建物を有し、70人にも及ぶ入院患者、多数の外来患者がおり、30人にも及ぶ皮膚科医が診療に携わっておりました。レジデントの若くて美人な女医さんが多かったです。同施設では小児病棟、真菌専用の検査室があることが印象的でした。また、同教室はKoebner先生、Gottron先生といった、医師なら誰でも知っている先生方、さらには土肥慶蔵先生が過去に在籍しておられたようです。その場で、当教室の室田先生が「Dermatology in Japan」と題した御講演をしてくださりました。日本人により発見された皮膚疾患の紹介、そして日本でのADの現状、ヒスタミンにより発汗が抑制されるという御自身の研究のお話と、幅広い範囲の内容をわずか30分足らずでお話されました。立派な御講演でJacek先生をはじめとした同教室の先生方に大変好評でした。 写真右:ヴロツワフ大学にて、御講演されている室田先生の御勇姿です。
平成27(2015)年5月2日掲載
第78回日本皮膚科学会東京支部学術大会
2015年2月21日(土)~22日(日)
第78回日本皮膚科学会東京支部学術大会
会長:横関博雄
(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科皮膚科学分野)
会場:京王プラザホテル
「皮膚科における再生を目指した新たな展開」
大阪大学大学院医学研究科
情報統合医学皮膚科学教室
准教授 室田浩之
会長の横関博雄先生による会長講演は発汗学の歴史的背景と現在・未来についてお話しされた。横関先生は汗の研究を皮膚科学の領域からリードして来られた方だ。
発汗は皮膚における重要な生理機能であり、発汗生理学の学問的なエビデンスの多くが日本人によって発表されている。つまり、汗の研究は日本の「お家芸」である。中でも久野
寧先生と佐藤賢三先生はそのパイオニアとして知られる。久野先生は発汗量を測定する手法として換気カプセルを用いられた。それら機器の発達は現在私達が用いている検査機器の開発の礎となった。発汗量を評価することで、身体の場所によって能動汗腺の割合と能力は体の場所によって異なる、人種ではなく出生地が発汗量を決めるなど、ヒトのホメオスタシス維持に発汗がどの程度関わるかを明かにされてきた。佐藤先生は単一汗腺の機能を試験管内で評価し、汗腺の濾過メカニズム、トランスポーターの役割、分泌と再吸収に関する知見を世界に先駆けて発信された。汗の成分を評価する際、皮膚表面で汗の成分を調べようとすると様々な物質がコンタミネーションする。佐藤先生は汗腺1つ1つを取り出し、
試験管内で汗を評価することで純粋な汗の成分を測定された。この手技は大変難しく、再現するのにご苦労されたとのことであった。横関先生は佐藤先生のもと、汗の成分に関する研究をなされ、汗中の蛋白分解酵素抑制物質を発見された。今、皮膚科学内で汗が脚光を浴びつつある。私も汗に大変な興味を持っている一人だ。今後、私達はこれまで蓄積されてきた基礎データを徐々に実臨床にトランスレーションする時に来ている。私自身は本学会で汗に関するシンポジウムで汗指導に対する講演をさせていただいた。私たちの教室の小野先生は後天性原発性無汗症に対する私たちの治療方針とその集積に関する報告を行った。多くの方に興味をもっていただいたようで、汗に関する問題で困っている方は多いもの
と推察した。この分野の皮膚科学からの発展に期待したい。
皮膚科領域における汗の研究は進んでいる。私はアトピー性皮膚炎と汗の関係に注目している。研究の立案とデータマイニングを行えば行うほど、アトピー性皮膚炎における独特の汗トラブルの存在が見えてくる。そのメカニズムは踏み込むほど影法師のように遠ざかっていく。塩原先生が発表されたインプレッションモールド法による発汗の評価はさらに進歩していた。皮表の構造と汗孔の位置関係を病気で丁寧に見ることで多くの情報が得られていた。僕たちは病気から学ばなくてはならない、と感銘を受けた。
片山先生のdermatoporosisの話を伺い、ステロイドを処方する際にその薬が何のために処方され、その薬が皮膚にどのような薬理学的作用を発揮するかを考える事こそがプロの皮膚科である、という認識を得た。私たちは過去の統計学的なエビデンスをバックボーンに治療を提供することが多い。治療が臓器の細胞レベルでどのような影響を与えるのか、それを考えることが医科学なのだと感じた。治療がうまくいかないこともある。その際、治療薬がうまく使えていないことを考えると同時にうまくいかない病態の存在を考える必要がある。その思想が続く田原先生の紅皮症の発表に息づいていた。アトピー性皮膚炎に関するBieber先生の講演でもProvocation factorの探索が重要とされていた。
最終日、私たちの教室の山本先生は脱随性神経疾患治療中にみられた特異な皮膚症状について報告した。発表の前日、教室のメンバーが集まったときの事である。
山本先生はスライド17枚と少し(?)多めであることに悩んでいた。それならば、と林先生、田原先生、小野先生とともにスライド校閲に携わった。
その光景をみて、医局メンバーのいざという時の団結力を微笑ましく思った。
平成27(2015)年2月25日掲載
第38回皮膚脈管・膠原病研究会
2015年1月23日(金)〜24日(土)
第38回皮膚脈管・膠原病研究会
会長:佐々木哲雄教授
会場:国際医療福祉大学三田病院
大阪大学医学部皮膚科学教室
山岡俊文
国際医療福祉大学三田病院で開催された第38回皮膚脈管・膠原病研究会に参加してきました。東京タワーからほど近い都会の真ん中に佇む会場の横には建設中の高層マンションがあり、日々様相を変化させる街並から5年後の東京オリンピック開催に思いを馳せた。
この研究会は、膠原病を専門とされる先生方が多数参加され発表5分、討論5分と議論が白熱するため、真冬の外気とは一線を画し、室内は初夏を思わせる熱気に満ちあふれていた。例年本研究会に参加していますが、いつも帰りの車内で、膠原病患者さんに対する皮膚科医の立ち位置について思い返しながら帰宅の途につく。一言に膠原病といっても全身性疾患であり、皮膚科医がすべてを抱え込む必要はないと思いますが、皮膚症状は視診で判断でき、いち早くその変化を正確に判断できる我々皮膚科医の果たすべき役割は大きく、さらには血液検査を追加すれば病勢も判断できます。当然のことながら、重症内臓合併症を併発する場合も多いですので、重篤になる前に皮膚症状から早期治療介入の必要性について判断する姿勢が極めて重要であると思います。
さて実際の内容についてですが演題数95、スポンサーセミナー4とすべてが充実した内容でした。特に勉強になったことは、特発性血小板減少性紫斑病は、我が国のみで使用されている病名であり、海外では免疫性血小板減少症と統一されていること。さらに以前は消費亢進が原因とされていたが、近年は産生障害もベースにあることが明らかとなったこと。また新たに診断基準も提唱され、まず二次性でなければヘリコバクターピロリ感染の有無をチェックし、感染が確認されればまず除菌を行うこと。実際に膠原病患者さんを診察していると良く血小板減少症に遭遇します。薬剤、感染症を否定し、PAIgG、網血小板、TPOなどを測定して判断していましたが、PAIgGの測定や骨髄穿刺はまったく意味がないとも教えていただいた。さらに血液内科に相談するタイミングも血小板数が5万以下で、出血症状がある場合と具体的に教えていただき、明日からの臨床に直結するありがたい内容であった。
一般演題については、僕自身が治療に難渋しているcPNの報告が心に残った。もう一度他疾患の鑑別、治療法について検討しなければいけないと今までの治療経過が頭を過った。その後場所を移し懇親会で墨東病院の沢田先生にcPNの治療法についてアドバイスをいただき、何とかして良くすると根拠のない自身も湧き出てきた。
このようなすばらしい研究会を、少人数で開催された佐々木哲雄教授の心労は計り知れないが、とても有意義な研究会であった。来年は、高知大学の佐野栄紀教授が会長を務められる予定である。昨年も乾癬学会で高知を訪れたが、今から来年の研究会が待ち遠しくなってきた。
平成27(2015)年1月27日掲載
第一回関西皮膚科若手の集い
第一回関西皮膚科若手の集い
2014 H26年11月1日(土)
大阪大学医学部銀杏会館三和記念ホール
大阪大学医学部皮膚科学教室
准教授 室田浩之
去る11月1日に大阪大学銀杏会館において第一回関西皮膚科若手の集いを開催した。本会を開催するに至る経緯について触れておきたい。片山教授が大阪大学に着任された後、京都大学皮膚科の宮地教授と互いの大学間で若手交流の場を作ろうと、その名も「天王山カンファレンス」が企画された。このカンファレンスでは基礎〜臨床の研究テーマを若手が発表し、充実したディスカッションが行われてきた。カンファレンスの後は開催校の医局で茶話会を持ち、若手同士の交流を深めた。本会も10年目の節目を迎え、本カンファレンスの継続は京都大学の椛島先生と私に委ねられた。私たちは参加者を関西の大学に広げ、交流の場の拡充を図りたいという想いから会の名前を「関西皮膚科若手の集い」とした。今回、大阪大学が代表世話人となり、晴れて第1回を開催するに至った。京都府、兵庫県、和歌山県、大阪府の大学から54名の参加者があった。基礎研究が7題、臨床のテーマが5題で、入局間もない先生から指導的立場にある先生による様々な発表を拝聴した。臨床発表でも診断に苦慮している症例提示があり、様々な意見が飛び交い有意義なディスカッションとなった。3時間に渡り、私も頭をフル回転で拝聴しながら質疑を行ったため、会の終了後には何かを成し遂げたような心地よい疲れが残った。会の終了後には各大学の先生を私どもの医局へ案内し、内覧会と茶話会を行った。あれだけ多くの先生が私たちの教室にこられたのはおそらく始めてのことではなかっただろうか。大学の垣根を取り払って語り合い、多くの先生と交流を深めることができた。
今回は記念すべき第一回を大阪大学で開催できたことは大変光栄で、他大学の先生には私どもをより知っていただく好機となった。しかし、なぜか今回大阪大学内の新人、若手、スタッフの参加が少なかったことが大変残念であった。改めて自らの手際の悪さを反省させられた。来年は京都大学で開催される。是非とも若手の先生、スタッフに積極的に参加、質疑していただきたいと考えている。「学んで思わざるは即ち罔し 思うて学ばざれば殆し」
平成26(2014)年11月4日掲載
第3回東アジア皮膚科会議
第3回東アジア皮膚科会議
3rd Eastern Asia Dermatology Congress
September 24 – 26,
Jeju International Convention Center (ICC JEJU)
大阪大学医学部皮膚科学教室
種村 篤
9月24日~26日、韓国済州島で行われましたEADC 2014第3回東アジア皮膚科会議に出席しました。本学会には、片山教授はじめ谷守助教・楊怜悧研究員ら計4名での参加でした。私は、自分の専門分野である悪性黒色腫(anorectal melanoma)の症例提示と尋常性白斑に対する紫外線療法の日本の現状を報告させて頂きました。Anorectal melanomaは皮膚に発生する悪性黒色腫よりその頻度が少なく、発見も遅くなる傾向があることなどより有効な外科治療が確立していないのが現状です。皮膚科もしくは皮膚悪性腫瘍外科として、十分な解剖学的・機能的知識を持って個々の症例に最適合した術式を選択する必要があることを報告しました。尋常性白斑の診療ガイドラインは、ヨーロッパ・米国・中国に加え日本でも2013年に発行されましたが、今回の開催国である韓国では未だ確立されていない現状です。今回、Korean Society for Vitiligoという韓国の白斑専門の先生方との食事をお誘い頂き親睦を深めさせて頂いたのは私にとっても大きな収穫であり、今後韓国でのガイドライン作成の一助となればと思います。尋常性白斑はインドで臨床・研究分野ともに盛んであり、Gupta先生が発表された表皮単細胞移植の技術はまさに自分が国内でも行いたいと考えているものであり、大変参考になりました。
最後に、EADCはアジア圏中心の国際学会ということもあり、発表英語も非常に分かりやすく、また韓国・中国などの隣国の先生方との交流を深める利点もあり私にとってこれまで以上に親近感のある学会となりました。
Korean Society for Vitiligoの先生方と白斑を専門にされている中国の先生方とのスナップ。美味しい韓国料理を頂きました。ミシュランガイドで紹介されたお店だそうです。
平成26(2014)年9月29日掲載
第11回日独皮膚科学会
第11回日独皮膚科学会
German-Japanese Society of Dermatology (GJSD)
会場:Marriot Hotel Heidelberg
会期:2014年6月11−14日
大阪大学医学部皮膚科学教室
廣畑彩希
2014年6月11日から6月14日までドイツHeidelbergにて開催されました日独皮膚科学会に参加させて頂きました。英語での発表作成は初めてであり、山岡先生を始めたくさんの先生方に数回にわたって御指導頂き、やっとの思いで完成したポスターを抱え、初めての海外学会に参加して参りました。
学会発表・討論は当然の事ながらすべて英語であり、また、研究をテーマにした発表が多く、英語を大変苦手とする私にとっては大変ハードルが高いものでした。その中で特に印象的であったのは、私より少し上の学年の比較的若い先生方によるoralの発表が大変多かったことでした。また、流暢な英語でしっかりと発表され、ドイツの先生方や日本の先生方の鋭い質問にもしっかり返答されておられる姿に感銘を受けました。皮膚科学について学ぶことはもちろんですが、自分の意見をしっかり英語で伝え、討論を行うことができることの大切さを実感しました。
また、学会期間中の食事の際、他大学の教授・先生方と席を御一緒させて頂き、お話を伺う機会が多くありました。最高のビールやワインとともに、普段なかなか耳にすることができない皮膚科の奥深い話を聞かせて頂き、大変貴重な時間となりました。
(学会会場にて夕食)
学会終了後はHeidelberg城など、旧市街の散策やおいしいドイツ料理を堪能し、非日常を存分に味わう事ができました。皮膚科入局2年目で海外の学会参加というめったにない経験が出来、これを今後の診療活動の糧にしたいと思います。
平成26(2014)年7月13日掲載
第11回日独皮膚科学会
第11回日独皮膚科学会
German-Japanese Society of Dermatology (GJSD)
会場:Marriot Hotel Heidelberg
会期:2014年6月11−14日
大阪大学医学部皮膚科学教室
大学院生 田上尚子
6月11日から14日にドイツのハイデルベルグで開催された日独皮膚科学会に参加させていただきました。寒いと思っていましたが、ハイデルベルグの日中はとても暑く、学会中は雨も降らず、半袖で十分すごせる意外に快適な気候でした。学会会場はとても景色のいい所にあり、ネッカー川をはさんでドイツの街並みがとてもきれいでした。
絶景をみながら食べたこちらのハンバーガーは絶品でした!!
- (ポスター前で)
- (学会主催ワイナリーツアー始まり)
翌日の朝からみっちり発表をききましたが、御高名な先生方がたくさんおられる中で、質問も多く飛び交っておりましたが終始和やかな雰囲気であったように思います。「eczema」というテーマだけでも、すでに知られているように発汗障害が湿疹炎症やアトピー性皮膚炎でのドライスキンを促進するはじまりとなりうるということや、喫煙と手湿疹の関連についてなど、普段あまり湿疹について深く考えていなかったためすごく新鮮に感じました。ほかにも、薬疹、皮膚悪性腫瘍、尋常性乾癬などいくつかの分野に分かれて発表があり大変勉強になりました。最終日には学会が主催してくださったワイナリーツアーがあり、猛暑の中ワインを試飲しながら歩き、最後の方は少し疲れもでましたが、大変楽しい時間を過ごすことができました。参加者の先生方と夕食をいただきましたが、1時間に1皿運ばれてくるという、非常にゆっくりとした夕食に驚きました。それまで、ホワイトアスパラガスは時期ではないといわれ食べれていなかったのですが、ここでようやく出会えました!! 最後になりましたが、この学会に参加させてくださった、片山教授、種村先生有難うございました。これからも日々頑張りたいと思います
(学会参加先生方と夕食)
平成26(2014)年7月9日掲載
第11回日独皮膚科学会
第11回日独皮膚科学会
German-Japanese Society of Dermatology (GJSD)
会場:Marriot Hotel Heidelberg
会期:2014年6月11−14日
大阪大学医学部皮膚科学教室
講師 種村 篤
此度、独国ハイデルベルグで開催された日独皮膚科学会に、片山教授・田中 文Dr・永田尚子Dr・廣畑彩希Drらとともに出席して来ました。昨年度のWorld Melanoma Congressに引き続き2年連続のドイツ出張で、今年はご存知の通りサッカーワールドカップの開幕時期と重なる日程のため特にドイツではワールドカップモード一色では?と期待しましたが、むしろ日本での盛り上がりが大きくやや肩透かしを感じながらの出張開始でした。この執筆時点で一次リーグの結果が分かっており、御存じの通りです。。学会は教授のコラムにあるように、圧倒的多数の日本人皮膚科先生方が出席及び発表され、さながら国内学会を彷彿させる程馴染のある先生方とお会いしました。その中でも多くの皮膚科教授先生方が参加され(概算で20名以上?)、直接お話させて頂いたのはまず収穫でした。ドイツの先生方との交流としては、excursionでの食事で専門がphlebologyという女性先生と、アトピー性皮膚炎のproactive療法を提唱された先生とお話する機会があり美味しいワインとともに話が弾みました(お恥ずかしながら名刺交換を失念しました。分かり次第修正します)。学会が開催されました、ハイデルベルグはドイツ南西に位置する人口15万人強の小さな街で、ネッカー川を挟んだなんともホッとする町並みを散策するのに非常に気持ちの良い所でした。旧市街を見渡せる小山の中腹にはハイデルベルグ城があり、ヨーロッパの伝統の深さを感じました(ロサンゼルスの留学時散策したアメリカとの歴史的建造物の違いがあります)。
さて、私は昨年7月の報道以降社会問題となっている、ロドデノール誘発性脱色素斑の(免疫)組織学的検討結果を報告させて頂きました。尋常性白斑との鑑別が困難な症例の提示や多岐に渡る炎症細胞の浸潤パターンを分析しました。特別委員会の統計結果より約8割の方に改善がみられるものの、それ以外の2割の方では未だ改善がみられないもしくは逆に色素増強が生じる部位もあり、今後の病態解明・より有効な治療法の開発に繋がれば幸いです。その他の発表の中でとりわけ私が印象に残ったものは、高知大中島先生が発表された乾癬モデルマウスにおけるランゲリン陽性細胞の動態及び役割解析を見事になされていたこと、京都大椛島先生が講演された、接触皮膚炎のelicitation phase(惹起相)における皮膚-リンパ節の樹状細胞・メモリーT細胞・マクロファージ細胞間クロストーク機構(iSALTコンセプトと呼ぶそうです)を斬新な可視化システムを用いて探索・解明されており、ようやく自分自身が理解できたような気がしました。皮膚科での様々な研究分野の話を聴講することで、最初は消化出来なかった内容が少しずつ身になり、自分の臨床・研究の新しい着眼点の創生に結び付けていかないと!と気を引き締めました。もちろん、学会参加のための研究費獲得も頑張らないと。。
写真1:山の中腹にあるハイデルベルグ城、小舟からのショットで何とも美しい
写真2:今回の学会会場となったネッカー川沿いのマリオットホテルハイデルベルグ。素晴らしい所でした
平成26(2014)年7月1日掲載
第11回日独皮膚科学会
第11回日独皮膚科学会
German-Japanese Society of Dermatology (GJSD)
会場:Marriot Hotel Heidelberg
会期:2014年6月11−14日
大阪大学医学部皮膚科学教室
助教 田中 文
6月11日から14日にドイツのハイデルベルグで開催された日独皮膚科学会に参加させていただきました。現地の方によれば期間中はまれにみる晴天続きであったとのことで、学会はネッカー川のほとりの会場で素晴らしい景色の中で行われました。
日独皮膚科学会へは今回初めて参加させていただきましたが、日独ともに各大学の高名な諸先生方がたくさん参加されており、多少緊張しながら会が始まりました。
初日の午前にはドイツから手湿疹に関する演題が複数あり、身近な疾患で日常診察の際には時に画一的な診察治療となりがちであったことを反省しつつ拝聴しました。
悪性腫瘍のセッションでは、悪性黒色腫のみならずそのほかの皮膚悪性腫瘍に対する分子標的薬による治療の可能性(再発性、転移性有棘細胞癌に対するセツキシマブ、メルケル細胞癌に対するイマニチブなど)や、腫瘍免疫でのM2マクロファージの役割などに関する演題があり、大変勉強になりました。
その他にも、ちょうど少し前に抗TIF1α/γ抗体陽性の皮膚筋炎の患者様が入院されていましたが、悪性腫瘍内のTIFγに対して抗体が産生されるためこのような患者さまでは抗体価が腫瘍マーカーとして参考になる可能性があることも報告されており興味深く感じました。
参加者には学会場のホテルで朝食、昼食が準備されており、日独の多くの先生と同席させていただくという普段ではめったにない機会に恵まれました。大変に刺激をうけ、もっとしっかり皮膚科を学んでゆこうと決意をしたのですが、ドイツの先生に日本自慢をしようとしたところ、先方の方が日本文化に詳しく逆に講義を受ける事態となり、こちらもまた日々精進、、、と古城やネッカー川に誓いました。
最近では日常診療で時間に追われ、日進月歩の治療について行こうとしながら毎日があっという間に過ぎてしまっていたのですが、今回日独の諸先輩方に接して、現在のような様々な検査技術のない時代でも、詳細な観察と洞察力をもった皮膚科医が築いてきた皮膚科学をあらためて魅力的だと実感しました。歴史的背景をふまえた皮膚疾患の理解に努め、今後も頑張っていきたいと思います。
平成26(2014)年6月25日掲載
第26回日本アレルギー学会春季臨床大会
第26回日本アレルギー学会春季臨床大会
会長:眞弓光文福井大学長 会期:2014.5.9-11
会場:国立京都国際会議場
大阪大学医学部皮膚科学教室
准教授 室田浩之
京都で行われた第26回日本アレルギー学会春季臨床大会に参加した。頭の先からしっぽまで、私にとっては忙しく慌ただしい学会であった。しかし大変勉強しやすいプログラム構成で、新しいインスピレーションを得ることのできた学会でもあった。
西岡めぐみ先生のロドデノール白斑における免疫学的機序を検討した報告は大変聞き応えがあった。CD8+CCR4+T細胞の出現に関するプレゼンは教室内予演の時よりもブラッシュアップされていた。質疑応答には西岡先生の洞察の深さが感じられ、私に様々なアイデアを沸き起こしてくれた。
田原先生には思春期アトピー性皮膚炎の悪化因子としてストレスが大きな問題となっており、そのコーピング能力に関する考察をいただき、小野先生にはアトピー性皮膚炎の汗の質の問題に関して報告いただいた。いずれも私たちの悪化因子に対する取り組みの最新の話題だった。越智先生は寺尾先生と共に研究を行っている皮膚の内分泌学という新しいコンセプトの発表を行われた。皮膚がストレス応答においていかに独立した機能を持つ臓器であるかについて感慨深く拝聴した。
私は教育セミナーで痒みの総括をする機会をいただいた。「痒がる脳」というコンセプトをうまく伝えられたらなら幸いだが・・。
招請講演では京都大学免疫細胞生物学の湊 長博先生のT細胞のsenescence と自己免疫に関するレクチャーを拝聴した。リンパ球の増加過程は大きくantigen-drivenとhomeostatic proliferationに分けられる。antigen-drivenによる免疫反応では大量のエフェクターt細胞が生まれる。この反応は爆発的であり、莫大なエネルギーを要する。通常、T細胞分裂のエネルギーには酸化反応が使われるが、エフェクター細胞の合成に必要な量ではないため、解糖系へのメタボリックシフトが生じると最近報告されたとの事であった。リンパ球の運命を決める抗原暴露に対する生体 反応はかようにエネルギーを浪費するのだと驚いた。爆発的なエフェクターT細胞の増加は胸腺髄質に負担をかける結果、胸腺を萎縮させる。これは老化に伴い、胸腺が萎縮する原因とも考えられる。加齢による胸腺の萎縮に伴い、リンパ球の分画にも違いが生じ、PD1+CD153+T細胞(SA-T細胞)の分画が増えてくる。さらに加齢によってリンパ節にはgerm centerが増え、GC内にB細胞のほかT細胞が混じってくるようになる。リンパ節germ center内のT細胞はfollicular T cellと呼ばれ、SA-T細胞の性質を有する。SA-T細胞は免疫学的にアナジーであるが、加齢に応じて増えるメカニズムはよく分かっていなかった。そこで若いマウスのT細胞を放射線照射によって免疫を不活化したマウスに移入し、移入した細胞の増殖と、ホスト側のリンパ球再構成の双方が観察された。移入されたリンパ球は生体内で急速に増殖し、SA-T細胞の性質を持つことがわかった。このように数を合わせるために生じるリンパ球増殖による代償過程はhomeostastic proliferation と呼ばれる。つまり、生体は胸腺萎縮を代償としながらリンパ球を免疫反応に利用しながら齢を重ねているのだ。皮膚リンパ腫においてもリンパ球はアナジーなことが多い。またアトピーや乾癬に類似したリンパ腫も成人以降に生じる。加齢に伴うリンパ球の代償過程がなんらかの形で損なわれる事が様々な皮膚疾患に関与している可能性があるのではないだろうか。
さて、最終日は浅野先生を委員長とする日本アレルギー学会国際交流委員会肝いりのeast asia allergy symposiumが開催された。私も委員の一人として運営に携わることができた。中国、韓国、日本の交流を大いに深めることができたように思う。
会頭の真弓先生による閉会の挨拶を拝聴し、片付けのはじまった京都国際会館を後にする。4日間に渡る学会場生活も少し懐かしく思える。会場の駐輪場に止めていたバイクは埃をかぶっていた。荷物をなんとかパニアケースに収める。スーツの上からライディングジャケットをまとい、エンジンに息を吹き込み、シフトを1足に蹴り落とすや、颯爽と走り始める。片岡義男さんも言うように、バイクは出発する時にすべてを置き去りにしてくるような感覚があり、これが良い。
黄昏時、京都の風に吹かれ、木の葉のように煽られる私と相棒。翌日の朝から始まる通常業務もなんだかこなせそうな気がした。(おそらく気のせいだろう)
学会中はタブレットにメモを取り、図などは紙に書いてタブレットで写真を撮りまとめます。タブレットは知識の宝庫になりますし、学会参加記も作りやすいのです。
平成26(2014)年5月15日掲載
Drug Hypersensitivity Meeting 2014
Drug Hypersensitivity Meeting 2014 April 9-12 Bern, Switzerland
RegiSCAR-Meeting April 12-16 Kirchzarten, Germany
加藤健一
(大学院博士課程)
今回スイスのベルンにてDrug Hypersensitivity Meeting 2014に参加して参りました。私にとって昨年台北で行われた8th International Congress on Cutaneous Adverse Drug Reactionsに続く2回目の薬疹の国際学会への参加でした。
ヨーロッパで行われた学会でしたが、今回も日本から多くの研究に携わっておられる先生方が参加されておりました。また今回の学会で強く印象に残った講演の多くが日本の先生方による講演であったように思います。
薬疹の分野は、薬疹の発症機序において未だ解明されていない部分が多く、治療プロトコールなどに対する統一したコンセンサスが得られていない分野です。例えばステロイドの内服による治療はヨーロッパでは一般的ではありません。日本国内においては、内服治療そのものは行われていても、その内服量や漸減方法が施設により違っている状況です。未開の部分が多いこの分野は今後もさらなる研究が必要とされています。
DHM参加後、ドイツのフライブルグ近郊のキルヒツァルテンにてRegiSCAR-Meetingに参加しました。RegiSCARとはSJSやTEN、DIHSといった薬剤性重症皮膚有害反応(severe cutaneous adverse drug reactions, SCARs)の症例を収集・登録し、疾患の病態を突きとめることを目的としたネットワークです。元々ヨーロッパの国々を中心に始まり、現在は南アフリカや台湾などからの参加もあります。ここに今回は日本からも参加し症例提示をして参りました。
RegiSCARでの症例登録において原因薬剤や治療内容、治療の影響などが考慮されないことに日本との違いを感じました。また登録に際しての重症度判定がエキスパートと言われる数人の専門家によって行われることも興味深いものでした。やはり薬疹の分野の研究は課題の多くの課題を抱えていると感じました。
話はDHMに戻りますが、今回の大会は、p-iコンセプトでも有名なPichler先生が会頭の下、開催されました。Pichler先生は3月に退官され、今回が最後の学会主催となるとのことで、あらゆる講演の中でスライドに様々な写真が現れたことにより”イジられて”会場が温かい雰囲気になりました。Pichler先生のように国際的に活躍し、なおかつ世界中の研究者から尊敬され愛されるような研究者になれるとすればそれは素晴らしいことです。自分もまたそういった研究の一翼を担いたいと思いました。
学会会場からの景色。アーレ川にかかるコルンハウス橋と旧市街。その奥には早春のアルプス山脈が見えました。
学会終了後の夕方にベルンにあるアインシュタインハウスを訪れました。なにかいいアイデアが浮かびそうな気がします。
平成26(2014)年4月29日掲載
長崎大學医学部皮膚科学教室開講100周年記念
長崎大學医学部皮膚科学教室開講100周年記念
日本皮膚科学会長崎地方会第322回例会
2014. 4.12-13
長崎ベストウェスタンプレミアホテル
長崎大學良順会館
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗
長崎大學皮膚科学教室が開講100周年の記念すべき年をお迎えになるということで、この度記念式典、地方会で講演、祝辞を述べる機会をいただいた(写真、プログラム)。
長崎大學医学部はオランダ人医師、J.L.C Pompe Van Meedervoortが1857年11月12日に設立した長崎医学伝習所をその礎とし、以後多くの蘭学、西洋医学の人材を輩出し、日本の近代医学の発展に貢献したのは皆さんご存知の通りである。私自身は現在13代目の教授である宇谷厚志先生の前々任11代教授として、1996年7月1日付けで着任し、2004年2月28日まで7年9ヶ月奉職させていただいた。私が在任中,長崎大學医学部開講140周年記念祝賀会が催されたことも懐かしく思いおこされた。
私の記念講演の演題は「皮膚の恒常性とアレルギー:長崎医学から学んだこと」とし、長崎大學在任中に研究を開始し、大阪大学に転任後も継続している研究を紹介させて頂いた。まず私の前任の吉田彦太郎先生と阿南貞男先生が着手された、長崎大學新入生のアトピー性皮膚炎検診の成果を紹介させて頂いた。この研究はアトピー性皮膚炎の疫学研究の継続的な研究として画期的な成果を残し、大阪大学でも2011年から3年間行った厚労省の思春期アレルギー患者の動態研究と医療経済への影響という班研究に繋がった。次にベ・サンゼ先生が見いだした、非神経組織である皮膚のケラチノサイトが神経ペプチドであるサブスタンスPを産生し、Th2型アレルギーを増幅すること、アトピー性皮膚炎病変部由来の線維芽細胞はサイトカイン刺激への高反応性を継代培養後も維持し、Atopic fibroblastともいうべき形質を獲得していることを紹介した。この研究は現在室田先生がアーテミンという新たな神経成長因子を発見した研究に繋がり、痒みの研究に大きな貢献をしている。次に熱帯医学研究所の小坂教授と共同研究し、江石先生が見いだされたアトピー性皮膚炎での発汗機能の低下にかんする研究を紹介した。この仕事が松井佐起先生、室田先生の2光子顕微鏡によるエクリン汗腺の発汗動態を世界に先駆けて記録した画期的な研究に繋がり、講演後の懇親会でも多くの賞賛の声を頂いた。さらに長崎大學で開始した尋常性白斑にたいする活性型ビタミンD3の臨床研究がTh17疾患としての自己免疫性白斑の病態解明に繋がり、抗IL17A抗体の治療効果の検討まで進んでいること、腫瘍医学の松山俊文教授の指導で開始したTNF受容体p55ノックアウトマウスでのブレオマイシン誘導性強皮症モデルで強皮症のライフサイクルが1週間で見られることの発見、そして抗IL6受容体抗体の人への応用が進んでいることを話させて頂いた。私自身長崎大學で蒔いた種が大阪の地で大きく育っていることを再認識した今回の記念地方会でもあった。また長崎大學で一緒に働いた多くの先生方と再会でき、「当時の仕事の意味がやっと分かった」、そして、「今の仕事に繋がり大変嬉しい」とのコメントも頂き本当にありがたく、久し振りに感動した夜でもあった。最初に祝辞を頂いた片峰茂学長からは2001年に私が会頭を務めたシンポジウム「皮膚感染症の新たな視点」でプリオン病に関する講演を頂いたことにも触れて頂き、あのときの講演が片峰先生の研究にもブレークスルーになったという嬉しいコメントや河野茂元医学部長、現病院長からも私と同じ頃に教授に就任した時のエピソードを紹介して頂いた。野北先生は昨年101歳でご逝去された。あと1年間お元気であればと残念であったが、逆に若い元気な皮膚科医が育ちつつある現状を見て安堵されているかとも思った。
懇親会後は銅座に席を移し、長崎大學のラボの方や当時の弟子の先生方と懐かしいグラスを傾けた。この席には東京から遅れて参加した室田先生、翌日の発表を控えた山岡先生も同席し、懐かしい話に時間の経つのも忘れ話し込んだ。この後の3次会には博多から駆けつけてくれたベ・サンゼ先生や獨協医大の濱崎洋一郎教授など男のみの6人で日が変わるまで私の昔なじみのお店で楽しい時間を共有することができた。
また学会中、長崎のお菓子とともに歴代の教授の写真を印刷したチョコ(写真)も提供され、翌日特別講演をされた京都大学の宮地先生からは私のチョコが一番売れていると聞いた。
2日間に亘り立派な会を主催して頂いた宇谷教授、教室の先生、そして
懐かしい、同門の先生には心より御礼を申し上げ、今後の長崎大學皮膚科のさらなる発展を願って御礼の言葉としたい。
記念式典で挨拶される宇谷厚志教授
大阪大学大学院情報統合医学皮膚科 片山一朗
平成26年4月15日掲載
第77回日本皮膚科学会東京支部学術大会
第77回日本皮膚科学会東京支部学術大会
2014年2月15〜16日
会長:日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野 照井正先生
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
2月に入り、本州を中心に2度も豪雪を伴う寒波に見舞われた。特に2月14日以降の寒波は各方面に甚大な被害をもたらした。東京支部総会は照井先生をはじめ運営事務局の皆様は大変なご心労であったろうと思う。小生は学会内でシンポジストの機会をいただいていたので出席させていただいた。大阪から東京への移動は問題なかったが、東京都心ではかなりの雪が積もっており、多くの参加者は長靴で来られていた。悪天候であったものの1500名もの参加者があったのは本大会の興味深い趣向の賜物と思う。学術大会のテーマは「挑戦する皮膚科学」という前衛的なものだった。「チャレンジレクチャー」と名付けられた基調講演は最新の話題を効率よく勉強するのに役立った。
私は中でも特に東京大学名誉教授の上野川修一先生の「腸、とくに共生する細菌とその免疫系について」という講演の内容に共鳴して体中が震えるような感覚を持った。腸は最大の免疫機関とされる。腸パイエル板には免疫系の発動に必要なリンパ球、抗原提示細胞がすべて揃っており、病原菌の排除に関わる。その排除機構には選択制がある。病原菌は排除されるがラクトバジルスなどの善玉菌は排除されない。この選択機構にTLRが関与している事を大阪大学の審良先生が発見された。腸内細菌と腸管免疫は常に対話している。腸管側の異常は腸内細菌を変化させ、腸内細菌の変化は腸管の機能に異常を与える。私が特に共鳴したのはこの関係に「脳」も関与するという「腸脳相関」と名付けられた考え方だ。腸の異常は脳に影響し、脳の異常は腸に影響をあたえる。腸と脳は互いに独立していながら、腸内細菌叢に由来する代謝産物が迷走神経を介して脳に影響を与え、脳の異常もまた腸管免疫へ変化を与えることで腸内細菌叢に影響する。
最近、腸の興味深い機能が明らかにされつつある。natureでは腸管内を食事が通ることで血液中の好酸球数に日内変動の生じることが報告されたばかりだ。私も皮膚と脳の関係を調べながら強く感じるが、ヒトの体は各臓器が各々恒常性を保つための独立した仕事を行い、各臓器間の調律を整えるのが脳の役割であろうと思う。疲れやストレスなどに伴う脳機能の変調は全身の臓器の調律に不協和音を生じさせるだろう。私たち皮膚科医はそんな症状の一つとして皮膚疾患を診ているのではないだろうか。特に消化管は皮膚と関係が深い。親交の深い上海中医薬大学付属曙光病院皮膚科 張慧敏教授に教わった言葉が思い起こされる。「皮膚の「膚」は「七つの胃」と書くでしょう。皮膚と消化管は深い関係があるんですよ。」まさに点と点が線で繋がるような感動をいただいた学会であった。
さて、私はシンポジウムでアトピー性皮膚炎と汗・温度の関係について話をさせていただいた。悪化因子にはまだまだ未解明な部分が残される。「真実はまことに影法師」。しかし本会に参加してアトピー性皮膚炎治療に立ちはだかる次の壁に風穴を開ける心構えができた。
新幹線の中からみた雪景色
平成26(2014)年2月23日掲載
8th International Congress on Cutaneous Adverse Drug Reactions
8th International Congress on Cutaneous Adverse Drug Reactions TAIPEI
2013.11.16-17
大阪大学医学部皮膚科学教室
加藤健一(大学院博士課程)
今回台湾において行われました第8回International Congress on Cutaneous Adverse Drug Reactionsに参加して参りました。学会開催の2ヶ月ほど前に小豆澤先生の元に会頭であるChung先生からレジデントを招待して頂ける旨のご連絡があり、私も参加させて頂くことになりました。海外の学会に参加するのは第3回世界乾癬学会以来で、私にとっては1年半ぶりの海外での参加でした。
学会は、世界の薬疹の研究、臨床に携わる先生方が参加され、3日間に渡って行われました。薬疹の研究はヨーロッパやアジアにおいて特に盛んで、台湾で行われたということもあり、海外からだと日本からの参加者が一番多かったようです。
学会での講演は薬疹に関する疫学や基礎研究、臨床研究など多岐に渡り、私にとっては日頃疑問に思っていたことやあやふやだった知識を整理する上でとても有益なものになりました。逆に、未知の分野では、予備知識がない上に英語力も乏しいために聞き取ることができず、自分の英語力に対して改めて反省する機会ともなりました。
今回の学会を通じて、今まで文献上でしか知らなかった先生方と直接お会いすることができ、お話をきくことができました。たくさんの日本の先生方ともお会いすることができ、また一緒にお食事などしながらお話できたことは貴重な経験となり、研究のモチベーションもますます上がりました。
滞在期間中ほぼ学会漬けであったためどこかに遠出することはできませんでした。しかし、主催者側に用意していただいたホテルが、Grand Hotel(漢字では圓山大飯店というようです)というホテルで、国民党統治時代からの歴史あるすばらしいホテルでその外観や内装を楽しめたこと、また学会会場であるChang Gung Universityにホテルから向かうバスが高速道路で前の車に衝突し、高速道路上で新たに手配されたバスに乗り換えるという珍事に遭遇したことなど学会以外でも思い出深い出張となりました。
今回学会参加をお許し下さった片山先生、種村先生、貴重な機会を与えて下さった小豆澤先生、Chung先生に御礼を申し上げます。本当に有り難うございました。
ホテルロビー
事故の後バスを乗り換えているところ
平成25(2013)年12月29日掲載
7th World Congress on Itch (WCI) 2013参加報告
7th World Congress on Itch (WCI) 2013参加報告
2013年9月21-23日 in Boston
大阪大学医学部皮膚科学教室
D1山賀 康右
今回、片山教授、室田講師とともにアメリカ・ボストンで開催された7th World Congress on Itch (WCI) 2013に参加しました。9月のボストンは涼しく幸い天候にも恵まれ、普段着なれないスーツを一日中着ていてもまったく苦にならなかったです。
学会には世界各国から皮膚科の先生だけでなく、麻酔や神経学を専門にされている先生方も多く参加され、oral presentationだけでも70以上の演題が御座いました。
私は皮膚科に入局1年目のド素人でかゆみについて無知ではありますが、今回の学会に参加させて頂いて、かゆみに関する最新の情報に触れさせて頂き、非常に多くの収穫があったように感じております。研究面ではかゆみと末梢神経-脊髄-中枢神経とを関連づけている演題、臨床面では慢性腎臓病などの全身疾患と掻痒に関する演題が目立ちました。ドイツの麻酔科医でいらっしゃるMartin Schmelz先生が座長として各演者に対して「皮膚生検はしたのか」と繰り返し質問されておられたこと、九州大学皮膚科学教室の御所属で、現在Pittsburghに留学されておられる蜂須賀 淳一先生がパッチクランプ法など電気生理学的手法を用いたかゆみの御研究についての御発表されておられたこと、Anne Louise Oaklander先生が神経性の掻痒についてsmall fiber polyneuropathyが原因として最も多く診断には生検を要すると発表され、Deon Wolpowitz先生が掻痒症に対する生検の重要性とその手技について発表されておられたこと、Christian Apfelbacher先生が1200名以上にも及ぶ手湿疹患者について解析された結果を発表されておられたことなど、印象に残る御講演が多く御座いました。
そして、かゆみについて皮膚の状態はもちろん、神経、その他全身の状態を含めて包括的に考えることが重要であると痛感致しました。
ところで私は「The impact of capsazepine on artemin-induced thermal hyperalgesia」という演題で10分間のoral presentationをさせて頂きました。研究発表をするのも初めてですし、まして英語で発表をすることなんて今までまったくなかったので、出国前は大変緊張しておりました。本番では
・指定時間内にプレゼンを終える。
・前を向いてプレゼンする。
この2点のみを心掛けて発表させて頂き、無事発表を終えることが出来ました。
質疑応答でも3-4人の先生方から御質問、御指摘を頂きましたが、なんとか乗り切れたように思っております。(勘違いかもしれませんが)
室田先生は次回のWCIを当科主催で奈良で行うことについて、片山先生はステロイド抵抗性の痒疹におけるビタミンD3外用の有用性、痒疹の痒みが異常な神経の伸長によらないことについて御講演されておられました。御二人とも堂々とプレゼンテーションをされておられ、私も先生方のような御講演が出来るよう精進せねばならないと感じました。
学会の最終日である23日から25日にかけてはニューヨークに滞在しておりました。
24日に現在留学中である梅垣先生の御紹介でColumbia UniversityのAngela M Christiano先生の研究室を見学させて頂きました。そして、そちらでも再度プレゼンさせて頂きました。学会で数百人の前で発表するよりも研究室で十数人の前で発表する方が何故か緊張しました。
今回の米国訪問で多くの日本人の先生方はもちろん、海外の先生方とお話しすることが出来たこと、そして海外の英語しか通じない状況で2回もプレゼンテーションをさせて頂いたことは、私にとって大変貴重な経験となりました。
今回は室田先生が中心となって行われた研究内容について発表させて頂きましたが、今後は私自身が中心となって行っている研究内容について、海外で多く発表できればと思います。そのためにも日々精進して行きたいと思います。
本学会の会頭でいらっしゃるEthan A. Lerner先生及び学会を運営されている皆様、研究室の見学をさせて下さったAngela M Christiano先生と研究室の皆様、ニューヨークを案内してくださった梅垣先生とそのご主人ならびにご友人、今回このような機会を与えてくださった室田先生と片山先生に深謝致します。
2年後のWCIは当科主催で奈良で行われる予定であり、近場なので先生方も是非御参加下さい。
P.S. バーで年齢確認をされて、少しテンションが上がってしまいました。
私がプレゼンテーションをしている様子です。
平成25(2013)年9月29日掲載
7th world congress on itch
7th world congress on itch Boston, USA
World Trade Center. September 21-23
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
皮膚科は恐らく診療科の中で最も痒みを語る機会の多い科であろう。痒みと戦うには敵を知らないといけない。このworld congress on itchは痒みを知る大変良い機会となる。今回はボストンで開催された。プロテアーゼと痒みの研究で名高いEthan Lerner先生の主催であった。大変細かいところまで心遣いのされている学会で、集中して勉強できる環境を提供していただいた。学会の終わる頃には始まる前より確実に知識が増えたと実感できた。2年後の本学会を私どもが主催することになり、日本での開催のメリットを理事会とgeneral assemblyでプレゼンする必要があった。日本にオリンピックを誘致するような気分を味わせていただいたことも本会の特筆すべき点であった。
学会で印象にのこった話を紹介させていただく。
Gil Yosipovich先生の話では掻破による快楽と痒みの伝染について学んだ。アトピー性皮膚炎では掻く事に喜びが感じられる。Gilのグループは、この「喜び」と「痒みから解放される」ことに反応する脳の領域をfunctional MRIで確認していた。私自身も皮膚で生じた現象が中枢に与える影響を検討している。このようなデータは私たちの研究にとって大変重要なリファレンスとなりうる。また痒みは伝染するといわれる(contagious itch)。掻いているヒトをみると自分も掻きたくなるというエピソードは私自身も経験するところだ。実はこのような痒みの生じる体の場所は決まっているとのことであった。このような身につまされる仕事は共感でき、私の心を打つ。
さらに痛み感覚と痒み感覚は同じか、という疑問は徐々に結論が出つつあるようだ。どちらも体を守るために備わった機能だが、痛みは避けるが痒みは掻くといった動力への反映のされ方の相違点、痛みが痒みを止める事、モルヒネは痛みを止めるが痒みを増強する事などの違いから、両者は異なる感覚であると想像されてきた。神経には痒み選択的な経路があり、ヒスタミンやPAR2アゴニストSLIGRLなど痒みを引き起こす刺激に反応しても痛み刺激には反応を示さない神経の一群がある。以前、IIDへの参加記でも書かせていただいたようにこの領域の研究は世界で盛んに行われている。Natriuretic polypeptide B (Nppb)は脊髄における痒みの伝達因子であるという最近のTopicsを Dr. Hoon、Dr. Carsteinから学んだ。脊髄後根神経節と脊髄のdorsal hornの間でpruriceptorを介したNppbの受け渡しによって痒みが伝達される。末梢神経で痒みは特異な伝達方法が使われているのだ。
Dr. Woofは”selectively silencing pain and itch”という大変興味深いタイトルの講演であった。局所麻酔はナトリウムチャンネルを抑制することで疼痛を軽減する。抑制するには電荷を伴わないリドカインが細胞内に入らないといけない。リドカインは侵害受容だけでなくすべての感覚を鈍らせる。ではalalgenicとantipururiticを分けることはできるだろうか?彼らの発見したQX314というコンパウンドは細胞の中に入った際に神経の感覚を強く鈍らせるが通常は細胞の中に入れない。そのため、痒みあるいは疼痛に関与する神経に選択的に取り込ませることができれば「痛み止め」「痒み止め」の使い分けが出来るのではないかと考えた。QX314はTRPV1を介して取りこまれるらしい。カプサイシンと同時に投与することでTRPV1陽性ニューロンに取りこまれ、ナトリウムチャンネルをブロックする。その結果、light touchの感覚や運動機能は鈍らないが、侵害疼痛は強く抑制することが分かった。さらに細胞内での滞在時間がリドカインよりは長いため、長期にその作用が続くという。私の診療における経験でも、局所麻酔の効かない症例に遭遇する機会は多い。患者さんは「酒にも酔いにくいから…」と言われると「それは効きにくいでしょうね」などという非科学的な会話をしていたが、これはキシロカインの細胞内への麻酔のペネトレーションに問題があるのだろう。QX314はヒスタミンによる痒みも抑制した。 QX314の効果は冷静に判断する必要があるだろうが、患者さんにとっては朗報になろう。
DR. Schmelzは慢性掻痒におけるNGFの役割に一石を投じた。NGFは長時間に渡り、侵害受容神経を増感させる。NGFはハッショウマメによって誘導される痒みを増感させるが、ヒスタミンの痒みは増感しない。さらにNGFは神経成長因子と言われるが皮膚の神経支配に影響を与えないとのことだった。この所見は私自身も同じ結果を得ており、NGFは神経伸長させるという過去の報告を再現できていない。
私達の教室からは山賀先生がアーテミンに関する発表をされた。アーテミンによって誘導される熱感覚過敏はTRPV1を介さないことをTRPV1の選択的アンタゴニストを用いて証明した。フロアからの質問にも1つ1つ丁寧に答えられ、すばらしい発表だった。片山教授も自ら痒疹の最新治験を披露された。ビタミンD3がTh2軸に影響を与え、組織リモデリングを抑制するメカニズムを示された。さらに痒疹の痒みは神経の異常な伸長を介さない事を報告され、痒疹の病態の解明にとって大きな風穴を開けられた。
さて、JFKミュージアムで行われた本学会のバンケットではGil Yoshipovitch先生のとなりに席を取った。「痒いときと痛いときに人の作る表情は違うのに気付いていたかい?」とGil。「そこに注目したことはなかった」と答えるとGilは「大阪は違う表情をしているのかな」と返してきた。私の「そのとおり、笑いの絶えない街だから」という返事にGilも笑った。Gilの背後に窓越しに映るボストンの赤紫色の夕暮れが暖かく見えた。
写真:会場となったSEA PORT WORLD TRADE CENTER。良い天候に恵まれ、これが旅行で来れていたらと悔やまれるほどであった。このどうしようもなく、いてもたってもいられない感覚も”itch”と定義される・・・。
平成25(2013)年9月27日掲載
第28回日本乾癬学会
第28回日本乾癬学会 9月6日~7日
東京ドームホテル
会長:中川秀己(慈恵医大皮膚科学講座教授)
大阪大学医学部皮膚科学教室
山岡俊文
9月6日から9月7日まで東京において開催された第28回日本乾癬学会に片山教授をはじめ谷先生、林先生の計4名で参加してきました。今年で乾癬に対して生物学的製剤が適応となり4回目の日本乾癬学会ということも相俟って、やはり生物学的製剤に関連した発表が目立ちました。現在我が国において、乾癬に対して3種類の生物学的製剤が市販されていますが、一次無効や二次無効のため同剤の増量や、他剤の追加、さらには他剤への変更を余儀なくされ、各施設方途をつくされていると痛感いたしました。実際私もその一人で、限られ種類の薬剤で患者さん個人に最適な治療法を模索する日々が続いています。また今後さらに、乾癬において関連が指摘されている各種サイトカイン阻害薬が治験、市販へと急展開し、会頭の中川秀己先生のお言葉をお借りしますと、これがまさしくおおきなうねりと敬服しました。さらにおおきなうねりは、関節症性乾癬についても生じており、PASE質問票を用いて評価するとの演題も拝聴しました。感度、特異度においてやや問題点もあり、新たなツールの必要性も痛感しました。
今回当科からは、アンケートを用いた生物学的製剤による乾癬患者のQOL、WPAI-PSOの改善効果に対する検討について発表しました。患者さんにとって、現在の治療法から生物学的製剤もしくは非生物学的製剤に変更することで、PASI、DLQI、VASが改善することが明らかとなりました。つまり、漫然と同様の治療法を継続することは、患者さんのPASI、QOLを悪化させ満足度を下げるが、こまめに治療法を見直すこと自体が患者さん個人における主観的な治癒状態に導けると結論づけました。
今後も限られた治療法と、限られた医療資源で最大限の効果を得るべく、定期的に治療法を見直し、各人における主観的な治癒状態を目指していきたいと思います。
平成25(2013)年9月17日掲載
第21回日本発汗学会総会
第21回日本発汗学会総会
8月30日31日
信州大学医学部旭総合研究棟
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
汗を知り、汗に向き合う:日本発汗学会総会に参加して
“Think different”
これは、かつてアップルコンピューターのロゴマークに付記されていた同社のキャッチコピーである。この言葉には私自身、強烈なインパクトを感じており、自身のパソコンのデスクトップ画面にしている。
昨年から参加している本学会に、今年はシンポジストの機会をいただいた。異なる分野の研究内容を拝聴しながら、この”Think different”という言葉が自分の中に沸き起こり、思いつく限りの新しいアイデアを今すぐにでも研究したいという衝動にかられた。発汗学は久野寧先生の書かれた“human perspiration”(Springfield)というすばらしい教科書(英語)がある。1956年に発行されたものだが、私はアメリカから中古本を取り寄せて拝読させていただいた。その内容の濃さに驚愕する。皮膚科領域では現代皮膚科学大系に詳しい汗に関する記述があるが、生理的な面は久野先生による本書が引用されている。私も本書からの受け売りの知識を紹介させていただく機会が多い。その後も発汗学は進歩し続けていることを本会で実感する。特に神経生理学的な側面で顕著だ。皮膚科として、皮膚の専門家でしか思いつかない、そして研究できない事象はないものか?そう、まだまだたくさんあるはずだ。その事は鳥取大学適応生理学の河合康明先生による特別講演「日本発汗学会に求められること」でも紹介された。発汗学の進歩はもちろん、発汗で困っている方へのフィードバックにつながるような新しい話題を提供できるよう研鑽を積んでいきたい。
臨床的には無汗症の原因や背景について多くを学んだ。特に抗てんかん薬による薬剤性や、多系統萎縮症に伴う乏汗症症例について学んだ。2日目の「汗の神経診断学」というシンポジウムでは神経疾患で見られる発汗異常について拝聴した。皮膚科医として発汗異常からこれら神経疾患の発見に貢献できるのではないかと考え、神経疾患のスクリーニング方法について総合討論で質問させていただいた。シンポジストは神経内科の先生方だったこともあるだろう、すでに神経症状が先行しているとの事であった。神経内科を受診される方は確かに神経症状があるから当該科を受診するはずだ。皮膚科専門医が皮膚症状から常に神経症状に眼を向けておく必要はあるだろう。
分節型発汗異常(harlequin症候群, Ross症候群など)の病態に関しては頸部腫瘍、神経鞘腫、内頸動脈解離、サルコイドーシス、シェーグレン症候群など鑑別の必要性をまなび、やはり無汗症は全身のミノール法による検討が最初のスクリーニングとして必須と考えた。
東京医科歯科大学皮膚科の宗次先生からは高IgE症候群でみられた寒冷誘発性発汗過多症の症例提示があった。寒冷刺激が交感神経に入力するという神経のつながり方の異常?やCNTFの関連について説明されていた。Frey症候群に代表されるような外的組織損傷(本例の場合は神経周囲の冷膿瘍など?)に起因するものであろうか、興味深く拝聴した。
信州大学のキャンパスはまだ多くの蝉がケラケラと笑っていた。自然が多く、すばらしいキャンパスだった。私は大学から5分程度浅間山方面にあるいたところの民宿に泊まったので効率よく時間を過ごすことができた。民宿のようなインターネットの無い環境はなんだかとってもリラックスできる。2日目学会の始まる前に大学横の女鳥羽川周囲を少し散策し、適度な疲れと満足感に浸った。丁度、大学病院前を歩いているとドクターヘリが飛びたつところに遭遇した。小生の夜間休日の当直業務の思いも重なり、ヘリに心の中で激励を送った。その空の高さに秋の気配を感じたのだった。
平成25(2013)年9月1日掲載
9th Asian Dermatological Congress
9th Asian Dermatological Congress(香港)に参加させていただいて
2013年7月10日―13日 in Hong Kong
大阪大学医学部皮膚科学教室
田原真由子
今回初めて海外での皮膚科学会に参加致しました。
大学院に入り、高齢者紅皮症に関してご指導をいただき、これまで何度か発表の機会をいただきました。紅皮症の病態は多岐にわたり、精査の結果原因が分からないものも多く、初めは混乱ばかりしていました。しかし、発表を重ねるにつれ、視点を変えながら、カルテを何度も読み返し、文献を調べていくうちに徐々に整理ができて、自分の考えをもつようになりました。片山先生よりAsian Dermatological Congressで高齢者紅皮症のまとめとなるような発表をとお話を頂戴したときは、自分の能力やまだ6ヶ月だった子供のこともあり本当に行けるか不安でした。
毎週火曜日に英語で行われるlabo meetingで、はちゃめちゃな発表をしたこともあり、英語の練習に一念発起しました。
これまで国内の学会では味わったことないくらいの緊張に、手が震えながらの発表でした。質問に対しては英語の壁が高く、思うように答えることができず、悔しい思いもしましたが、終わった後はとても心地よい爽快な気分でした。
これを機に英語も含め、皮膚に関して勉学に励もうと思います。とても貴重な学会となりました。
このような貴重な機会を与えてくださり、いつも温かくご指導くださる片山先生、直前にも関わらず丁寧に教えてくださった寺尾先生をはじめご指導いただいた先生方に御礼を申し上げます。本当に有り難うございました。
平成25(2013)年8月20日掲載
9th Asian Dermatological Congress
9th Asian Dermatological Congress参加報告
2013年7月10日―13日 in Hong Kong
大阪大学医学部皮膚科学教室
荒瀬規子
今回初めての皮膚科の国際学会に参加する機会を与えて頂き、4日間大変楽しく過ごして参りました。海を眺望できる広い学会会場で白斑と乾癬の合併症例(ポスター)を発表しました。学会で印象に残ったのは中国皮膚科学会会長Xuejun Zhang教授の乾癬、アトピー性皮膚炎などの種々の皮膚疾患等に関するご自分の遺伝子解析研究に関する講演で、多数の研究者が遺伝子解析作業を分担して行っていて規模の大きさを感じました。夜はおいしい中華料理に舌鼓をうち、夜景を眺めてあっという間の4日間でした。また一緒に参加された楊先生の香港在住のいとこの方が夜の香港を案内してくださり、楊先生共々大変お世話になりました。おかげで香港により親しみを持つことができました。このような機会をお与え下さいました片山先生や諸先生、一緒にご参加くださいました音羽先生、谷先生、山岡先生、楊先生、田原先生に心より感謝申し上げます。
地元の方が集まるレストランにて
平成25(2013)年8月13日掲載
The 8th World Congress of Melanoma and EADO
第8回World Congress of Melanoma in
Hamburg,Germany の見聞録
2013年7月17日―20日 in Hamburg
大阪大学医学部皮膚科学教室
助教 林 美沙
日本が記録的猛暑の中、7月17日~20日間ドイツのハンブルグにて開催された第8回World Congress of Melanomaに参加するため、片山教授、種村先生、田中先生とともに、フランクフルト経由でハンブルグへ旅立ちました。初めての国際学会の上、飛行機が苦手な私はドキドキしながら大阪をあとにしました。
ドイツは雨季で肌寒いとの情報でしたが、滞在中天候に恵まれ、暑さすら感じました。ドイツと言えば『ビール』『ソーセージ』!! Summur timeで夜9時でも昼のような明るさで時間の間隔がなくなってしまい、毎日よく食べ、よく飲んでしまいました(写真1)。ドイツは食費が予想以上に安価で驚きました。ドイツビールは日本のビールよりまろやかで甘みのあるタイプもありとても美味しかったです。ソーセージも大きく、食べ応えがありました。
さてメインイベントの学会ですが、ハンブルグの国際会議場で、学会会場からはとても美しい庭園が見られました(写真2)。ハンブルグは緑と水が多く、ドイツ人が住みたい街上位であることに納得です。私は種村先生ご指導のもと、『A Rare Atypical Melanocytic Tumor Arising in Association with Atopic Dermatitis』という演題でPigmented epithelioid melanocytoma(PEM)の症例を報告させていただきました。PEMは悪性黒色腫に類似した臨床像を呈するが、予後良好の疾患で、2004年に疾患概念が確立した比較的新しい疾患です。学会会場では女性の方も多く、活発に討論がなされており、さすがメラノーマに特化した学会と感じました。私が知りえる既存の治療よりもはるかにいいdataがでていたこと、biologicがメラノーマの治療に入ってくることなど、驚きばかりでした。
またLubeck大学皮膚科を見学させていただく機会がありました。皮膚科に特化した入院施設と治療施設、研究施設、病理部が集約されており、日本との違いに驚きました。ドイツでも皮膚科は女医が多くなってきているそうですが、率先して働き続けている女性がたくさんいる印象を受けました。現在Lubeck大学に留学されている岩田先生、古賀先生にもお話をお伺する時間をいただき、とても有意義な時間が過ごせました。夏休み期間中にも関わらず丁寧に案内していただき、ありがとうございました。 最後に国際学会への参加という貴重な機会を与えてくださり、ご指導いただいた片山教授、種村先生に心より感謝いたします。
(写真1)ドイツの夜ごはん
(写真2)国際会議場から見える庭園
(写真3)ハンブルグ都市内にカラフルにペイントされた水汲みおじさん
平成25(2013)年8月12日掲載
The 8th World Congress of Melanoma and EADO
The 8th World Congress of Melanomaand
EADO 参加記
2013年7月16日―21日 in Hamburg
大阪大学医学部皮膚科学教室
助教 田中 文
2013年7月17日から20日までHamburgで開催されたThe 8th World Congress of Melanoma and EADOに参加させていただきました。
私は癌・精巣抗原のメラノーマ患者における発現の解析結果につき西岡先生、種村先生のご指導の下、ポスター発表をしてまいりました。いつも発表の準備中には頭をかかえていますが、いざ出来上がったポスターを張ると嬉しく、ご指導いただいた先生方やお世話になった方々には本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
学会では、メラノーマ治療に関連して普段は文献上で見ていたような分子標的剤などの新しい治療報告がものすごい勢いでなされていて圧倒されてしまいましたが、ここで受けたたくさんの刺激を帰国後の診療の糧として行こうと思います。
ハンブルグは出発前に予想していたほど寒くなく、晴れて本当にすがすがしい気候に恵まれました。私は久しぶりのヨーロッパで、街中で古い建築を目にしたり、美術館にも立ち寄ることができて、限られた時間のなかで満喫してきました。おいしいビールが彩りを添えてくれて幸せ~な旅でした。
(写真1:ハンブルグの市庁舎。写真2:ハンブルグ市立美術館で林先生と。片山先生、種村先生と全員で行きました。)
またリューベック大学に留学中の岐阜大学の岩田先生、久留米大学の古賀先生にお会いし、同大学での臨床、研究の場を見学させていただくことができました。いきいきとした表情で充実した留学生活のお話をされているのが印象的でしたが、お二人の背景に見えるリューベックの街もまた素敵でした。
(写真3:旧市街入口の門)
今回のハンブルグでも大変に充実した6日間を過ごすことができました。学会に参加させていただくにあたり、ご指導くださいました先生方、また留守中の病棟外来業務を引き継いでくださった先生方に心からお礼を申し上げます。
平成25(2013)年8月8日掲載
9th Asian Dermatological Congress
9th Asian Dermatological Congress参加報告
2013年7月10日―13日 in Hong Kong
大阪大学医学部皮膚科学教室
助教 山岡俊文
7月10日から7月13日まで香港において開催された9th Asian Dermatological Congressに片山教授をはじめ谷先生、荒瀬先生、楊先生、田原先生の計6名で
参加してきました。昨年北京で開催された学会に引き続き、2年連続で中国の学会に参加させていただきました。昨年現地で培ったスピードラーニングを武器に、真夏の大阪をあとにしました。気温は高いが、湿気が少なく高層ビルの間を涼しい風が吹き抜けているに違いないとの思い込みも手伝って、心地よい気候と美食で夏バテを解消できると勘違いしていました。到着後まもなく汗が吹き出し、低温サウナを思わせる熱風が皮膚に突き刺さりましたが、何か心地よさを感じたのを覚えています。
みなさん香港といえば、100万ドルの夜景とグルメが頭に浮かぶと思いますが、実際街中に立つと高層ビルの数の多さに驚きました。築 50年は経過するであろうものもあれば、新築同然のものも混在していましたが、夜になれば誰も見分けがつきません。また現在も急ピッチで開発がすすんでいるようで、数年後には中国新幹線が香港まで乗り入れ、北京から10時間で到着できるようになります。また、カジノで有名なマカオにも高速道路が建設中で、香港国際空港から陸路でのアクセスが可能になります。
一方食事はかなり日本人向きで、脂っこくなく日本食が恋しくなりませんでした。連日夜には、山形市で御開業の音山和宣先生のユーモア溢れるお話と美食を堪能し、すぐに夏バテも吹っ飛びました。最も印象的な料理はシャコのニンニクチリ揚げでした。30センチは超えるであろう巨大シャコを、外はカリっと、中はふっくら揚げたものですがとにかく美味しく、かなり衝撃的でした。
肝心な学会についても少し述べさせていただきます。今回、急速進行性間質性肺炎と進行胃癌を合併した抗MDA 5抗体陽性の皮膚筋炎患者さんについてポスター発表を行いました。数年前に経験した症例で、集学的治療の甲斐もなく残念な結果に終わりました。無力さだけが残り、今でもどうすれば救命できたか答えが見つかりません。ただ現在までにそのような報告はなく、自分の中で結論を導きだそうと奮闘しております。これからも学会発表した内容はすべて論文として残す気持ちで日々研鑽します。
- 1:海からの香港の夜景
- 2:ビクトリアピークからの夜景、高層ビルが目と鼻の先
- 3:ガイドブックで探した半世紀続くワンタンの店が閉店しており、偶然向かいで営業していた大衆食堂に入店、料理も接客も最高(片山教授の右側が音山先生)
- 4:衝撃的な巨大シャコ、また会える日を楽しみにして
平成25(2013)年8月1日掲載
The 8th World Congress of Melanoma and EADO
WCM参加報告
2013年7月16日―21日 in Hamburg
今年度はじめての国際学会参加録
大阪大学医学部皮膚科学教室
助教 種村 篤
学会懇親会場にて日本の皮膚科先生方と:田中先生(左端)、片山教授(同2人目)、私(同5人目)林先生(右端)
メラノーマの国際学会に出席しました | |
猛暑ふるう大阪を離れ、片山教授・田中 文助教・林 美沙助教とともに、ドイツ ハンブルグで開催されたThe 8th World Congress of Melanoma and EADOに参加しました。フランクフルト経由で約1時間のフライトを要する北ドイツの大きな都市です。ハンブルグは緯度でほぼ樺太と同じであり、普段夏場でも最高20度前後と半袖では過ごせないようでしたが、滞在中ずっと天候に恵まれ参加者に晴れ男・晴れ女がいるもかもしれません。この参加レポは帰国の途に着く機内で書いているため、現在の日本の気候が??ですが、ハンブルグと異なりかなり暑く湿度の高い気候を覚悟しています。と言っても、日本食中心の生活に戻る事はやはり楽しみにしていますが。
さて、このたび発表および出席しました学会はメラノーマ一色に扱う国際学会であり、主催国のドイツ・アメリカはもちろん、ヨーロッパ各国・オーストラリア・ニュージーランドを中心にやはりメラノーマ(紫外線の影響を受けやすい)が多く発生する国々から参加します。アジア地域からの出席はかなり少ない印象を受けました。ほとんどの演題がメラノーマに特化した学会ですので、メラノーマに関する(臨床中心の)世界のtrendが一気に勉強できる学会で、私にとっては本当に収穫の多い学会でした。
ただ、日本からの参加先生方は限られており、ややaway感を覚えましたが、会場で存じ上げた先生とお会いすると少しホッとしました。今後皮膚悪性腫瘍を専門にされている先生方に加え、多くの国内皮膚科先生方とともに国際会場で議論出来ればと感じました。この度の学会内容で印象に残った事柄といえば、やはりこの数年のメラノーマ治療で一気に存在感を増している分子標的剤(BRAF阻害剤やその下流シグナルのMEK阻害剤など)と免疫調整剤(抗PD-1抗体や抗CTLA-4抗体)の二つの飛躍的普及が挙げられると思います。どうやらMEK阻害剤はBRAF阻害剤との併用が効果的であり、これからそのメカニズム解明が進んでいくようです。BRAF阻害剤や抗CTLA-4抗体の一部はすでに米国ではFDAで承認されており、1st line⇒2nd line⇒combination⇒さらにAdaptive Cell Transfer(ACT)を一部の施設で行うなど、今後治療のアルゴリズム確立に向けたエビデンスとなる臨床治験のデータが各国・各施設より発表され、正直驚きの連続でした。さらに、各施設の治験症例数が初期第2相で200症例近く、第3相になると比較試験の一方の群だけでも1,000症例以上という試験が目白押し状態でした。各試験の結果の詳細は割愛しますが、十分期待される効果が得られていることをうれしく思うと同時に、やはり日本とのドラッグラグ(他悪性腫瘍でも大きな問題なっていると思いますが)の解消が急がれることを痛感しました。国内では知り得ない世界のトレンド・急速に進む治療の動向に対して、常にアンテナを張って少しでも明日からの臨床に還元出来ると素晴らしいです。抗腫瘍免疫に関しては、ペプチド免疫の限界とACTの改良プロトコール作成、前記2種の治療薬との併用戦略に伴う免疫活性作用の発表が個人的に印象的でした。来年は旧ソ連の一つであるリトアニアでの開催のようで、ぜひ自分にとって毎年恒例?の夏のビッグイベントに出来ればと考えます。
私は、当科で進めていたメラノーマ患者さんに対する臨床研究の内容を報告し、田中先生は日本人メラノーマにおけるがん精巣抗原の詳細な発現解析結果を、林先生はメラノーマと鑑別が困難であったPigmented Epithelioid Melanocytomaの稀な一例を報告しました。少なからず海外の先生方にimpressiveな発表であったことを期待しています。
なお、ドイツと言えば、ビール・ソーセージ・ジャーマンポテト…がすぐに頭に浮かぶでしょう。もちろん、これらの食事+アルファを皆で楽しんだことは言うまでもありません。ハンブルグという名前の通りハンバーガー発祥の地であり、ドイツ第2の都市に滞在しながら、帰りのフライト直前にやっと辿り着けたマクドナルドのハンバーガーが最初で最後でした。パテはジューシーでパンは香ばしく美味で、やはりドイツのハンバーガー恐るべし。。
最後に、この学会を通して色々お世話になった先生方、改めて感謝申し上げます。
(左)発表ポスター前 (右上)自身のポスター前でプレゼン (右下)LUBECK大学に留学されている先生方と
平成25(2013)年7月25日掲載
第112回日本皮膚科学会総会
第112回日本皮膚科学会総会
会頭 川島 眞 東京女子医科大学教授
会場 パシフィコ横浜
会期 2013年6月14日~16日
テーマ -いま望まれる皮膚科心療-
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
日本皮膚科学会総会に参加しました。会場はパシフィコ横浜です。ここは私の大好きな場所の一つで、サイエンスの面白さを教えてくれた場所です。ここでは本当に多くの方と交流することができました。総会の魅力の一つで、私にとって大きな収穫となりした。
初日、私は汗に関する教育講演の機会をいただいていました。同セッションで愛知医大生理学名誉教授の菅屋先生の話を伺いました。皮膚科医でありながら汗と汗腺の基本性能に関してまだまだ知らないことの多いことに気づき、大変勉強になりました。皮膚の基本性能を知らないと病気の事は分からないですから・・反省。
シャリテ大学のMaurer先生からは 最新の蕁麻疹治療について伺いました。オマリズマブに関する話題は大変興味深かったのですが、寒冷蕁麻疹になぜ効くのか検討の余地はありそうです。
土肥記念国際交換講座はDubertert先生によるThe patient based medicine: A medical revolutionという前衛的なタイトルの講演でした。「アドヒアランスが悪い」などという言葉を耳にします。しかし治療へのアドヒアランスは担当医の技量次第であるという言葉から講演ははじまりました。これまで治療介入方法はevidence based medicineといった概念で構築されてきましたが、患者のQOLをさらに高めるためにはPatient based medicineという考えを取り入れる必要があるようです。つまり診察で医師からの質問で患者のニーズをどうつかむかが重要なのだそうで、実際に①問診②説明③ネゴシエーション④処方という診察ステップを具体的に乾癬の例をもとに示されました。説明では先生が実際に診療室で患者説明につかったとされる手描きのイラストを紹介されました。私も絵を描いて病気の説明をすることが多いのですが、先生のはまさにシンプルで分かりやすいものでした。病気を簡潔にイメージするのは病気をよく理解していないと難しいものです。私も精進していきたいと思いました。
私は昨年から学生講義で水疱症も担当することになっており、知識のアップデートのため積極的に水疱症のセッションに参加しています。これは以前から言われていることですが、現在の表皮細胞接着メカニズムに関する記述はin vitroとin vivoの現象が混在しています。さすがに講師の先生はそこを見事に明確に示され、疾患モデルとイメージングによる最近の研究の成果が水疱症の病態解明に大きく貢献しているのだと感銘を受けました。さらに現時点での検査方法によるBP180抗体陰性という結果にこれまで振り回されてきましたが、全長BP180抗体検査が日常診療に反映できる日は近そうですね。
学会最終日に私はランチョンセミナーの機会もいただいておりました。アトピー性皮膚炎に対する汗と温度の指導箋についてのセミナーでしたが800名もの方を前に話をさせていただくのは恐らく始めての体験でした。汗や温度に関する指導を日常診療で行うだけで改善する方もいらっしゃいますので、一つでも先生方の診療の参考になる情報が提供できていればと願う次第です。
最後に、とにかく本会には様々な心配りと興味深い企画がちりばめられていました。会頭の川島先生、事務局長の石黒先生、そして教室の皆様のご尽力に敬服するばかりです。
会員懇親会のあとは大阪大学玉井先生、弘前大学中野先生の皆様とご一緒させていただきました。先生方の大人な素養とその背後に広がる優しい横浜の夜景に心洗われる思いでした。横浜、ステキです。
平成25(2013)年6月24日掲載
写真で見るIIDとEdinburgh
IID写真集
大阪大学医学部皮膚科学教室
片山一朗
写真1
学会の合間の散策中、エジンバラ大学出身の有名な医学者像と遭遇した。
ジェームズ・ヤング・シンプソン(Sir James Young Simpson、1811年6月7日 – 1870年5月6日)はスコットランドの産科医である。クロロホルムによる麻酔の医学への応用を初めて行った。
写真2
寺尾先生のライバル、Andrezj Slominskiテネシー大学病理学教授
醸し出す雰囲気はプーチン大統領にそっくりでした。来年のJSIDに来てくれるように交渉する予定。
写真 3
エジンバラ大学Pollock Halls Campusで開かれたthe Pigment Cell Development Workshopに参加したおり、キャンパス内で見かけた養蜂場の看板。
ヨーロッパの看板はセンス溢れるデザインが多く、楽しめます。
写真 4
学会帰りにふと窓を見るとシマウマが見えました。デザイン会社?のDisplay.
写真 5
懇親会場、エジンバラ国立博物館でEnk 夫妻と記念写真。ドリーの展示されているブースも人だかりが凄かったです。
写真 6、7
コナンドイルは1859年にエジンバラで生まれ、エジンバラ大学医学部を卒業、その後、ポーツマスでの開業を経て、1891年にロンドンで眼科医、その後執筆に専念したそうである。たまたま通りかかったレンタカー屋の側に見慣れた像があり、そこがコナンドイルの生誕地で、直ぐ近くに、コナンドイル亭と言うパブがあった。残念ながら時間がなく、写真のみ。
写真 8
エジンバラ近くの古城(幽霊の出るお城?)でのスナップ写真。
イギリスには至る所に心霊スポットがあり、IIDでも多くの参加者が
幽霊と会うツアーに参加されたそうである。
第6回International Investigative Dermatology (IID)
会長:Alexander Enk 教授(ハイデルベルク大学)
会場:エジンバラ国際会議場
会期:2013年5月8-11日
平成25(2013)年6月12日掲載
IIDとDermatoendocrinology Meetingに参加して
IIDとDermatoendocrinology Meetingに参加して
大阪大学医学部皮膚科学教室
寺尾美香
2013年5月7日~12日にスコットランドのエジンバラで行われたInternational Investigative Dermatology Meeting (IID) に参加させていただきました。私は5月7日に行われた1st Satellite Meeting Dermatoendocrinologyで、コルチゾール再活性化酵素の発表をさせて頂きました。第一回目のためか、とても人が多くて(会場が狭すぎて)、他の先生方も書いておられるように会場は超満員でいたるところに立ち見、地べた座り見の人たちがいるなかでのマイクなしでの発表で、まるで学校の授業をしているような感じでした。このような専門分野に特化した会への参加は初めてだったのですが、同じ研究分野のために論文で名前を何度も目にし、勝手に知り合いのような気分になっていた先生に、実際にお会いすることができました。なかでも、この分野をリードされているDr. Slominskiに研究を褒めていただけたのが嬉しかったです。また、同じ酵素を研究しているグループが良い結果と論文を発表していることもわかり、私も早く今の仕事をまとめないといけないと焦りながら帰ってきて、1年以上温めていたデータを先日投稿しました。
IIDのMeetingでは修士の学生の加藤亜里沙さん、油谷美寿季さんの糖鎖と強皮症の仕事を代表して発表してきました。糖鎖と関係の深いGalectin3を研究されている先生とのDiscussionがとても勉強になりました。そのほかに、日本からの椛島先生、藤本先生の素晴らしい講演(笑いもしっかりとられていてすごいです!)やプレナリーセッション、特別講演などにも多く参加でき、異なる研究分野の発表も聞くことができ勉強になりました。
空き時間で街の観光とショッピングも楽しみました。残念ながら、エジンバラ城の中に入る時間はありませんでしたが、アーサー王の丘と呼ばれる丘(丘というより山)に登り、そこからのエジンバラの眺めは最高でした。また、学会の若手研究者のレセプションではスコッチダンスに参加し、汗だくになりながら楽しいひとときを過ごしました。
第6回International Investigative Dermatology (IID)
会長:Alexander Enk 教授(ハイデルベルク大学)
会場:エジンバラ国際会議場
会期:2013年5月8-11日
平成25(2013)年6月10日掲載
第6回IID「初めて海外での皮膚科学会に参加して」
初めて海外での皮膚科学会に参加して 〜ZebrafishとFish &Chips〜
大阪大学医学部皮膚科学教室
田中まり
エジンバラで行われたInternational Investigative Dermatology とPigment Cell Development Workshopに参加してまいりました。
IIDの前に、アメリカ留学中の壽先生と私は、7日から8日昼まで、エジンバラ大学Pollock Halls Campus 内のJohn McIntyre Conference Centre で開かれたthe Pigment Cell Development Workshopに参加しました。センターはIID会場とは離れていて、ホテルから公園を抜けて徒歩25分位の距離にあり、2日間歩きながら気持ちのよい眺めを楽しみました。(7日の寺尾先生のoral presentationを聞けなかったのが残念でした。)このワークショップは、殆どの発表がゼブラフィッシュを用いたメラノサイトの基礎研究で、参加者も基礎の先生方が多く、知らないことばかりで、(英語力の低さも相まって)内容を理解するのが大変でしたが、それでもMITFの温度変化での作用変化や、東京医科歯科大の西村栄美先生の講演など興味深かったです。
海外で開催される皮膚科の国際学会は初めてでしたが、バグパイプで先導された8日夕のオープニングセレモニーも、ホールの素晴らしさと相まってとても印象深かったです。Rising Stars Lecturesでの京都大学椛島先生の講演は、周りにいる外国の聴衆が一番身を乗り出して聴き、うなずき、笑い、大きな拍手をされていて、本当に魅了されるものでした。(同じ日本人として、ちょっと誇らしかったです。)
ポスター演題は1500以上あり、自分の興味ある分野を見るだけでも充実したものでした。討論も活発で、興味あるポスターの発表者に質問すると(拙い英語にもかかわらず)丁寧に教えていただき、勉強になりました。
私にとっては初めてのUK(スコットランドなので、Englandと言っては怒られます)で、古い町並みの落ち着き、どこも絵になる景色、Pub、Fish &Chips、おいしい紅茶も、とても心に残りました。
参加してあらためて、自分の英語力の低さと、また、発表している多くの研究者の日々の努力を実感しました。研究も英語も、カメの歩みでもいいので、私も頑張りたいと思います。
今回、白斑の臨床試験のポスター発表で、このような大きな国際学会に参加する機会をいただき、大きな経験になりました。臨床試験にご協力下さいました患者様に心から感謝申し上げます。
第6回International Investigative Dermatology (IID)
会長:Alexander Enk 教授(ハイデルベルク大学)
会場:エジンバラ国際会議場
会期:2013年5月8-11日
平成25(2013)年6月10日掲載
第6回International Investigative Dermatology
IID参加記
大阪大学医学部皮膚科学教室
楊 伶俐
2013年5月6日から13日まで、エジンバラにて開催されたInternational Investigative Dermatology2013学会に参加させていただきました。
参加者が非常に多く,オーラルセッションにほぼ満員でした、今回のIIDの発表は皮膚免疫学についての発表が多くありました。 私自身はペリオスチンを介したヒスタミンのリモデリング役割についてポスター発表をしました。また、自分が携わったことのないendocrine分野の発表を聞き、勉強することができました。寺尾先生がendocrineセッションで口頭発表を行っていました、寺尾先生の堂々したごオーラル発表を聞くことができ、大きな刺激となりました、このような場で将来、立派な発表をできるような結果を出したいと思いました、もっと実験に励むとともに、知識をつける必要があると感じました。
今回、世界の皮膚科研究の最前線を直に見ることができたのは大変良い勉強になりました。自分の知識の及ばない所が余りにも多く、今後も積極的に知見を広めていく必要性を感じました。
学会期間中は会場だけでなく、夕食も先生方とご一緒し、日頃ゆっくりできないようなお話を聞かせていただき、本当に楽しい時間を過ごすことができました。さらに、学会会場以外でも京都大学皮膚科の先生方と食事会があり、初めてお会いする先生方のお話しを夜遅くまでおききすることができました、特に中島沙恵子先生は仕事も子育ても頑張っている素敵な女医研究者である中島先生のお話しで、すごく刺激を受けました、私も自分の時間、家庭の時間、仕事の時間をコントロールして、効率よくできたらと思いました。
今回IIDに初めて参加しましたが、私にとってはとても新鮮で楽しい体験や出会いができ、また来年も参加したいという意欲が湧きました。
このような素晴らしい機会を与えてくださった片山教授、いつも丁寧にご指導してくださる室田先生をはじめ諸先生方に心から感謝いたします、本当にありがとうございました。
エジンバラ城内から見える、市街の風景
第6回International Investigative Dermatology (IID)
会長:Alexander Enk 教授(ハイデルベルク大学)
会場:エジンバラ国際会議場
会期:2013年5月8-11日
平成25(2013)年6月10日掲載
第6回International Investigative Dermatology
IID参加記
大阪大学医学部皮膚科学教室
松井 佐起
2013年5月6日から13日まで、スコットランドのエディンバラで行われたInternational Investigative Dermatologyに参加させていただきました。
到着してすぐ、アメリカから来られていた寿先生と合流しました。
今回はサテライトミーティングからの参加でしたが、サテライトは参加者がすくないことを想定されていたとのことで、比較的、小さな部屋でマイクなしのoral presentationでした。マイクがない分、会場のあちらこちらからどんどん活発な議論があがり、白熱していました。狭い部屋の中で、床や、プレゼンターの後ろに座る人、台の上に横ずわりする人など人があふれていました。
8日からはじまった学会ではposterの数の多さに圧倒されました。端から端まで歩くだけで疲れそうな広い会場に人があふれてabstractを片手に、お目当てのposterを探しまわりました。それぞれのPosterのまえで何人もの人が集まって熱い議論が交わされているのも刺激的でした。
Oral sessionではサテライトから一変、大きなホールで途切れない質疑が交わされ、難しい話が多かったですが、とても勉強になりました。
学会の間にはエディンバラ城や、アーサー王の玉座と呼ばれる高い丘の上へ登って台風並みの風にふかれたり、エディンバラの町を堪能できました。
Social gatheringでは会頭のEnk先生や天谷先生がスコットランドの民族衣装であるキルト姿を披露され、参加者から写真攻撃にあっておられました。
今回は発汗をテーマにした演題でposter発表をさせていただきましたが、どの実験もいろんな方に教えていただき、協力していただいてはじめて結果を出せたんだなと、あらためて実感しました。片山先生、室田先生、細胞生物免疫学の石井先生、菊田先生をはじめとし、ご指導いただき、支えてくださった皆様にこの場をお借りしてお礼申し上げます。ありがとうございました。
第6回International Investigative Dermatology (IID)
会長:Alexander Enk 教授(ハイデルベルク大学)
会場:エジンバラ国際会議場
会期:2013年5月8-11日
平成25(2013)年6月4日掲載
第6回International Investigative Dermatology
IID参加記
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
エジンバラで行われたIIDにサテライトセッションのdermatoendocrinologyから参加した。同セッションでは寺尾美香先生が発表の機会を得ていた。Dermatoendocrinologyという概念の歴史は浅く、近年少しずつその重要性が認識されつつある。このような背景にあって寺尾先生がoral speakerに選出されたのは凄いことだ。さて、私は本セッションを楽しみに会場を訪れたわけだが、その参加者の多さに度肝を抜かれた。壁は一面立ち見客で覆われており、会場内の通路にもびっしりと聴講者が座っている。私はソーリー、ソーリー、髭ソーリー、などと言ったか言わないか、とにかく中へ進み、発表用プロジェクター後方のわずかなスペースに入り込んだ。学会を体育座りで聞いたのはこれが初めての経験だ。そのとき気づいたのだがChairmanの後方壁に棚があり、その上にきれいなブロンズ髪の女性が座っていた。聴講者の1人であろうその女性が、いったいどこの研究室から来た人なのか、気になってしかたがなかった。セッションはPaus先生の陽気なトークから始まった。続くSlominski先生の皮膚におけるステロイド合成の話から、私の研究しているコレステロールもかなりいい線に行っているのではないかと想像した。寺尾先生の11beta-HSD1に関するプレゼンテーションはすばらしかった。続くElias先生のグループの発表も同じ酵素の話だったが、寺尾先生の仕事がこの領域で先端を走っていることを明確にしたセッションだった。
痒みに関するセッションではノルウェーのKlas Kullander先生の話に興味をもった。VGLUT-2依存性の感覚神経が痒みを特異的に認識する事をマウスによって巧みに証明していたのだ。「痛み」と「痒み」が違う感覚だということはモルヒネの研究から明らかになりつつあるが、本研究は節後神経ですでにその伝達神経が異なることを示していた。
スキンバリアのセッションでは角質細胞間脂質のセラミドに関する演題がほとんどを占めた。セラミドの欠乏とフィラグリンとの関連についても示唆されていた。セラミドの重要性がさらに証明されたといえよう。今回、私はセラミドではなくコレステロールの機能に注目した研究結果を本学会でポスター報告した。何故コレステロールなのか、と問われれば、それは「Think Different」という私の研究ポリシーからであると答える。この仕事をSTAR WARSに例えるなら、ダース・ベイダーが実はすばらしいジェダイであることを証明する、という事になろうか。ある意味、自虐的回顧論はここまでにしておこう。
松井先生は汗腺のダイナミックな動態を観察した結果を報告した。この論文はつい数日前にJournal of Investigative Dermatologyにアクセプトされた。おめでとう!この汗腺の二光子顕微鏡による観察は決して容易ではなかった。試行錯誤の末に成し遂げた、正に松井先生の努力で得られた偉業だった。本演題はポスター採択だったが、貴重な汗腺の挙動映像を見ていただくためにタブレットPCを用意しておくべきだったと後悔している。
さて、エジンバラはステキな町だった。エジンバラ城から聖堂を見る方向にはたくさんの商店が建ち並び、「城下町」というにふさわしい光景だった。ルパンIII世カリオストロの城にでてきたカリオストロ城の城下町が思い浮かぶ。道端にはタータンの民族衣装をまとった大道芸人がバグパイプを演奏していた。それをご覧になった片山先生から突然私に「キルト」を着るように、という指示があった。指示は私にとって重要な意味をもつ。タータンショップに入り、キルトを手に取った。ズシン!私はその重さに驚いた。ラグビーをやめてかれこれ20年近くなる私には着用する体力的自身がなかった。「しかし、これは片山先生からの指示だぞ!」と自分と葛藤していたところに、キルトから顔を出した値札に目がいった。「£180」。私はおもむろにキルトをハンガーにかけると足早にその店を後にしたのだった。
写真:エジンバラ城の雨樋の装飾にはスコットランドの国花であるアザミが描かれている(写真向かって左)。これはアザミの棘がスコットランドに押し寄せたバイキングの行く手を阻んだことに由来するという。守り抜くことの大切さを教えられた。
第6回International Investigative Dermatology (IID)
会長:Alexander Enk 教授(ハイデルベルク大学)
会場:エジンバラ国際会議場
会期:2013年5月8-11日
平成25(2013)年6月4日掲載
第29回日本臨床皮膚科医会・臨床学術大会
第29回日本臨床皮膚科医会・臨床学術大会
会場:ウェスティンナゴヤキャッスル
会期:2013年4月6~7日
大阪大学医学部皮膚科学教室
室田浩之
4月6、7日、名古屋で開催された日臨皮学術大会に参加した。その前日と前々日に行われた大学の新入生検診での疲れからか、鼻孔周囲に単純ヘルペスが播種した恥ずかしい状態での参加となった。しかし、身につまされる発表の数々に疲れを忘れてしまった。
初日特別講演でノーベル物理学賞を受賞された益川敏英さんのお話をうかがった。「現代社会と科学」というテーマで科学の歩みを偉人達のエピソードを交えて紹介された。ファーブルとパスツールの話は昆虫博士であるファーブルはカイコの疫病の対処が分からないため感染症に詳しいパスツールに相談し、カイコのことなど見た事もないパスツールが疫病をおさめたというものだった。その他、人工衛星の表面の冷却に使われるヒートパイプの原理をソニーがトランジスタの冷却に応用し大成功を収めたエピソードも紹介された。専門性や興味のまったく異なる人たちの結びつきが科学の発展、経済の発展につながったというものだ。私も皮膚や医学とは異なる分野の方々と交流していきたいと考える。
翌日の浅井先生、江藤先生の「あえチョイシリーズ」は臨床皮膚科医会の醍醐味とも言える、日常診療で役に立つ「チョイ技」を実践的に紹介された。こういう内容は若い先生方にも是非聞いていただきたい内容だ。日常診療で役立つと言えば、ポスター金賞では東邦大学大橋病院からの簡易ギムザによる迅速なTzanckテストの判定に関するレシピと方法を紹介した演題が選ばれていた。小生も早速メモをとらせていただいた。
特別講演は「専門医制度の動向について」を拝聴した。皮膚科は基本領域に含まれることから、そのプロフェッショナルオートノミーが認められている。しかし、基本領域に新しく含まれる総合診療専門医の領域はすべての臓器の診療に当たることができるという。皮膚科医は標準的医療の質をより一層向上させていく必要があると思われた。平成28年開始とされる新しい専門医研修制度では医学部での教育と卒後教育をまとめて見直す必要もありそうで、教員としてその動向に注視する必要がありそうだ。
ランチョンセミナーではアトピー性皮膚炎のセッションで栗原先生の「湿疹学」を拝聴した。まず、アトピー性皮膚炎は医師の「治す」という信念が必要というメッセージには大変共感し、感激した。スキンケアは以前からPro&Conがあり、「皮膚に良いことをする」という介入的側面と、「皮膚によけいなことをしない」という離脱的側面、の相反する2つの概念がある。栗原先生は入浴の功罪についても触れられた。どちらを選択するかは診察によって主治医が決定するべきである。そこにプロフェッショナル性が発揮されるのだと、身の引き締まる思いだった。
学会最後の、石黒先生と秋山先生をオーガナイザーとしたアトピー性皮膚炎に関するシンポジウムにおいて、私は「汗は増悪因子か」という発表を行い総合討論に含めていただいた。石黒先生の自身のアトピーの経験をまとめられた「アトピー性皮膚炎の一生」、秋山先生のフィラグリン遺伝子診断とアトピー性皮膚炎の予防的介入の可能性に関する可能性、神戸先生は患者さんの治療への恐怖心がちょっとした周囲の意見によって生じてしまう現象を「An apple a day keeps the doctors away」と例えながら患者とのコミュニケーションについてご紹介され、いずれも身につまされることの多いお話であった。石黒先生は患者さんの背中に薬を塗ることで患者の状態がわかるという。私も時々外来で行うが、確かに浸潤の強さ、皮膚の熱、乾燥状態を手で感じることができる。こういうことは若い先生方にも伝えたい。何より、若い先生に是非参加していただきたい学会であった。
学会期間中は爆弾低気圧の到来ということで、雨風の強い悪天候であった。名古屋城のお堀は桜の花びらで覆われ、幻想的な光景を見せた。月並みであるが、「花に嵐」である。
ポスター会場ではお茶を一服いただける趣向であった。お茶菓子は学会のためだけに作られた、その名も「もち肌」であった。表面に「日臨皮」という焼き印の入った桜色の大変上品なお菓子であった。このステキなおもてなしには大変な御苦労があったものと推察され、会頭の田中隆義先生のご配慮に感服した。
平成25(2013)年4月7日掲載
第437回北陸地方会熊切正信先生退任記念学会
第437回日本皮膚科学会 北陸地方会
熊切正信先生退任記念学会
会場:福井商工会議所
会期:2013年2月24日
大阪大学医学部皮膚科学教室教授
片山 一朗
熊切正信福井大学皮膚科教授退任記念地方会に出席した。熊切先生は私の北大の先輩で、私は1996年の7月に長崎大学の皮膚科教授に就任したが、熊切先生は8月に福井医科大学の教授に就任され、皮膚科教授としては同期生にあたる。就任後は毎年同門会誌「越前だより」を送っていただき、先生の教室が発展していく様子や、色々な苦労話、先生御自身が撮影された福井の四季の写真を楽しませて頂いた。熊切先生は長年日本皮膚病理組織学会の理事長や日本皮膚科電顕研究会(現:日本皮膚かたち研究学会)の会長などの要職を務められ、多くの学会で皮膚病理に関するシンポジストやパネリストを務められ、親交のあった多くの先生が参加されていた。ただ恩師の三浦祐晶北大名誉教授やKen Hashimoto先生は体調をくずされ、欠席とのことで残念であった。学会は朝10時から開始されたが、思いの外福井の街は雪が少なく、2月としては暖かで、春も近いと感じられた。一般演題では腫瘍に関するものが多く、齋田俊明先生や大原国章先生、熊野公子先生などの厳しい質問が相次ぎ、午前中ですでに1時間の時間オーバーで事務局長の清原隆宏準教授がヤキモキされていた。私も「高齢者紅皮症の臨床的検討」という演題を発表させていただいた。また戸倉新樹教授が「IL22産生性CD8陽性Sezary症候群」、竹原和彦教授が「単純血管腫様の外観を呈し、シクロスポリン内服が有効であった小児剣創状強皮症」の興味ある症例を筆頭で発表されていた。
熊切教授の記念講演は「電顕で垣間見た皮膚病変」というタイトルで、先生の北大時代、米国留学中、福井医大に亘る長年の研究成果や貴重な症例、研究仲間との交流、趣味の鉄道写真などを織り交ぜながらお話しされた。特に電顕で皮膚病理を見るとHE染色では見えない所見が見えることや細胞間、周辺組織との相互作用などが驚くほど鮮明に観察でき、様々な疾患の発症メカニズムが理解できることを静かな口調でお話しされた。今の皮膚病理学はAckermanの病理学に代表されるようにアルゴリズム診断が主流であるが、臨床所見、HE所見に加え、電顕的な見方を加えることで、皮膚という臓器で繰り広げられる豊穣な生命現象が理解できることをあらためて認識させられた講演であった。
先生が執筆された「皮膚病理を読む。皮膚病理がみえてくる」は5,000部を越すベストセラーとのことで、わたしも湿疹病変の病理を担当させていただいたが、どのHE組織写真にも先生の簡潔なイラストが加えられ、「熊切病理学」とも言えるワールドが勉強できるだけでなく、皮膚疾患の成り立ちの根本的な理解ができる素晴らしい教本であり、若い先生にも是非一読していただきたい。
退官後は長らくの単身生活に別れを告げ、ご家族の待たれる札幌に戻られ、皮膚科医としての仕事を継続しながら趣味や社会貢献にも時間をさきたいとのことであった。最後になるが福井医大〜福井大学を通じて福井大学医学部の発展に大きな貢献をされた熊切先生の今後のご健康とご活躍を祈ります。
長い間ご苦労さまでした。
平成25(2013)年2月26日掲載
第31回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
第31回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
会長:原田 保 川崎医大耳鼻咽喉科教授
会場:倉敷市芸文館
会期:2013年2月7−9日
片山一朗教授
倉敷で開催された耳鼻科領域のアレルギー関連学会に招待され、教育講演で「花粉症と皮膚のアレルギー」をテーマにお話しさせていただいた。現在厚労省の研究班で思春期のアレルギー疾患患者の動態研究と口腔アレルギー症候群の疫学と病態研究を行っている関係で、耳鼻科の先生の知己も増え、花粉症の勉強をする機会が増えた。講演後、兵庫医大免疫学教室の善本教授から経皮的にスギ花粉に感作された場合、スギ花粉皮膚炎としての症状を呈しやすいのかとの質問を受けた。私もそのような仮説を以前から考えており、表皮ケラチノサイトが産生するTSLPの関与やスギ花粉抗原がInflammasomeを刺激することで遅発性の皮膚反応を惹起する可能性をお答えした。アトピー性皮膚炎と食物抗原の経皮的感作や茶の雫事件など皮膚と粘膜で抗原提示細胞などが異なる可能性も指摘されており、今後の重要な研究テーマかと考える。また、現在議論を呼んでいるIgG4関連疾患(systemic IgG4-related plasmacytic syndrome(SIPS)とMikulicz病に関してもホットな討論があった。南東北病院の今野先生は「木村氏病や耳下腺腫瘍でもIgG4 陽性細胞の浸潤が見れることより、その独立性に問題があることや、現代人がIgE同様IgG4抗体を非特異的に産生しやすい環境にいるのでは」というコメントをされていた、ただ本症でみられる後腹膜線維症など組織線維化がシェーグレン症候群を含め過去Mikulicz症候群の鑑別疾患では見られないことより、今後の病態解明の手掛かりになるかと考える。
引用:
(IgG4関連疾患でみられる臓器病変。札幌医大ホームページより引用)
札幌医科大学内科学第一講座 山本元久先生
「ミクリッツ病と全身性IgG4関連疾患(SIPS)」
出典:
http://web.sapmed.ac.jp/im1/SubPage/04_Kenkyu/Kaisetsu03.html
またいつもの皮膚科の学会と異なり、殆どが男性医師で、発表の場でも若い先生が高名な偉い先生からの厳しい質問に対して立ち往生する姿も目に付いたが、指導医に頼らず、討論する姿は若々しい新鮮さを感じた。いわゆる体育会系の学会で、先輩が後輩を厳しく、かつ暖かい目で育てようとする姿勢が強く感じられた。最近の多くの皮膚科の学会では、討論も少なく、たまに名誉教授の先生が反論のできないような厳しい質問をされるとショックで立ち直れなかったり、共同演者の方を向いたまま、一言も言葉を発しない若い医師もよく目にするが、学会での真剣勝負こそ学問の進歩や後継者の育成に欠かせないし、そのような場に積極的に参加することでプロとしての責任感や職業意識も生まれてくると考える。 アカデミズムとは逆に昨今スポーツ界では、指導者によるパワーハラスメントが大きな問題となっており、大きな議論が起こっている。私も昔運動部にいたが、特にパワハラなど感じたことがなかったし、研修医の頃の学会発表でも徹底的に論破された記憶があるが、その多くは今になって大きな財産になっている。時代は移り、回診などで、手抜きのプレゼンなどをされた場合や不都合な事実を隠していたりされると、時に怒ることがあるが、驚いたことに翌日退局届けを出す研修医も経験したし、他大学の教授からも同じような話を聞く。これはすべての事象にあてはまるかと思うが多様な背景のある事件を一律の同じ価値基準、判断で対処する風潮が日本、そして世界を支配する現状のせいかとも考えるし、匿名の無責任なネットへの書き込みの影響が大きいと思う。実際英国映画などでも授業を妨害するような学生に対しては厳しい体罰が下される場面をよく目にする。話は大きく脱線してしまったが、指導する側の熱意と受ける側の思いがすれ違うことは身近でもよく経験する。もって自戒としたい。 最後になるが今回の学会で感じた点として、アレルギー学会で聞く耳鼻科の演題とは異なり、耳鼻科の先生方も我々同様、臨床や研究手法に他領域の最新の知見を取り入れ、その診療の幅を広げられていること、退官された高名な先生でも、現役時代の研究を継続され、筆頭で堂々と素晴らしい講演をされていたことであった。たまにまったく関係のない学会に参加することも有益であることを再確認した。原田教授には心よりお礼を申し上げたい。
平成25(2013)年2月19日掲載
第36回皮膚脈管膠原病研究会
第36回皮膚脈管膠原病研究会(大阪)
初期研修医
山賀 康右
2013年1月25-26日
千里ライフサイエンスセンター
会頭:片山一朗(大阪大)
第36回皮膚脈管膠原病研究会で発表させて頂きました。学会発表デビュー戦でした!
初めてなので、先輩方のようにわかりやすい発表が出来ないんじゃないか、噛んでしまわないか、それどころか頭が真っ白になって言葉に詰まらないか、、、不安でいっぱいでした。
さらに、この研究会は発表後の討論が活発だと伺っていたのでさらにプレッシャーを感じておりました。
発表当日は「やるべきことをやるだけ!」と割り切って檀上に上がり、なんとか発表を終えました。質疑応答では今回私達が経験した症例と似た症例を御経験された先生の御意見、病態についての教育的なものなど多くの御意見を頂き、大変勉強になりました。
その後の懇親会では他大学の先生方とお話させて頂き、楽しい時間となりました。
研究会では様々な発表、その後の活発な討論を聞け、皮膚科初心者で右も左も分からない私ですが、将来は私も自分なりの意見を持って積極的に討論に参加出来るよう日々精進して行かなくてはと痛感致しました。
今回、皮膚筋炎と卵巣癌(漿液性腺癌)の関係について発表させて頂きました。漿液性腺癌は症状が出現しにくく、診断時にはStageⅢ、Ⅳとなっていることが多いです。
後日産婦人科の友人に意見を伺ったところ、「皮膚筋炎を発症した方が、発見が早まって予後が良いのかな」と言っておりました。僕には全くなかった発想だったので、他科の先生の意見は貴重なものだなと感じました。
今回発表する機会を与えてくださり、発表に向けて御忙しい中御指導してくださった山岡先生と片山先生に深謝致します。
平成25(2013)年2月18日掲載
第36回皮膚脈管膠原病研究会
第36回皮膚脈管膠原病研究会(大阪)
2013年1月25-26日
千里ライフサイエンスセンター
会頭:片山一朗(大阪大)
花房崇明
当教室が主宰する第36回皮膚脈管膠原病研究会で発表して参りました。この研究会は他の先生方も記載されているように、毎回非常に討論の活発な会で、そのため進行が遅れるのが当たり前という、他の研究会や学会に比べて異質で面白い研究会です。頭上で行われている活発な討論に加われるほどの知識も勇気もまだまだ有していない私ですが、今回の研究会も膠原病の患者さんを診療する上でのスキルアップはもちろん、これからの研究のインスピレーションが湧いてくる、そんな有意義な研究会でした。また私の東京勤務時の恩師の沢田先生にも4年ぶりにお会いすることができ嬉しかったです。
私自身の演題も、通常の学会発表の話し方とは変えて、討論が活発になるように工夫した話し方で発表してみました。そのおかげもあってか、数名の先生方から発表した演題の病態解明の手がかりになるような貴重なご意見を頂けました。頂いたご意見を参考にして、患者さんを担当してくれていた研修医の山賀先生と一緒に英文論文にします。(と、ここに書いて自分自身と山賀先生にプレッシャーをかけてみます。)
平成25(2013)年2月7日掲載
第36回皮膚脈管膠原病研究会
第36回皮膚脈管膠原病研究会(大阪)
2013年1月25日~26日
千里ライフサイエンスセンター
会頭:片山一朗(大阪大)
越智沙織(旧姓:糸井沙織)
平成25年1月25・26日の2日間、阪大主催で皮膚脈管膠原病研究会が行われた。この研究会は私が経験した数ある学会の中でも討論が白熱する、熱い(!!)先生方が集まる会である。去年私はこの研究会にデビューしたが、他の演者の先生方が発表後の質疑応答で打ちのめされている姿を見る度に、どんどん緊張が強くなり、本番では自分を見失ってしまった記憶がある。
今回は2回目なので、ありとあらゆる質問を想定し臨んだ。やはり、発表時は緊張したが、なんとか質問に対して答えることができた。
この研究会で、血管炎の疾患名が血管の太さにちなんで変わると聞いた。病態をしっかり理解していないと混乱しそうだ。
学会発表は何度やっても慣れないが、そのために患者さんの病歴・検査結果・治療を見直し、たくさんの文献を調べ、その疾患・病態を深く掘り下げるという事は自分を成長させてくれると思う。発表時は、緊張しながらも、質疑応答でいろんな質問・アドバイスを頂き、反省点を見直し、同様の症例に当たった時に反映する。たいてい、私は学会発表しを終えた時点で満足してしまう終わりそうになるが、きちんと論文化する事が演者の務めでだろう。私はたくさんの不良債権を抱えているので、少しずつ返済していきたい。
平成25(2013)年1月29日掲載
第37回日本研究皮膚科学会(JSID)
第37回日本研究皮膚科学会(JSID)沖縄にて
2012年12月7-9日(沖縄)
越智沙織(旧姓:糸井沙織)
2012年12月7-9日にかけて日本研究皮膚科学会が沖縄で開催された。
私は大学院2年目であり、今までの実験結果を発表することになった。
時間をかけて実験をしているような気になっていたが、positive dataは思いの外少なく,まだまだ大学院生活の道のりは長いな、と痛感した。
研究の発表は今回が初めてであるうえに英語の口答かつポスターでの発表、さらに私自身の結婚式の2週間後という状況で本当にやりきれるか不安だった。実際は指導医の寺尾先生(抄録には間違えてTeraoをTaraoと書いてしまった・・・本当にすいません)、隣の席の田中まり先生がスライドや英語の発音などを丁寧に教えてくださり、発表できるところまで到達させて頂いた。
沖縄は年中暖かく、地元の人は冬でもヒーターなどは使わないと聞いていたが、学会中はとても寒かった。宿泊したホテルもなぜか冷房しか設置しておらず、体が冷えすぎて寝られず、思わずホテルのフロントに「ストーブを貸してください。」と言ってしまったほどであった。結局、ベルボーイさんが申し訳なさそうに毛布を2枚運んでくれ、かさばる布団と毛布に押しつぶされそうになりながらもぐっすり眠れた。
学会は発表、質疑応答全てが英語なので、スライドの図を見ながら、単語を繋げて、理解しようと努力はした。やはり、他の先生のプレゼンテーションの仕方、スライドの作り方は勉強になった。特に、JSID award授賞式のスピーチはとても面白く、その方々のされてきた研究内容もわかりやすかった。
空いた時間で、寺尾先生、加藤さんと首里城見学、買い物、マッサージに行った。楽しいひとときで身も心もリフレッシュできた。
今回の学会で私の実験魂も刺激を受けた。もっと論文を読んで勉強すること、in vitroの実験もさらにすすめて論文にする、そしてノックアウトマウスの実験もどんどんやって新しい結果を見いだすこと、など心に誓った。再来年は阪大主催なので、今回より成長した形で発表したいと思う。
写真は沖縄で見つけた「なんくるないさ- シーサー」。「なんくるないさー」とは沖縄弁で「何とかなる」という意味でよく使われるが「挫けずに正しい道を歩むべく努力すれば、いつか良い日が来る」という意味もあるそうだ。現在、このシーサーは実験机の上から、私を見守ってくれている。
平成24(2013)年1月29日掲載
第37回日本研究皮膚科学会(JSID)
日本研究皮膚科学会 参加レポート
2012年12月7-9日(沖縄)
修士2年 加藤亜里沙
2年前より皮膚科で研究させて頂いております大学院修士2年の加藤亜里沙です。12月7日~9日にかけて沖縄県で開催された日本研究皮膚科学会(JSID)に参加させて頂きました。
今回の学会で初めての口頭発表を控える私は、飛行機では余裕も落ち着きもなく、先生方の隣で発表内容をブツブツとつぶやいていたのですが、飛行機より眺める沖縄の美しい海、空港に降り立った際の温暖な気候とゆっくりとした時間の流れにリラックスすることが出来ました。
2年間の研究生活において、ESDRに二度、また昨年のJSIDにもポスター発表で参加させて頂きました。今回のJSIDではこれまでの集大成にふさわしくも、初めて口頭発表をする機会を頂き、師匠である寺尾先生と大喜びしたのもつかの間、発表の準備にヘトヘトになってしまいました。英語のスライドやスピーチの作成が非常に勉強になったことは言うまでもありませんが、準備をする中で改めて多くの論文を読み直し、自身の研究内容を見返す機会ともなり、今思い返せば充実した日々であったと感じています。
最後になりましたが、この様な素晴らしい機会を与えて下さった片山先生、寺尾先生をはじめ大勢の先生方、本当にありがとうございました。大学院卒業後も来年春より企業の研究者として働きますので、またいつかJSIDで発表出来る日を夢見て、これからも研究を頑張っていこうと思います。
平成24(2013)年1月8日掲載
第37回日本研究皮膚科学会(JSID)
第37回日本研究皮膚科学会(JSID) 沖縄にて
2012年12月7-9日(沖縄)
花房崇明
2012年に沖縄を訪れるのは2回目でした。1回目は「きさらぎ塾」。きさらぎ塾というのは、その名の通り、2月に日本研究皮膚科学会が沖縄で催す皮膚科学研究者養成のための若手皮膚科医向けの合宿型のセミナーです。(http://www.jsid.org/kisaragi/index.html)
さて、今回のJSIDは自分の発表はなく、向学のために参加しました。JSIDの発表は数年前から完全に英語化されています。大学院生時の一昨年はPlenary、昨年はConcurrentで口頭発表のチャンスを頂き嬉しかった反面、準備のストレスで持病のアトピーが悪化したり、お腹が痛くなったり大変だったのを思い出しました。今年のJSID awardを受賞された神戸先生の研究内容のご講演は迫力があり、椛島先生、久保先生のイメージングのスライドはやはり美しく華がありました。いつか自分も、と思わされました。
初日の夜には片山一朗先生、2013年国際研究皮膚科学会会頭のAlexander H. Enk先生たちと沖縄の美味しい郷土料理のお店で舌鼓を打ち楽しい時間を過ごしました。ただ、最後に横のグループの一人に私の一張羅の革靴を間違って履いて帰られ、翌日の学会はスーツにスリッパという奇妙な格好で参加せざるを得ないという異常事態になってしまい、残念ながらその後はあまり学会の内容に集中できませんでした。
今回のJSIDでは、知識のupdateだけでなく、きさらぎ塾の同窓生と再会し、お互いの近況や情報を交換し合うなど有意義な時間を持つこともできました。しかし、人の研究の話を聞くだけでは寂しく緊張感に欠けるのも事実でした。やはりJSIDには、自分がPresenterとして参加しようと決意して、暖かい沖縄では気にならなかったスリッパからはみ出す足先の冷えを気にしながら、大阪モノレールに揺られて伊丹空港を後にしました。(ちなみに靴は翌週にお詫びの泡盛と共に大阪に送られてきました。)
平成24(2013)年1月4日掲載
第37回日本研究皮膚科学会(JSID)
「テビチを手に考えた私の微小環境」
第37回日本研究皮膚科学会総会 沖縄にて 室田浩之
会長:戸倉新樹浜松医科大学皮膚科教授
会場:那覇 ロワジールホテル、パシフィックホテル
会期:2012年12月7−9日
室田浩之
「事実は小説よりも奇なり」「百聞は一見にしかず」
これらは私が今回の研究皮膚科学会に参加して感じた印象を象徴的に現すことわざである。これまで生体内における細胞のダイナミックな動態は、見たい細胞が特異的に持つ分子を標的とし、各臓器における分布を核酸あるいは蛋白レベルで確認することで「想像」されてきた。近年の二光子顕微鏡を用いたイメージング解析は、生体内で実際に生じている細胞の動きを映像として示すことができる。PlenaryやOral sessionでは二光子顕微鏡を用いた最近の話題が多く取り上げられ、皮膚において細胞が繰り広げるドラマを映画感覚で見入った。二光子顕微鏡は皮膚のアクセシビリティという利点をうまく利用した観察方法であるが、「どう使うか」にサイエンスのエッセンスが要求されているように思う。選出された演題はいずれもすばらしい視線と発想によるもので大変勉強になった上に、現在私達が行っている研究において大変身につまされるものであった。研究はノンフィクションであるが、発表を身につまされている自分に気づいたからであろう、私の大好きな映画、山田洋次監督の「虹をつかむ男」で西田敏行演じるさびれた映画館を切り盛りする主人公・活男の発する「身につまされる映画っていうのがいい映画なんだよ」という台詞が思い起こされた。現在イメージングを利用した研究をしている松井先生の仕事にもこれらの経験と感動を反映させたいと思う。松井先生のデータはみんなの心を震わせるはずだ。
本会では、私どもと研究してきた大学院生、楊伶俐先生がJSIDのDiploma of Dermatological Scientistを受賞した。楊先生は本当によく頑張った。授賞式ではこれまでの彼女の努力が思い出され感動した。おめでとう。
私達の研究室で寺尾先生は皮膚科学に新しい風とアイデアを吹き込み続ける。今回の寺尾先生の2つのテーマ、糸井先生発表の11betaHSD-1と炎症、加藤さん(修士)発表のGnT-Vと強皮症に関する話題がいずれもOral sessionで発表に選ばれた。糸井先生は前日の飲み会をものともしない堂々とした発表であった(プレゼンの際、レーザーポインターは大幅に揺れていたが・・)。In vitroにおいて表皮細胞が炎症や紫外線などのストレスにさらされた際に生じる11betaHSD-1の発現と活性型コルチゾールの産生パターンは私にとって意外な結果であった点に驚かされた。加藤さんも見やすいスライドと分かりやすい英語を駆使し、大きな会場で発表した。GnT-Vの糖鎖修飾がM2マクロファージ分化に影響を与えることを強皮症の臨床所見から見出し、in vivo~vitroまで一連の結果として報告した。M2マクロファージへの影響を見抜いた着眼点に脱帽する。
私の「温もると痒い」というテーマに関する研究結果が光栄なことにPlenary session発表に選出された。この研究は2006年にスタートした。当時、痒みに関する研究はしていなかった小生に片山教授から「痒みに関して何か研究をしてみないか」と指示いただいた事に端を発する。何を研究するかと悩んだ後、日常診療において常々疑問に感じていた「温もると痒い」メカニズムを解明しようと考えた。そこで引っ張り出してきたのが、2003年に行っていたmacro gene arrayの結果だった。アイソトープP33でラベルしたmRNAを高々500種類くらいの遺伝子断片が乗ったメンブレンにハイブリさせる。Northern Blotの逆バージョンだ。片山教授が「10年かかった」とおっしゃっておられるのはこの実験から、ということであろう。確かに、かつて一部のデータを論文にしたあと4年間眠っていたデータだ。その中で神経栄養因子アーテミンがサブスタンスPによって線維芽細胞から誘導されている事に眼を付けた。当時、修士の学生だった泉さんと調べ始めたところアーテミンの興味深い機能がわかってきた。泉さんは私達と仕事をする中で医師を志したいと考えるようになり、努力の末、翌年にはH大学医学部への編入試験に合格した。私は優秀な仲間を失ったが、気分は感慨無量であった。その後も細々ではあるが臨床業務のかたわら教室の仲間の助けを借りて実験を続け、実験開始から約6年でpublishさせることができた。助けてくれた仲間にこの場を借りて御礼申し上げたい。ありがとう。そして、みなさん、眠っているデータはありませんか?
最近、いろいろなご縁があり、アーテミンに関する研究をこれまで思いつかなかったような新しいイメージング戦略を用いて花房先生、山賀先生と開始した。実験は全く初めてという研修医の山賀先生に手技やマウスのハンドリングを教えながら、失敗や成功に一喜一憂する日々を送っている。時代は回り、受け継がれることに対する期待感が私を突き動かしている。
学会最終日の夜中、私が大学院生時代に共に研究に励んだ琉球大学の山本先生の自宅にお邪魔し、テビチの入った沖縄おでんと彼のお気に入りのウヰスキーを楽しみながら学生時代や研究、臨床の話に花を咲かせた。私にとって、受け継がれることのない友人との会話もまた原動力となることに気づかされたひとときであった。
平成24(2012)年12月28日掲載
第37回日本研究皮膚科学会(JSID)
ぶき太の学会見聞録 JSID2012
The 37th Annual Meeting of the Japanese Society for Investigative Dermatology
Date; Dec./ 7-9/ 2012
President; Yoshiki Tokura
Venue; Naha, Okinawa
壽 順久
沖縄で開かれた第37回研究皮膚科学会に参加してきました。残念ながら今回は発表なしです。今回阪大からは、片山先生をはじめ、室田先生、小豆澤先生、寺尾先生、花房先生、糸井先生、楊さん、加藤さん、僕の計9人の参加で、室田先生はプレナリー、糸井先生、加藤さんはコンカレントでの発表でした。室田先生のアーテミンの仕事はスタートから10年がかりのお仕事でスライドの1つ1つに苦労があると思います。気合の入った口演をされていました。糸井先生と加藤さんも、Discussionで少し躓きましたが、2人とも卒なく英語発表をこなしていました。楊さんは、Periostinと強皮症の論文がPLos Oneに掲載され、その表彰を受けていました。素晴らしいことです。数年前に研皮は英語発表に変わりましたが、今回聞いていて感じたのはみんな非常に英語がうまくなっていることです。公用語が英語に変わったときは、正直ブーブー言っていたのですが、今は非常によい効果が出ているのだと思います。僕の英語はまだ結構悲惨なので、なんとかついていけるように頑張りたいと思います。
学会の内容ですが、今回はかなり免疫に寄った学会だったような気がします。Room Aは最初から最後までずっと免疫関連で、僕は研究内容的にずっとRoom Cにこもっていました。また癌関連は大会初日1番目と最終日JSID-Asia-Oceania Forumに振り分けられていたため、旅程の都合上ほとんど聞くことができなかったのが、僕にとっては非常に残念でした。それでもPigment cellのセッションでは、産業医大の日野先生のMelanomaとCCR5の話やエジプトのSherif先生のVitiligoでのSpindle shaped melanocyteの話は大変興味深く聞かせていただきました。免疫では、これまでにも何回か聞かせてもらっているのですが、やはり京大の夏秋先生のイメージングや中島先生のIL-17Aの話が面白く勉強になりました。結局、自分のやっていることやろうとしていることにリンクすることが面白いんです。ランチョンセミナーでしたが、慶応の久保先生、京大の椛島先生のイメージングの話は非常に面白かったです。僕はまだやったことがありませんが、今後留学先でイメージングの研究をするようなので、大変勉強になりました。
2日とも夜は飲みました。ある意味一番の目的です。初日の夜はSocial Gatheringのあと沖縄料理屋のわらじ屋というところに阪大のメンバーとESDR presidentのEnk先生、EgyptのSherif先生を交えて出陣しました。僕は緊張してあまり話せませんでしたが、Enk先生もメラノーマを研究している関係で、少しだけ研究の話をさせていただきました。Sherif先生は以前東京医科歯科大学皮膚科に留学されていたことがあり、かなり日本語が堪能で、いろいろと当時のお話をしてくださいました。わらじ屋の食事は非常においしく、僕も自宅でたまにゴーヤチャンプルーを作ることがあるのですが、やはり何かがちがうのでしょう、格の違いを見せつけられてしまいました。2日目はJSIDきさらぎ塾主催のGANBARE NIGHT!およびきさらぎ塾2次会に参加しました。主催の塾チューターの先生方がみなさんハッピをきて、非常にフランクな雰囲気で会場は大盛り上がりでした。外国人参加者を交えた2人羽織は非常に好評で、僕個人的には参加した黒人の方が非常にうらやましかったです。そのあと2次会できさらぎ塾の諸先生方とはしゃがせて頂き、阿部先生や久保先生、浅野先生をはじめとしたご高名な先生方を前に、僕のバカっぷりを存分にお伝えすることができました。きさらぎ塾は2月が本番です。さらなる高みを目指したいと思います。最後は、京大の先生たちと3次会に行きましたが、僕は途中でさくっと寝てしまい、いつも通り京大の先生方にご迷惑をおかけしました。
きさらぎ塾2次会 いろいろ粗相をしてしまいました。
今学会は、僕にしては珍しくあまり外をうろうろしないで、ひたすら学会場にこもってしまいました。肝心の癌関連の研究発表をあまり聞けなかったのが残念でしたが、それでもそれなりに楽しめた(勉強になった)学会でした。来年4月からしばらく日本を留守にします。おそらく来年は参加できないので、再来年阪大主催の会で海外参加者として2年間の研究結果を報告できたらうれしく思います。
平成24(2012)年12月20日掲載
第37回日本研究皮膚科学会(JSID)
第37回日本研究皮膚科学会(JSID)
会長:戸倉新樹浜松医科大学皮膚科教授
会場:那覇 ロワジールホテル、パシフィックホテル
会期:2012年12月7−9日
片山一朗
今年最後の学会となる研究皮膚科学会に参加した。以前は毎年12月に開催される免疫学会がその年を締めくくる学会であり、その年の仕事を振りかえり、次の研究のアイデアを考えるのが恒例になっていたが、ここ数年は研究皮膚科学会が免疫学会にかわるようになってきた。
今回は前JSID理事長の戸倉さん(研究皮膚科学会では「さん」付けで呼ぶことになっている)が会長を務められ、大会テーマは「 Geographic pivot and scientific nitch」とされていた、沖縄が東アジアの玄関であるのみでなく、世界の研究者のアクセスが良いことから選ばれた会場であり、テーマとのことであった。大会前日の評議員会に引き続き、会長招待会にお招きただいたが、驚いたことに出席者の1/3以上が海外からのゲストであった。これは来年英国エジンバラで開催されるIID(世界研究皮膚科学会)を見据え、ESDR(欧州研究皮膚科学会), SID(米国研究皮膚科学会)、KSID(韓国研究皮膚科学会)、TSID(台湾研究皮膚科学会)、ASDR(オーストラリア研究皮膚科学会)などの関係者をたくさん招待されていたのに加え、2009年の橋本さんが福岡で開催された学会から英語が公用語となり、アジアからの参加者が飛躍的に増えたことによるとのことであった。
翌日からの大会は戸倉さんの挨拶に始まり、Plenary session(全員が参加して討論に加わる演題で、毎年全演題の5%前後が選ばれる)が引き続き行われた。発表する本人にとっては大変な名誉であるが、関係者(直接指導者)もまた緊張の連続で発表が終わった後は皆さん、満足そうな顔であった。阪大皮膚科からは室田さんが2日目午後にアトピー性皮膚炎で暖まると皮膚が痒くなるメカニズムを発表された。サブスタンスPが線維芽細胞から誘導する新規の神経成長因子であるArtemin見つけ、論文化まで10年近くかかった研究で、講演を聞かれた先生からの評価も極めて高く、室田さんなりに一区切りついたのではと思うと同時にフィラグリン全盛時代の今、次に解決すべきアトピー性皮膚炎の問題もまた見えてきたのではと思った。教室からは糸井さんが皮膚ケラチノサイトでのステロイド代謝に関わる研究、加藤さんが糖鎖修飾酵素GnTVが強皮症の病態形成に関わり、特にM2マクロファージの誘導に必須であることを報告された。どちらの発表も立派に英語でこなされ、質問にもしっかり(?)答えられていた。ちなみに隣にいた、友人のIさんも教室の大学院生のPlenary発表の予行のために朝2時過ぎまでつきあっていたそうである。お二人の研究を指導された寺尾さんご苦労様でした。教室関連の演題以外ではJSID賞を受賞された千葉大の神戸さんのCAPSなどの自己炎症症候群に関する講演「The Genetic Fidelity of the Dead or Dying が印象に残った。一人の患者さんからの出会いが受賞に繋がる研究の始まりで、今世界の研究をリードするまでに精力的に取り組んでこられた研究成果のお話を伺い、そのブレない姿勢に心から敬意を表したい。JSIDの目標である国際化に加え、Physician Scientist育成の見本になるような研究で、若い先生も是非日頃の日常診療のアンテナを高く張り巡らせ、未知の病態を持つ、また治療法のない患者さんとの出会いを大切にして、生涯つきあえる研究テーマを見つけて頂きたいと願う。初日の懇親会は途中で抜け出し、ホテル近くの沖縄料理店に移動し、安くて美味しい沖縄料理を満喫した。東京医科歯科大にいた頃エジプトから留学してきたミニア大学のSherif Awadさん、和歌山のJSIDでも深夜までおつきあい頂いたハイデルベルク大のEnkさんも参加して楽しい時間を過ごすことができた。2日の夜はきさらぎ塾のチューターとその塾生を中心とした「Ganbare Night」が企画され、OBの先生や海外からの先生もたくさん出席され、藤本さんのDrink Hardの乾杯に引き続き、夜が更けるまで、皆さん会を楽しまれたようである(私はさすがに途中退席させて頂いた)。
来年のIIDに続いて、2014年は大阪大学が大会を引き受け、12月12−14日、大阪Expo Hankyu Hotelで開催予定である。大会テーマは「Global Tuning of Innovative Dermatology」として、研究の原点を討論できる学会にできればと考えている。
JSID Award lectureの受賞講演 千葉大 神戸直智さん
Diploma of the Dermatological Scientist受賞式 楊さん
平成24(2012)年12月10日掲載
第62回日本アレルギー学会秋季学術大会
第62回日本アレルギー学会秋季学術大会
会頭:東田有智 近畿大学教授
会場:大阪国際会議場
会期:2012年11月29日〜12月1日
片山一朗
大阪大学皮膚科が担当した2012年の春季大会に引き続き、大阪で秋季大会が開催された。前日の28日から理事会や委員会があり4日間のフル参加で少し疲れが残った学会でもあった。今回は呼吸器内科教授が会頭ということもあり皮膚科からの演題や食物アレルギー関連の演題がいつもより少なく、その分余裕をもって特別講演などを聞くことができた。参考になったのは近年増加しているアレルギー性気管支・肺アスペルギルス症(ABPA)の講演で、国立病院機構相模原臨床研修センターの谷口正美先生が最近の知見を紹介された。胸部X線像から結核と診断される例が多いことや、喀痰培養からアスペルギルスが培養しにくく、診断が難しいことに加え、有効な治療法が確立されていない現状を知ることができた。イトラコナゾールの有効例を示す論文が最近幾つか出ているとのことであるが、同時に抗IgE抗体療法が劇的に効く例が報告されているとのことで真菌症と真菌に対するアレルギーの両者をうまく治療する必要性があるようである。特別講演でも大阪大学の審良静男先生が自然免疫とM2マクロファージというタイトルで講演されたが、腸管、気道、皮膚、鼻粘膜など外界と対峙する臓器が主たる病変であるアレルギー疾患では感染症と病原微生物に対する免疫応答が複雑に絡み合って、病態が形成されていくことを先生の最新の研究結果からお話し頂いた。特にJMID3というあらたなTLR誘導性の分子がM2マクロファージの誘導に必要なこと、これらの分子やその下流にあるIRF4,Trib 1などの転写因子が欠損すると骨髄からのM2マクロアファージ誘導には影響を与えないが、脂肪組織での数的減少が見られ、メタボリック症候群の発症に関わることなどを精力的に語られた。我々の教室でも創傷治癒や組織線維化でM2マクロファージが関与している可能性や、メタボリック症候群の脂肪組織でその発現上昇が見られる11βHSD1がIL1やTNFなどの炎症性サイトカインの誘導作用を持つことを研究しており、審良先生のお話は大変参考になった。最終日には現在大きな問題となっている、アレルギー専門医制度を考える特別討論会が開かれ、アレルギー疾患を取り扱う臨床各科からの専門医教育の現状報告と今後の方向性が議論されたが、専門医認定機構の示す総合診療医の育成と総合アレルギー医がどのように棲み分けていくのか、専門医の地域的な偏在の解消など今後の大きな議論のポイントになるかと思われるが、現状では早くても2,020年頃を目指しての改革のようで先行きは不透明である。私自身は埼玉医大内科の永田真先生が示された大学でのアレルギーセンターは今後の良いモデルかと思うが、大学、診療形態の壁を越えた地域での横断的診療と専門医教育組織の構築が現実的な対応策かと考える。大阪大学皮膚科からは松井先生がOAS、田原先生が高齢者紅皮症、高橋先生が皮膚バリア機能の季節変動とアトピー性皮膚炎の発疹型に関する口演、室田先生がアトピー性皮膚炎と汗の話題でシンポジストとして講演された。いずれも活発な議論が行われた。
宮本昭正先生から感謝状を授与される審良静男教授
平成24(2012)年12月3日掲載
「2012年秋のこと」(東部支部&色素細胞学会)
学会参加レポ「2012年秋のこと」
高橋 彩
この前までお正月だ、今年は論文を量産するぞ!と思っていたのに、もう師走。今年もそろそろ終わりを迎えようとしています。振り返ればこの秋は‘学問の秋’をめいっぱい堪能したような気がします。 まず、9月29日、札幌で開催された東部支部学術集会にて、金田先生より頂いたKlippel Weber syndromeに関する演題で1例報告をしました。あの時は関西圏に台風が直撃し、観光もできず、学会もそこそこに、映画「ダイハード」さながらの気分を味わいながら、なんとか日曜の夜に自宅にたどり着いた思い出しか残っていません。(ちなみに帰路、飛行機は暴風のため関空上空で2回着陸を試みましたが着陸できず、再度新千歳に引き返し、3日間で大阪―北海道を2往復しました。)
そして11月24日には長浜で開催された‘色素細胞学会’にて、Langerhans cell histiocytosisに関する演題を、またその翌週の11月30日には大阪で開かれた‘日本アレルギー学会秋季大会’にて1年間蓄積したアトピー性皮膚炎患者に関する臨床データをまとめて発表させて頂きました。これら2つに関しては、ここ約2か月毎週土日に大学に通い、当直をされている室田先生や種村先生を捉まえてはしつこく質問し、発表スライドを見て頂き、技官の西田さんや延吉さんをも巻き込みながら何とか直前にスライドを完成させました。
しかし、当然「学問の道は1日にしてならず。」本番では難しい質問、盲点を突かれたような質問が飛んできて、充分答えることができませんでした。小学生の頃から夏休みの宿題は8月31日に泣きながらやるという習性は大人になっても治らないものですね・・・。そして学会というイベントでもない限り勉強しないという事を片山教授はよくご存知だなあ、と発表の機会を与えてくださるボスの有難みをあらためて感じました。
また、今回毎週土日に文句も言わず子供の面倒を見てくれた主人に感謝しています。医師と主婦の両立には、周りの多くの方々の支えあってこそ成り立つのだなと心から実感した秋でもありました。
平成24(2012)年12月3日掲載
JSPCR 第24回日本色素細胞学会学術大会
JSPCR2012(第24回日本色素細胞学会学術大会)
2012年11月11月24日―25日(滋賀県)
会場:長浜バイオ大学
会頭:山本博章教授
片山一朗
日本色素細胞学会は1987年に三嶋豊神戸大学名誉教授を理事長として設立された比較的新しい学会である。2009年から厚生労働省の白斑研究班の班長を務めさせて頂いた関係で、日本色素細胞学会にも参加するようになった。この学会は会員が200名くらいの比較的小規模な学会ではあるが、その分基礎、臨床のエキスパートの先生が参加される非常に密度の濃い学会でもある。また国際色素細胞学会(IFPCS)やアジア、欧州、米国色素細胞学会ともそれぞれ連携し、機関紙もPCMR (Pigment cell melanoma research)という皮膚科ではJIDについでIFの高い雑誌である。今回会頭を務められたのは山本博章:長浜バイオ大学教授で、もともと東北大学生命科学研究科から2010年に着任されたそうである。皮膚科医であれば皆さんご存じのメラニン生成の研究で世界的な業績を残された清寺眞先生は東北大学の皮膚科教授であり、初代教授の遠山郁三教授による遺伝性対側性色素異常症、太田正雄教授による太田母斑、伊藤實教授による伊藤母斑 、hypomelanosis Itoなど東北大学は色素細胞研究のメッカである。これらの偉大な先生以外にも名古屋大学名誉教授の冨田靖先生や、そのお弟子さんの鈴木民夫山形大教授、今回国際ワークショップでメラニン色素の細胞内輸送に関わるRab蛋白の新しい知見を発表された福田光則先生など錚々たる先生方がおられる。また今回国際色素細胞学会の理事会が同時に開催されたことで理事長のPicardo IRCCS教授(ローマ)をはじめ、Taieb教授(ボルドー)、Montoliu先生(マドリッド)、Larue先生(モントリオール)、Park教授(ソウル)、Parsad 先生(シャンデイガール)など多くの理事の先生が来日、講演された。私は前日の理事会と初日の講演発表のDutyがあったが、概ねすべての講演を拝聴することができた。福田先生のRabの話や東北大学皮膚科からのTLR2,3を介する、メラニン輸送の話は大変興味深く拝聴したが、残念ながら2日目は所用で欠席した。大阪大学からは種村篤先生、高橋彩先生がいづれも英語(一部日本語)で講演された。また壽、田中真理先生も出席され、質問をされていた。日本色素細胞学会理事長の國定隆弘先生が今回退任され、次期3年間は神戸大皮膚科の錦織千佳子教授が理事長を務められる。國定先生、錦織先生とも旧知の先生であるが、最近は特に基礎系のメラニン色素研究者が減少しており、是非臨床サイドからも会員、基礎研究者を増やして欲しいとのお話しがあった。来年の25回大会は大阪大学皮膚科が当番校で11月15(金 )〜16日(土)の2日間銀杏会館で種村先生を事務局長として開催させて頂く。参加費は可能な限り低く設定する予定で、多くの先生方の御來阪をお願いする次第である。
なお11月27日(火)17時から大阪大学医学部臨床研究棟3Fセミナー室で
Taieb先生の大学院セミナーを開催する予定で、興味ある先生は参加下さい。
山本先生作成の学会ポスターより
学会風景 WebmasterのMontoliu先生(マドリッド)先生の講演
次回 第25回日本色素細胞学会学術大会(大阪)
平成25年11月16日(土)~17日(日)
http://derma.med.osaka-u.ac.jp/jspcr25/
平成24(2012)年11月26日掲載
ぶきたの学会見聞録 JSPCR2012
JSPCR2012(第24回日本色素細胞学会学術大会)
2012年11月11月24日―25日(滋賀県)
会場:長浜バイオ大学
会頭:山本博章教授
壽 順久
ぶきたの学会見聞録
滋賀は長浜で開催された色素細胞学会に参加してきました。発表は、片山先生をはじめ、種村先生、高橋彩先生がされ、色素細胞の研究をしている僕と田中まり先生が公聴しに行かせていただきました。僕はメラノーマや尋常性白斑の研究をしているにも関わらず、まだ学会に入っておらず、今回の色素細胞学会が初参加でした。(怒られそうです。。。)
さて、自宅から電車に揺らされること約3時間で長浜(大学は田村駅下車)に到着、目の前に長浜バイオ大学があります。ここはBioscienceに特化した大学で、僕の中では大学というより一つの研究機関というイメージのあるすごいところです。がっつり田舎ですが、琵琶湖の真横にあり(徒歩2分)、ロケーションは非常にいい感じでした。
今大会は、海外からの参加者が多いこともあり、努力義務でしたが英語発表で行われました。多くの先生方が英語で発表され、うれしかったのが、発表後の討論が非常に活発だったことです。話を聞くとこの学会はいつもそうなのだそうです。発表の中にはいくつか僕がやっている実験系に近いものややりたいと思っている実験系があり、シャイな僕ですが周りの雰囲気にも乗せられて3回ほど質問させていただきました。2日通してメラノーマ細胞を含め、メラノサイトバイオロジーやメラニンのモルフォロジーなど非常に興味深く、大変勉強になりました。
初日夜は近くの長浜ロイヤルホテルで歓迎会が催され、ワインとビールと美味しい料理に囲まれながら、いろいろな先生とお話しさせていただきました。中部大学の芋川先生の下で研究されていた庭野先生に、メラノサイトとケラチノサイトの共培養に関する実験方法について僕と田中先生が1時間ほど教えていただき(長々と有難うございました)、NIHのVJ Hearing先生のところに留学されていた山形大学の川先生に向こうの暮らしについていろいろと教えていただきました。ほか、神戸大学の錦織教授やiPCC2011でご一緒させていただいた同じく山形大学の鈴木教授や阿部先生ともお話しさせていただき、非常に楽しい時間を過ごすことができました。2日目の昼食は、僕と種村先生と鈴木教授と会場近くの湖畔にある店で長浜?ラーメンを食べました。正直あまり期待していなかったのですが、想像をはるかに超えて美味しかったです。時間があれば替え玉したかったのですが、残念。
色素細胞学会は、確かに小規模の学会ですが、非常にアットホームで皆さん優しく、研究活発、議論活発な学会でした。そしてよかったのが、皮膚科だけではなく、色素細胞を愛する人たちの学会である、という印象を強く受けたことでした。来年は、片山教授、種村先生を中心として、大阪大学で色素細胞学会が開催されます。今回長浜バイオ大学の山本先生が大変な苦労をされて非常に素晴らしい学会を開催していただきました。(受付やクロークやPC係をして下さった長浜バイオ大学の先生方、お疲れ様でした、そして本当にありがとうございました。)この学会の素晴らしい雰囲気を受け継ぎ、負けず劣らずのハートフルな学会を開催したいと思います。(僕じゃないか、片山先生、種村先生頑張ってください)
平成25年11月16日(土)~17日(日)
第25回日本色素細胞学会学術大会(大阪)
http://derma.med.osaka-u.ac.jp/jspcr25/
平成24(2012)年11月26日掲載
JSPCR 第24回日本色素細胞学会学術大会
第24回日本色素細胞学会学術大会in長浜
2012年11月11月24日―25日(滋賀県)
種村 篤
11月24日―25日、第24回日本色素細胞学会学術大会in長浜に片山教授・田中真理先生・壽順久先生・高橋彩先生らとともに総勢5名で出席しました。大阪で生まれ育った私ですが、長浜で滞在したのは今回初めてでJR大阪駅から新快速で揺られること1時間半、何か小旅行?をした気分になりました。ただ前日の23日、同施設で色素斑班会議に出席後一旦帰宅したため、長浜を二往復することとなったにも関わらず、長浜市街地および長浜城見学が出来ず少し残念でした。
さて、この学会は色素細胞(+メラノーマ)に関わる基礎研究および臨床研究を中心とした内容を討論する学会で、臨床医と基礎研究者が完全融合した他の皮膚科関係学会にはあまりない特色が持ちます。その意味で、メラノソーム蛋白の三次元構造解析・電荷などの影響を報告する生化学・物理学分野からの発表もあり、私のような臨床医には非常に難解なものも含みます。ただ、学会メンバー数が200人弱という小規模なこともあり、参加される先生方は非常にフレンドリーであり、各分野のエキスパートの教授でも気さくにお話して頂ける点が醍醐味だと感じました。ある教授とお話した折、この学会を称して1)familiar2)encourage3)small group gatheringが特徴でしょうとお聞きし、正に色素細胞に関わる研究を真摯に考え楽しんでいる人たちの集まりと実感しました。実際懇親会では、来年の本学会会頭を当科片山教授がされることもあり、國貞会長、錦織次期会長、それに今回会頭として尽力された長浜バイオ大学 山本博章教授などから有意義なご意見を多数頂きました。この場を借りて御礼申し上げます。
また、今回は国際色素細胞学会理事カンファレンスも同時に行われたこともあり、フランス・イタリア・インドなど各国からの先生方も来られ活発なディスカッションが行われました。尋常性白斑とランゲルハンス細胞に関する私の発表でもいくつかご質問を頂き、大変良い経験になりました。私がこの学会に入会させて頂いた頃はお恥ずかしながら、「色が白いか黒いかはメラニンによって規定され、メラニンは色素細胞が作りメラノソームがその産生器官である。」程度の知識であったような気がします。しかし、この学会に参加するうち、その奥に潜む分子生物学的機序、遺伝学的背景、形態学的アプローチに加え、メラノーマに代表される腫瘍学や皮膚免疫学的考察など多岐にわたる知識を皆で共有し、色素細胞あるいはメラノーマの本質・関連疾患の病態に迫っているものであると痛感致しました。来年本学会を大阪大学皮膚科が主催することも見据えており、私にとって非常に気の引き締まる学会でもありました。
平成25年11月16日(土)~17日(日)
第25回日本色素細胞学会学術大会(大阪)
http://derma.med.osaka-u.ac.jp/jspcr25/
平成24(2012)年11月25日掲載
第10回日独皮膚科学会
10th Meeting of the German-Japanese Society of Dermatology (GJSD)
2012年11月14-17日(徳島)
西岡めぐみ
この度、10th Meeting of the German-Japanese Society of Dermatology (GJSD)に参加しました。このミーティングに参加して、ドイツと日本という地球の反対に位置するほど遠い国の先生方が、非常に親睦の深い関係を築かれていているのだということを肌で感じることができました。一つ一つの演題に対して、日本・ドイツ双方の先生方から活発に質問や意見が出され、多方面に渡る議論が展開される様に圧倒されました。普段、異なる患者背景・文化・制度の中で診療を行っている視点から、まったく垣根を感じさせない関係に基づいて意見を交わす時、一つの国の中だけでは得られない議論の深まりが生まれるのだと知り、自分もこのような国際的な交流にできるだけ活発に参加していこうと思いました。
私はこの学会に、cancer testis antigen(CT antigen)という癌抗原の、日本人の皮膚癌におけるデータをポスターで発表させていただきました。この抗原は癌免疫療法のターゲットとして注目されており、実際にCT antigenを標的とした臨床試験も大阪大学を含む各国の医療機関で進行中です。しかし、CT antigenに関する研究は現在まで主に欧米人についてしか行われておらず、今回の私たちの検討が日本人における初の研究となります。ポスターセッションはあまり議論が交わされず、ドイツにおける癌免疫療法やCT抗原に関する情報を得ることができなかったのは非常に残念ですが、この学会に参加することで、やはり自分は「日本の」皮膚科医であることも強く実感し、欧米のデータの使い回しでは無く、日本の遺伝的背景や環境によって現れる独自のデータに基づいた日本人に最適な医療を提供するために尽力すべきであると感じました。今はまだ有効な治療法に乏しい進行期メラノーマ等の皮膚癌患者さん達の新たな希望に繋がるよう、日々努力したいと思います。
平成24(2012)年11月18日掲載
第10回日独皮膚科学会
第10回日独皮膚科学会 German-Japanese Society of Dermatology (GISD)
片山一朗
会頭:荒瀬誠二 徳島大学名誉教授
会場:The Pacific Harbor
会期:2012年11月14−17日 片山一朗
荒瀬誠二先生が今回会頭を務められた日独皮膚科学会は西山茂夫北里大学名誉教授、植木宏明川崎医大名誉教授などドイツに留学された先生を中心に組織された学会で、第一回大会はドイツHeidelbergでHornstein先生を会頭に開催された。その後、3年毎に日独交互に開催されている。日本では過去、植木先生が倉敷で第2回大会を開催され、その後西山先生が箱根、西岡清東京医科歯科大学名誉教授が奈良、勝岡憲生先生が横浜で開催された。ちなみにドイツ側はSchopf, Freiburg大学教授、Happle, Marburg大学教授、Mauer, Dresden大学教授、Elsner, Jena大学教授がそれぞれ開催されている。私もMarburg以来参加しており,2002年に西岡先生が開催された時には長崎でPost Congress Meetingを担当させて頂いた。雲仙などに案内し、温泉や海の幸を楽しんで頂いたことを思い出した。今回もドイツ側、日本側からあわせて60題近い演題が発表された。私自身はドイツ留学の経験はないが、なぜか、会員にして頂いている。この会のおかげで多くのドイツ人の知己を得ることができ、今回もElsner教授以外に上記の先生方やMunchen大学のThomas Ruzicka教授やHidelber大学のDiepgen教授、Enk教授などと再会できた。初日は少し遅れて参加したが、最後のセッションの獨協大からのEhler Danlos症候群、浜松医大のTrichophalangeal syndromeのコメントの際、Munchen大学名誉教授のPlewig先生から、ドイツでの国立の難病疾患センターの現状の説明があり、患者会や企業を含めたしっかりした組織があること、日本ではどうかという質問があった。私も皮膚科領域の難治疾患の治療センターの必要性を日頃から感じており、多いに参考になった。会の終了後はWelcome receptionがあり、皆さんそれぞれ、旧交を温められていた。また会の途中で阿波踊りのExhibitionがあり、団扇を片手に日本の踊りを楽しまれ、何よりであった。2日目はElsner教授のHand eczemaのProtective軟膏の評価の話があった。阪大でも荒瀬先生を中心に同様の臨床研究を進めており、彼らのTEWLやQOL評価など、われわれと同様の手法で多数の外用薬のHand eczema予防の評価をされており、大変参考になった。またWollenberg先生はHyper IgE症候群がSTAT3の欠損するDominant typeと、DOCK8の欠損するRecessive typeの2型があることを講演され、後者で骨髄移植が有効であるとの話を伺った。また9月まで阪大におられた井川先生がOdntogenic focal infectionが原因と考えられるアナフィラクトイド紫斑の報告をされた際、やはりPlewig先生が、米国で歯周囲炎による敗血症で死亡する例が増加しているとの報告を紹介され、歯科領域の感染症の予防の重要性を強調された。毎回参加するたびに感心するのはリタイアされた先生方が非常に活動的で、また驚くほど博識であり、専門外の分野でも鋭いコメントを発せられることで、我々の世代ももっと勉強することがあることを再認識させられる。コーヒーブレークの時荒瀬先生や植木先生と此の会のレベルが以前に比し、ずいぶん上がったこと、日本からの若い先生方の英語での発表や受け答えが見違えるほど向上していることなどの話で盛り上がった。この後は残念ながら所用で徳島を後にしたが、3日目はCongress Tour、4日目は一般演題、その後東京に移動され、東京医大の三橋善比古先生が主催のPost congress meetingに参加され、ご帰国の予定で、次回は2014年6月にHeidelberg 大学教授のAlexander Enk教授を会頭に開催される予定で今から楽しみにしている。
Elsner教授の講演と質問されるHapple先生
長崎でのPost congress時の写真2002年(左:長崎大学医学部、右:蝶々夫人のレリーフ像の前にて。前列左より、植木教授、Mauer 教授、Happle教授)
平成24(2012)年11月16日掲載
第9回天王山カンファレンスin大阪大学銀杏会館
第9回天王山カンファレンスin大阪大学銀杏会館
壽 順
2012年10月20日(土)
ぶきたの学会見聞録
京都大学との合同研究カンファレンスである天王山カンファレンスも今年で9回目になりました。最初は確かあまり演題がなく、当時の助手(助教)の先生方が発表していたと思います。その後、阪大は寺尾先生や北場先生を皮切りに大学院生が徐々に増え、発表の場は若手の先生に移行していきました。第1回から参加していましたが、最初は何を言っているのか全く分からない状態でした。遅ればせながら北場先生たちの3年後に大学院に進み、僕は確か第6回くらいのときに発表させていただきました。当時の発表ネタ、悪性黒色腫のプロテオミクス解析からぺリオスチンを見出し、大きく研究の第一歩を踏み出したような気がします。(発表した悪性黒色腫とぺリオスチンは、ようやくSubmitまでこぎつけました。)こないだの天王山カンファの時は、話を聞きながらふとなぜかそんな郷愁に浸ってしまいました。
さて本題ですが、阪大3題、京大3題、計6題ですが、3時間の熱いカンファでした。残念だったのは、僕も含め大阪大学の若手からの質問が少し少ない気がしました。僕自身はもう少し免疫の勉強をしないとダメです。阪大からの発表は聞いたものが多かったので、京大の話をしますと、3題とも面白かったです。SLEマウスの話、iPS(本チャンです)の話、夏秋先生のイメージング、どれも苦労がにじみ出ていて非常に愛着を持って聞かせていただきました。やっぱり研究=苦労、努力=結果という構図が一番好きです。iPSの研究は、対象疾患の研究がまだあまり進んでいない分野だと思うので、だからこそいい結果を残してほしいなあと思います。
最初は、京大は宮地先生だけしか名前を知らないところからはじまった天王山カンファですが、今では長崎に行かれた宇谷先生や椛島先生をはじめ、非常にたくさんの先生と知り合うことができました。昨年も今年も最後までお付き合いしてくださった中島先生、夏秋先生本当にありがとうございます。本当に阪大と京大の間にいい雰囲気を感じて、楽しくバトルできている気がします。第10回の来年を最後に京阪バトルはいったん終焉を迎え、再来年からは大学の数を増やしてカンファレンスは続いていくようです。まだ2年先ですがワクワクします。
平成24(2012)年10月22日掲載
第22回国際痒みシンポジウム
第22回国際痒みシンポジウム
片山一朗
会長:遠山正彌(大阪大学名誉教授、地方独立行政法人大阪府立病院機構
会場:ベルサール神保町
会期:2012年10月6日
痒みの基礎と臨床に関する専門的な研究会で、東京大学名誉教授の石橋康正先生。大阪大学名誉教授の吉川邦彦先生、大阪府立羽曳野病院前副院長の青木敏之先生により開始された研究会で、毎年東京と大阪を交互に移動して開催されている。解剖、生理、薬理などの基礎研究者から臨床各科に亘る医師、企業、医療関係者など多くの先生が参加される会でわたしも第一回から参加している。
平成19年の厚労省の調査研究で痒みは有訴率で第10位にランクされる、重要な症候で、米国でも痒み研究へのグラントが大幅にアップされ、痛みとともに重要な研究分野になりつつある。また昨年の東北大震災でも慢性期の皮膚疾患として痒みのコントロールが重要であったことも聞いており、より多くの若い研究者の参加がのぞまれる研究会の一つである。
今年の研究会は海外からの招待講演が2題、指定演題が5題、一般演題が11題であり、私は午後から別の用務で欠席したが、遅くまで議論が続いたと聞いている。
私が聞いた講演では資生堂の傳田光洋先生の「Sensory system of keratinocyte: association with itch」が印象に残った。傳田先生は「皮膚は考える(岩波科学ライブラリー)」や「第三の脳(朝日出版社)」、「 賢い皮膚―思考する最大の“臓器” (ちくま新書)」など多くの著作でも知られている方で、皮膚感覚として従来漠然ととらえられていた知覚、認識機構を新たな手法で解析され、中枢に近い認識機構を皮膚のケラチノサイトが持つことを報告されている。また皮膚科領域からは、京都府立医大の加藤教授が血小板と痒みの関わり、大阪大学の室田先生がサブスタンスPで誘導される新たな神経成長因子、Arteminとアトピー性皮膚炎での温度過敏との関わりを述べられ、活発な質疑応答がなされた。来年は大阪で東京慈恵医大の江畑俊哉先生を会長として、また国際痒み学会がボストンで開催される予定である。痒みの研究に興味ある方は是非参加して頂きたい。会員登録は以下のホームページから。
国際痒みシンポジウム事務局:http://netconf.eisai.co.jp/itch/index.html
平成24(2012)年10月29日掲載
日本皮膚科学会三支部学術大会
日本皮膚科学会三支部学術大会
片山一朗
第76回日本皮膚科学会東部支部学術大会
会長:山下利春 札幌医科大学教授
会場:ロイトン札幌
会期:2012年9月29-30日
テーマ「豊穣な皮膚科の世界を歩む」
第63回日本皮膚科学会中部支部学術大会
会長:古川福実 和歌山県立医科大学教授
会場:グランキューブ大阪
会期:2012年10月13-14日
テーマ「めざせ!鉄人の皮膚科学」
第64回日本皮膚科学会西部支部学術大会
会長:秀道広 広島大学教授
会場:広島国際会議場
会期:2012年10月27-28日
テーマ「医学における皮膚科学の役割」
毎年9-10月は日本皮膚科学会の3支部学術大会が開催されるが、今年は3つの会、全てに参加する機会があった。それぞれの会長の思いが込められたテーマのもとに多くの会員が参加された。それぞれの会で印象的だった講演を聞いて感じたことを記録しておきたい。
第76回日本皮膚科学会東部支部学術大会
山下教授は悪性黒色腫が専門であり、その基礎研究で大きな成果をあげておられるが、会長講演では御自身が行われてきたHPVウイルスの研究もあわせて紹介された。特別講演はその研究のご縁で、HPVワクチンによる子宮頚癌予防に関する研究で2008年にノーベル賞を受賞されたHarald zur Hauzen教授が行われた。関連して、彼のラボに留学されていた東京慈恵医大の江川清文先生やEthel-Michele de Villiers がHPVに関わる教育講演を行われ、悪性黒色腫よりもHPV関連のテーマが前面に打ち出された学会であった。
残念なのは丁度土曜から日曜にかけて、2つの大型台風が日本を縦断するというニュースがあり、懇親会もそこそこに札幌を離れられた先生も多かったようで、札幌の秋を楽しめなかった先生や札幌医大の関係者の皆様にはお気の毒であった。大阪大学からは荒瀬先生、高橋先生が出題され、特に荒瀬先生は北大時代の知人と旧交を温められたそうで、なによりであった。
第63回日本皮膚科学会中部支部学術大会
教育講演はすべて「鉄人と学ぶ・・・」というタイトルがつく講演であり、古川教授の思いがこもった学会であった。会長講演では短い時間の中で教室の歴史、現在の研究、未来像を述べられた。和歌山という広い診療圏の中で地域医療の核をなす多くの貢献をされているのみでなく、研究を新たな治療法の創出に絞って行う姿勢で、多くの医局員の先生を指導されておられる古川先生のパワーをあらためて感じた講演であった。
特別講演は本家鉄人の元広島東洋カープの衣笠祥雄選手による「野球から学び、教えられたこと〜プロフェッショナルとは〜」で、広い会場に多くの聴衆が集まった。国民栄誉賞受賞の背景になった連続出場での裏話やプロとしてのサブスペシャリテイーを持つことの重要性を物静かな口調で語られた。
大阪大学からは加藤先生が学会初デビューされ、立派に講演された。また花房先生がシンポジウム「自己免疫疾患up to date」で胸腺腫関連の自己免疫疾患に関する講演をされた。
第64回日本皮膚科学会西部支部学術大会
3支部学術大会の最後として広島国際会議場で開催された。会長講演では秀先生が広島大学でのアレルギー研究の流れを概説された。初代皮膚科教授の矢村卓三先生は出身は、私の前任地でもある長崎大学で、同門の先生方からは矢村先生に関わる多くの逸話を伺っていたが、日本における皮膚の即時型アレルギー研究の草分け的な先生で、その研究の流れが山本昇壮先生、秀先生に脈々と受け継がれていることを再認識した。秀先生は蕁麻疹のGL作成で中心的な役割を担っておられ、最近は蕁麻疹での凝固系の関与に関わる素晴らしい仕事を展開されている。
学術文化講演は青山学院大学教授で最近は「動的平衡」やフェルメールに関する著作でご高名な福岡伸一さんの「生命を捉えなおすー動的平衡の視点からー」で、私もこの講演をおおいに楽しみにしていた。最初のスライドがルリボシカミキリのきれいな写真で、幼少時代の昆虫少年から顕微鏡を買って貰い、レーエンフック、フェルメールへと興味の中心が移っていくプロセスを、哲学者を思わせる静かな、しかし明確な口調で講演された。氏の提唱される「動的平衡」の考え方はいまや生命化学のみならず経済や政治まで多くの影響を与えているが、今後のiPS細胞を中心とする再生医学の発展にも寄与すると考える。
また特別講演の演者としてカリフォルニア大学のRichard Gallo教授が自然免疫における最新の話題の中で、紫外線による炎症反応がケラチノサイト由来のnon-coding RNAによるTLR3を介する反応であることを話された。乾癬の病因論で治療に使われるビタミンDが抗菌ペプチドを誘導することと同様、光線療法との関わりでこの反応はParadoxicalな現象であり、興味深く拝聴した。また最後のスライドで現在教室から彼のラボに留学している中川幸延先生の名前がクレジットされており、元気に活躍しているとの話を聞いた。大阪大学からは糸井先生、井上先生が発表され、いづれも多くの質問があった。特に井上先生は学会初デビューで強皮症に対するPUVA療法が皮膚硬化のみでなく、趾端潰瘍にも有効ではという貴重なコメントも頂いた。
私自身広島大学の関係者には旧知の方も多く、久し振りの再会を楽しんだ学会でもあった。
平成24(2012)年10月29日掲載
第63回日本皮膚科学会中部支部総会
第63回日本皮膚科学会中部支部総会
花房崇明
2012年10月13-14日(大阪)
先日、大阪国際会議場で行われた中部支部総会に参加しました。今回は片山先生、小豆澤先生のご厚意で初のシンポジストとして、胸腺腫関連自己免疫疾患という演題名で講演する機会を頂きました。講演ではヒトの胸腺腫における自己免疫疾患の発症の機序を、制御性T細胞の役割を中心に、小豆澤先生の薬疹のモデルマウスにおける表皮障害の発症の機序との類似点・相違点を含め説明させていただきました。同じ自己免疫疾患のセッションで滋賀医大の田中先生、阪大の乾先生などそうそうたるメンバーが面白い内容を分かりやすくご講演されていたのに比べると、緊張してしまい上手に話せなかったので、聴いていただいた先生方に満足していただけたかは分からないですが、自己免疫疾患における胸腺の役割について、今後も研究を続けていきたいと思っています。
大学院生・研究生の4年半は、研究が中心の生活で、臨床は外来診療のみでしたが、この10月から病棟の入院患者さんも指導医として担当することになりました。久々の病棟診療でさっそく初日から看護師さんにこっぴどく怒られるなど、テンポが掴めていないところもありますが、大学院で研究を始めたことで、患者さんの皮疹について、それが何故皮膚に起きたのか免疫学的・論理的に考えようとしている自分に気付き、(苦しい)研究生活を経て臨床での視野が広がったことを実感しています。今後も皮膚科医としての診療のスキルアップを目指していこうと思っています。
最後になりますが、この学会参加レポートをご覧になった先生で、胸腺腫関連の自己免疫皮膚疾患の患者さんがおられましたら、是非とも一度ご相談下さい。
平成24(2012)年10月25日掲載
第63回日本皮膚科学会中部支部総会
第63回日本皮膚科学会中部支部総会
室田浩之
2012年10月13-14日(大阪)
10月13−14日に行われた中部支部総会に参加してきました。趣向を凝らしたプログラムで、タイ焼きでもうしますと頭からしっぽまでたっぷりアンコが入っているようなものでした。会長の古川福実先生をはじめオーガナイザーの皆様のご尽力の賜物です。
幹細胞のセミナーでは玉井先生、中村先生のお話を拝聴しました。玉井先生は表皮に由来するHMGB1が骨髄の間葉系幹細胞を刺激、局所に動員する事で皮膚の再生が促されることをクリアに報告されました。ご自身の骨髄細胞でも検証を行われたことに表皮水疱症治療に対する先生の熱意を感じました。中村先生は最近注目されている汗腺、汗管の幹細胞について知見をご紹介いただいた。実はかねてから私たちも汗に関する付属器が妙な分裂能を有していることを不思議に思っていました。中村先生はBrdUのlabel-retaining細胞を皮膚で検索し、エックリン汗腺にBrdUの取り込みが多いことを突き止めました。全身の汗腺の数は生まれた時から決まっていて、生後増える事はないと言われています。そんな汗腺が皮膚損傷の非常事態において様々な形で応用されるのかとかんがえると切なく、エックリン汗腺を大切にしようと思いました。
2日目の熊切正信先生のお話は私の身につまされる内容でした。病理組織を診る姿勢の大切さを改めて学びました。メラノサイトと神経の関係では爬虫類の擬態の例を上げ、神経とメラノサイトが相互に情報交換をしているかもしれないという展望を示されました。先だって行われた国際かゆみシンポジウムにおいて表皮細胞が神経とシナプスを形成するという傳田先生のお話を拝聴した後でもあり、これら一連の神経と皮膚にまつわる話は私に大きなインパクトを与えました。
写真はカラフルなスカラベのアクセサリーです。
色の表現は様々。ヒトが自身の皮膚の色をコントロールできるのか興味のあるところです。
平成24(2012)年10月23日掲載
2012 ESDR at Lido, Venice
2012 ESDR at Lido, Venice
松井 佐起
2012年9月19日から22日まで、ヴェニスのリド島で行われたEuropean society for Dermatological researchに参加させていただきました。私はESDRの参加は今回がはじめてでしたが、口演は若手の先生から皮膚科研究の第一人者の先生方まで充実していて、特にFuchs先生のご講演のときは広い会場が人で埋め尽くされ、研究者たちの熱気につつまれていました。Posterは700をこえる演題で、分野も幅広く、poster walkに参加して説明を聞いていてもはじめてきく単語が飛びかって、刺激的でした。はじめはアレルギーのテーマを中心に見て回っていましたが、みて回るうちに色々な分野のposterの前で足がとまり、自分のposter発表の時間もつい、周囲の発表に気を取られていました。
会場となったリド島はヴェネチア本島から船で数駅のリゾート地ですが、本島とくらべて静かで観光客もすくなく、ゆったりした時間が流れていました。時間のゆっくり流れる島で海をながめながら、学会では皆さんの熱気を感じて、もっといろんな方に興味を持ってもらえる発表ができるように頑張ろうと思えて、充実した学会でした。私は今年、2回の国際学会を含め色々な研究会、学会に参加させていただいていますが、いろいろな分野の学会で、新しい視点に驚いたり、語学力のなさを痛感したり、各分野の奥深さをしったり、毎回、有意義な時間を過ごさせていただいて感謝しています。ありがとうございます。
平成24(2012)年10月9日掲載
2012 ESDR at Lido, Venice
2012 ESDR at Lido, Venice
油谷美寿季
今年の春から皮膚科で研究させて頂いています大阪大学4回生の油谷美寿季です。9/19~9/22にかけてベネチアのリド島で開かれたESDRに参加させて頂きました。リド島は本島の南東に位置する細長い島で、この島には車やバスが走っています。観光客は本島ほど多くなく、閑静な住宅地が広がり、学会会場前も運河が延びており、とてもいい景色です。日本はまだ残暑厳しい頃でしたが、ベネチアは涼しくて過ごしやすく、夜になるとジャケットなしでは歩けないほど冷える日もありました。
今回は私にとって初めての国際学会でした。英語でポスターを作ること、さまざまな国の研究者が一堂に集まっている光景、講演を英語で聴くこと、すべてがとても新鮮で、不安も混じりながら興奮や感動しっぱなしでした。英語だけが飛び交う状況に最初圧倒されましたが、発表されている研究を見てみると、例えば組織の染色では、国が違っても方法や試薬は同じで、もちろん染まり方も色も同じで、研究は世界共通なんだなぁと、どこか嬉しく思いました。私は、Oligosccharide modification by GnT-V augments skin sclerosis through enhancing TGFβ signaling. という内容で発表させて頂き、質問にはなんとか英語で説明できましたが、講演はスライド一つ一つを理解していくのがやっとでした。なんとか聴き終えていた私に比べ、横では先生方と先輩が内容を理解して話し合っているのを聞くたびに、もっと勉強せねばと改めて感じました。
国際学会初参加の私には、学会のない夜や余った時間で観光ができることもまた大変魅力的でした。ベネチアはどこを歩いても素敵な小道が続いていて、かわいい雑貨屋さんやおいしいジェラート屋さんに出会ったり、急に視界が開けてにぎやかな広場に出たりと道に迷いながら歩くのも楽しめます。サンマルコ広場の鐘楼の展望台からはベネチアの風景が一望でき、茶色い屋根と青い海のコントラストは本当にきれいでいつまでも眺めていたくなりました。
また、寺尾先生も書かれていらっしゃるように、料理がとても美味しく、毎食パスタや魚介類を食べていました。講演が難しくて疲れてきた時は、後でまた美味しいパスタが食べれるから!と思うと頑張れるくらいでした。あとアプリコットジュースが美味しくて、ワインの苦手な私はいつもアプリコットをワインで割って飲んでいたのですが、すごくおすすめですので機会があればぜひお試しください!この4日間はとても充実していて、また来れるようこれからも頑張って研究しよう、と励みになりました。最後になりましたが、今回このような貴重な経験をさせて頂けたことを、片山先生をはじめ皮膚科のみなさまにこの場を借りてお礼申し上げたいと思います。
平成24(2012)年10月9日掲載
2012 ESDR at Lido, Venice
2012 ESDR at Lido, Venice
寺尾美香
9月19日から22日までESDR (European Society for Dermatological Research) に参加させていただきました。ベネチアのリド島というベネチア映画祭が開催される、全長12kmほどの細長い島での開催で、ここはヨーロッパの高級リゾート地の一つのようです。せっかくなので、参加する女性陣4人でリド島の3 bedroom apartmentを借りましたが、お花に囲まれた素敵な家で、楽しく優雅に滞在することができました。
今回の学会は講演・発表ともに臨床と関連した研究が多く、聞いていてわかりやすく勉強になるものが多かったです。私は‘Local cortisol activation by 11β-HSD1 progresses skin atrophy through reducing the proliferation of fibroblasts in adult mouse skin’という内容の発表をさせていただき、似たような研究を行なっているポスターと発表を中心に勉強してきました。ESDRに参加させていただくのは今回で4回目になるのですが、初めて参加したときにはポスターの前にたっているだけでも緊張していたのに、今では、同じ研究分野に人たちに質問したり、分野が違っていても説明してもらったりできるようになり、自分自身の成長も少し感じることができ、うれしく思いました。また、この場をお借りして、このような素晴らしい学会に4度も参加させていただいたことに片山先生をはじめとした先生方にお礼申し上げます。
ベネチア本島にもヴァポレット(小さな船)に乗って出かけましたが、ヨーロッパの昔の街並みが残っており、こんなに綺麗な場所があることに驚き、再度訪れたい街の一つになりました。また、なんといってもイタリア料理(とくにパスタ)の美味しさに感激しました。食事がこんなにも楽しみであった学会は今までありませんでした。パスタだけでも、ボンゴレ、イカスミ、カルボナーラ、ペスカトーレなどなど数え切れず食べました。ピザもリゾットもスープも食べるもの食べるものすべて美味しかったです。毎日、ワイン、デザートとともに堪能しました。もちろんジェラードも毎日のように食べ歩きました。ベネチアにいる間は「こんなに美味しいなら、太ってもいいから食べられるだけ食べよう」と思っていたツケが今、まわってきています・・・・・・・・
平成24(2012)年10月1日掲載
ぶき太の学会見聞録 PASPCR in Utah
XVII Pan American Society of Pigment Cell Research (PASPCR)
主催:Greg Barsh (Hudson alpha institute), Sancy Leachman(Huntsman Cancer Institute)
場所:Park City, Salt Lake City in Utah
日時:2012.9.19-22
演題:Molecular Structural Analysis for the Hypopigmented Macules in the Patients with Tuberous Sclerosis
壽 順久
ぶきたの学会見聞録
アメリカはユタ州、Park Cityで開催された、第17回PASPCR2012に出席してきました。関空→Sanfrancisco→Salt Lake Cityと乗り継いで、Salt Lake Cityから車で1時間ほどのところにPark Cityがあります。学会場のSt. Regis Hotelに夜10時くらいに到着し、まずは晩飯にしけこみました。アメリカの食事はあまり美味しくないイメージがありましたが、非常においしく特に肉料理は向こうのワインに非常によくあいました。疲れていたせいか比較的ゆっくりと寝れました。
Poster前記念撮影。暗くてすいません(写真左)
翌朝9:00から学会開始。もともとマニアックな学会ですが、その中でも初っ端からアヒルや蝶の色素といった超マニアックなセッションから始まりました。しかしながら勉強になります。僕の英語力(日本語もですが)は非常に拙いので、しゃべっている内容は約3割くらいしか分かりません。スライドと合わせて半分くらいを把握するのがやっとです。それでも勉強になりました。人と異なる生物から得られる情報は一見遠いようですが、人の研究のヒントになるんじゃないかと思います。午後は、Basic researchのポスターセッションがあり、僕と種村先生、田中文先生が発表しました。僕はTSC(Tuberous Sclerosis Complex)の白斑のメカニズムについての研究を発表しました。これもかなりマニアックな内容で、ほっとしつつも残念ながらあまり質問されることはありませんでしたが、コロラド大学のSpritz先生が気を利かして質問してくれました。現在、留学先を探していることもあり、早速Spritz先生にApplyしてみましたが、残念ながらお金がないそうです。
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Spritz先生と。大御所ですがフランクです
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Leachman先生と。とても陽気な先生でした
翌日はVitiligoとMelanomaがてんこ盛りでした。現在僕は、Vitiligoのマウスモデルの作成とMelanomaの間質と微小環境について研究をしていますが、少しずつずれていて直結しそうな話は残念ながらあまりありませんでした。アメリカのMelanoma研究はBRAFやNRASをはじめ、Gene mutationをターゲットとした研究が真っ盛りな印象でした。お昼休みを利用して、目の前にある山にみんなで登りました。1時間ほど登って頂上にたどり着きましたが、非常にきれいな景色でした。この壮大な景色はなかなか日本では目にすることのできないもので、アメリカのでかさを痛感する瞬間でもありました。 夜は、主催したUtah大学のHUNTSMAN Cancer InstituteでInvited Partyがありました。その前に主催のSancy Leachman教授のラボ見学とUtah大学病院の見学をさせてもらいました。ラボは先がかすむほど巨大なラボでのぞいた人全員が、「Waoooo」と声を上げていました。病院も非常にきれいで、化学療法室なんかはこれでもかっていうくらいLuxuryなものでした。Partyは、バンドの生演奏のなか行われました。アメリカ人はみんなダンスが好きで、僕、種村先生、田中先生、清原君で踊りに行きました。片山先生も引き込もうと画策しましたが、残念ながら僕たちの術中にはまることなく片山ダンスを拝むことはできませんでした。主催であるSancy Leachman教授は、終始ダンスに勤しんでおり少しだけご一緒させていただきました。もちろんApplyさせていただき、現在Pending状態です。
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ラボ見学。でかすぎて端が見えません!
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Utah大学 HUNTSMAN Cancer Institute Party会場。清原君はとても元気そうでした
PASPCRも最終日を迎え、午前のセッションを聞いたのちSalt Lake Cityをはなれ、Los Angelsに向かいました。ロスは僕のお師さんである種村先生が40年の人生のうち2年弱もいたため、「第2の故郷」と豪語するほど素晴らしいところです。少し買い物をしたのち清原君おすすめの中華料理を食べに行きました。アメリカはどこに行っても何を食べてもキングサイズです。みんなでシェアしましたが、やっぱり食べきれませんでした。 翌日朝から、水族館、美術館を見たのち、種村先生の留学先で現在は清原君が留学しているDr. HoonのJohn Wayne Cancer Instituteのラボを見学させていただきました。こちらは非常に歴史を感じるラボで、お師さんもここで実験しClinical Cancer Researchを見事に書き上げたんだなあ、と感銘に浸りました。清原君の机の横にお師さんが残していった大量のゴルフボールがあったのが印象的でした。アメリカ最後の夜は、西海岸近くのお師さんお勧めのSea foodを食べに行きました。これまた絶品!ビール飲んでワイン飲んで、ムール貝にオイスターを食べてまくり、いい感じで帰国の途に就きました。帰国後、室田先生に「太ったんちゃう?」と第一声に言われました。
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John Wayne Cancer Instituteにて
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Dr. Hoonラボ内にて。気分は既に研究員です
今学会は、全日程を通じて非常にComfortableに過ごせた学会でした。ホテルは非常にきれいで皆さん親切でした。あとで知りましたが宿泊したSt. Regis in Park Cityはアメリカで10本の指に入るほどのホテルだそうです。Sancy Leachman教授をはじめ、Utah大学の先生方には大変な歓待を受け、色素細胞の高名な先生方とお話しさせていただけたこともよかったです。また行ける日、お会いできる日を楽しみにしています。
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到着日
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最終日
いかがでしょうか。やはり少し大きくなっていますでしょうか?
平成24(2012)年10月1日掲載
PASPCR参加訪米第2弾
XVII Pan American Society of Pigment Cell Research (PASPCR)
President: Greg Barsh (Hudson alpha institute)
Park City, Salt Lake City
2012.9.19-22
種村 篤
PASPCR参加訪米第2弾 2012年9月19日―22日 | 今年2回目の国際学会参加録 |
PASPCR参加 訪米第2弾
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PARK CITYで行われたPASPCR参加メンバーと (左から、片山教授、私、壽先生、田中文先生) |
ポスター前、清原先生・ALEXと、 学会参加メンバーと |
今年再びアメリカを訪れました
去る2012年3月16-20日米国サンディエゴで開催されました、第70回AAD annual meetingへの出席および留学先への訪問について報告いたしました(第1弾)。この度、9月19日―9月25日にPASPCR(Pan American Society for Pigmented Cell Research)のannual meetingに参加し、再びLAを訪問して来ましたので、第2弾として報告いたします。
今回は、いくつかの会議を終えるとほぼ同時に、慌しい中での渡米でした。学会は、2002年冬季オリンピックが開催されたことで有名な、Salt Lake Cityより約40マイル東にあるPark Cityという、小さなリゾート地の一角でとり行われました。私は、Morphological and Ultrastructual Assessment for Activation of Dendritic Cell in the Lesional Skin in Generalized Vitiligo Vulgaris: Link between Cellular Autoimmune Response and melanocyte Disappearanceというタイトルで(poster presentationでしたが)発表させて頂きました(写真右上)。(汎発型)尋常性白斑において、これまでの液性・細胞性免疫では説明できない現象に対し、最近Th17細胞を中心とした第3の役者の存在が幾つか報告されています(Kotobuki et al, PCMR 2012、他)。今回の発表はTh17細胞浸潤に加え、樹状細胞や多くの免疫担当細胞が尋常性白斑の病態形成に関与している可能性を示唆した内容です。今後静的な評価だけでなく、時系列を加えた4次元観察および機能解析を進め、より真実に迫る話が進めていければと思っています。学会自身、100人にも満たない参加者が色素細胞の基礎およびメラノーマの基礎および臨床について、熱い討論がなされていました。個人的には白斑のモデル動物として以前より報告されています、Smyth lineのサイトカイン発現解析の報告が自分たちの研究に関連するのではと興味深く聴講しました。ただ、フライトの関係でメラノーマに対する免疫療法updateが聴けず少し残念でした(9月15日大阪地方会での慶應大 河上裕先生の御講演で盛りだくさん教えて頂いたので、まあ良いかと思っております)。さて、渡米後半はLAに移動し、John Wayneがん研究所を教授らとともに訪問しました。現在同研究所に留学されている、清原英司先生と行動を共にし、「先生よく来られますね。」と冷やかされながら、楽しく現在の留学生活・研究内容を聞かせてもらいました。清原先生、色々お世話になり有難うございました。さらに、私の留学中実験室助手として働いていた、Alex君(写真右中、本名Alejandro Velascoというメキシコ系アメリカ人です)と久しぶりに対面しました。彼は現在ラボを離れ、USC近くの赤十字病院でblood processの仕事をしながら、medical system engineerの資格を取るための学校へ通学しているそうです。前回再会したTerrance君と同様アメリカで堅実な仕事を獲得するため、タフであり貪欲でありかつ勤勉な彼らの姿に頭が下がる思いです。もちろん、カリフォルニアサンシャインを今回も楽しんだことは言うまでもありません。
平成24(2012)年9月28日掲載
XVII PASPCR
XVII Pan American Society of Pigment Cell Research (PASPCR)
President: Greg Barsh (Hudson alpha institute)
Park City, Salt Lake City
2012.9.19-22
片山一朗
4年前から白斑の診療ガイドラインの作成と新規治療開発の厚労省班研究に関わり、色素細胞関連の学会に参加する機会が増えているが、今年からさらにセンダイウイルスベクター(HVJ-E) の悪性黒色腫への創薬事業が厚労省のプロジェクトに採択されたことで、本格的にメラノーマの勉強を始めることになった。
今回参加した、PASPCRはアメリカ色素細胞学会の年次総会で、会場となったSalt Lake のPark City周辺は冬季オリンピックが開催された競技会場となったところで、素晴らしい環境のもと3日間、学会を楽しんだ。
学会のテーマは「The power of genetics and pigmentation」で、前日には尋常性白斑と悪性黒色腫の患者会との交流会が開催されており、研究のみでなく、臨床への視点を持つ学会であることが特徴のようであった。初日は色素細胞の基礎研究、2日目は主として、尋常性白斑、3日目が悪性黒色腫のプログラムが組まれていた。
印象に残った演題としては初日の蝶の翅の模様形成に関わる遺伝子の話で、数年前に読んだショーン・B・キャロルの「シマウマの縞、蝶の模様」を思い出しながら興味深く聞いた。またこの分野ではゼブラフイッシュやチョウチョウウオの模様の研究でも面白い研究が進展しているようである。色素異常症ではOCA1Bなどの遺伝性の疾患にTyrosinの分解阻害薬(Nitisinone)を投与することで、皮膚や虹彩の色素再生が可能であることをNIHのBrian Brooksが発表し、質問が相次いでいた。NitisinoneはFDAも認可しているとのことで、遺伝性色素異常症への治療が可能になるかもしれない。阪大でも金田先生が結節性硬化症や尋常性白斑へのラパマイシン外用の有効性を報告され、現在その創薬化に取り組んでおられるが、Nitisinoneの併用でより効果があがるかもしれない。悪性黒色腫に関しては、BRAF阻害薬の登場以降の流れで、ほとんどがあらたな治療標的となる分子の探索研究で、Mutation Huntingとも言える演題がそのほとんどを占めたが、今後の臨床応用が期待されると同時にHVJ-Eとの併用など新たな研究課題の参考になる発表が多く、参加した意義があった。阪大からは種村、寿、田中(文)先生が発表され、コロラド大のSpritz教授やNorris教授ともお話しできた。また現在John Wayne Cancer Instituteに留学している清原英司先生が家族ともども参加され、久しぶりに再会できたことも嬉しいできごとであった。彼とは帰路、彼のラボに立ち寄り、現在進行中の悪性黒色腫のCirculating tumor cellの今後の共同研究などの打ち合わせをした。
会場となったSt Regis Hotelからは紅葉の綺麗な山々の景観が望め、我々も会の合間にトレッキング(?)を楽しんだ。懇親会は今回の学会運営の中心となられたユタ大学のSancy Leachman教授のご好意によりHuntsman Cancer Instituteで開催された。会の前に研究室や病棟、化学療法センターなどを案内していただいたが、そのスケールの大きさと患者への行き届いた配慮に、アメリカという国の凄さを再認識した学会でもあった。
平成24(2012)年9月26日掲載
第2回汗と皮膚の研究会
第2回汗と皮膚の研究会
平成24年9月8日 東京
片山一朗
この会は3年ほど前、杏林大学の塩原教授から講演会に呼んで頂き、アトピー性皮膚炎患者で発汗が低下しており、皮膚炎の改善でその機能が改善するというお話をさせて頂いたおり「汗の重要性を皮膚科の若い先生にももっと認識してもらう必要があるのでは?」とのご意見を頂いたことに始まる。まず東京医科歯科大の横関教授、広島大の秀教授など汗の研究をやっておられる先生方を中心にキックオフの研究会を試験的に開催した。幸いM社から賛同を頂き、とりあえず3回を目処に、昨年,今年と会を開催させて頂いた。塩原先生のお考えではこのような研究会で汗に関する臨床的な問題を討論して行く過程で、汗の重要性が他科の先生にも認識されていくのではないかとのことで、今年は昨年に比し、若い先生の参加が目立ち、討論も活発であった。特別講演は京都薬科大準教授の橋本貴美子先生に「動物の発汗に学ぶ汗の役割—乾燥・感染・紫外線に対する働き」というタイトルでお話し頂き、会員からの発表が9題あった。橋本先生はカバが赤い汗をかくことを詳細に研究さ、Natureに報告されたが、子供の頃のキャラメルのカバの似顔絵で赤い汗(赤いカバ)がかかれていることを不思議に思われ、大人になったらその謎を解明したいとのことで研究を開始されたそうである。今回のお話の中でカバの汗は皮膚の乾燥を防ぐとや抗菌作用を持つなど人の汗に近い機能を持つようで、赤い色がヒポスドール酸とノルヒポスドール酸の2種から成っている事など興味つきないお話を頂いた。
会員発表では大きくコリン性蕁麻疹での金属の関与、アレルギー的な側面と発汗障害の機序、汗疱と掌蹠膿疱症での表皮内水疱のでき方の差異、抗菌ペプチドの分布の違い、人でのアクアポリン5の局在と機能などの発表があり、おおいに議論が盛り上がった.阪大からは松井先生がマウスでのアセチルコリン性の発汗をヒスタミンが抑制すること、抗ヒスタミン薬がその抑制を解除することで、アトピー性皮膚炎などの発汗低下を改善する可能性を発表された。塩原先生からはマウスではヒスタミンの機能は人とは異なるのではという質問があったが、獨協医大の片桐先生からマウスでもヒスタミンの外用や比内投与で掻破行動が見られることや室田先生から後天性無汗症患者で抗ヒスタミン薬の漸増が発汗を促すことなどをコメントされた。この会のような臨床の立場から、汗の問題を討論出来る場はなく、さらに汗の研究に興味を持つ方が増える事を願っている。
平成24(2012)年9月10日掲載
第27回日本乾癬学会
第27回日本乾癬学会
会頭:伊藤雅章新潟大学教授
会期:平成24年9月7日(金)〜8日(土)
会場:朱鷺メッセ(新潟市)
片山一朗
第27回日本乾癬学会に参加した。阪大皮膚科からは糸井先生、中山先生が口演し、また谷、山岡先生や日生病院の東山先生、岡田先生など乾癬を専門とされる先生方が参加されていた。空路新潟に入ったが、新潟周辺は稲穂が黄色く色づき、秋の気配で、大阪の暑さをしばく忘れることができるかと思っていたが、会期の2日間とも連日33度を超す暑さであった。
今回は例年に比し、参加者が多かったようで、広い会場が人で溢れ、懇親会も盛況で、伊藤先生が用意された新潟の新米1kg入りの記念袋も初日の午後には完売だったそうである。今回の盛況は近年、乾癬治療の中心になりつつある生物製剤の演題やシンポが多く組まれていたためと考える。生物製剤の適応基準での肝炎、結核への対応や使用法、一時無効、二次無効例の治療など勉強になった。HBV−DNAが高値でも核酸アナログでHBVを抑制することで生物製剤を使用できることや、結核患者でも抗結核剤の使用で同様に治療を行えるとのお話で、消化器内科や呼吸器内科と日頃から密接な連携をとっておくことの重要性を再認識した次第である。また興味ある演題としてはParadoxical reactionに関する8題、マルチキナーゼ阻害薬やEGF阻害薬により乾癬が軽快した例の報告などがあった。特にこれらの分子標的薬で高頻度に見られる手足症候群やざそう様皮疹、爪囲炎などいずれの症例でも見られなかったとのことで、乾癬の発症機序を考える上で重要な発表であった。Paradoxical reactionの発症機序はまだ不明のようであるが、組織反応やマイクロRNAの解析などから今後その病態が明らかになるかと考える。糸井先生の発表されたSuperimposed linear psoriasisは飯塚先生からも極めて珍しい症例で、先のParadoxical reactionの発症機序の病態解明に繋がるのではないかとの意見を頂いた。乾癬と汗孔角化症の併存例でお互いの皮疹がさけるような分布をとることや、分子標的薬での皮疹の発現機序とあわせ糸井先生の研究の進展に期待したい。
患者会関連でも、世界の乾癬患者会との連携が進んでいることを札幌市で開業されている小林仁先生から伺った。
平成24(2012)年9月10日掲載
スウェーデン学会IDEA参加記
スウェーデン学会IDEA参加記
6th INTERNATIONAL CONGRESS ON DERMATO-EPIDEMIOLOGY (IDEA)
CONGRESS SITE: Skanes Universitetssjukhus Hudkliniken Malmo Sweden
President: Ake Svensson
26-28 August 2012
松井佐起
8月25日からスウェーデンのマルメで行われた6th International Congress on Dermato- Epidemiologyに参加させていただきました。
マルメの町はスウェーデンの北部、デンマークとの国境にあり8月でも最高気温が20度前後と過ごしやすい気候でした。コペンハーゲン空港から汽車で降り立ったマルメ中央駅は石造りの建物で柱には彫刻がきざまれ、とてもかわいらしいつくりでした。ホテルがある旧市街地は明るい色の建物がならび凝ったつくりの出窓にはお花が飾られて絵本のなかの町のようでした。また、スウェーデンの人たちがとても親切で、レストランでも街中でも笑顔で、丁寧に話しかけてくれたことが印象にのこっています。
学会場では1つの会場でsessionが進行する形で高名な先生方が熱い議論をかわされていました。比較的、少人数の会で和気あいあいとした雰囲気の中、会頭のsvensson先生ともお話する機会をいただき、アトピー性皮膚炎の疫学をがんばってねと、激励のお言葉をいただきました。その熱気に触発されて食事や休憩時間にもパソコンをかこんで議論に花が咲きとても充実した学会でした。ひとりひとりの患者さんと向き合うためにも疫学的な悪化因子、年齢、地域性などの傾向を勉強することが大切だとあらためて勉強になりました。
平成24(2012)年9月10日掲載
IDEA参加記
IDEA参加記
6th INTERNATIONAL CONGRESS ON DERMATO-EPIDEMIOLOGY (IDEA)
CONGRESS SITE: Skanes Universitetssjukhus Hudkliniken Malmo Sweden
President: Ake Svensson
26-28 August 2012
室田浩之
6th International dermato-epidemiology association congress (IDEA)に出席いたしました。現在、私たちは大阪にてアレルギー疾患の有病率、自然史に関する調査を行っています。このような疫学調査は単に数字を捻出するのではなく、社会に反映させてこそ価値があります。疫学に関してまだまだ勉強不足だった私にとって、本学会は渡りに船でした。欧米にはEuropean Dermato-epidemiology Network(EDEN)やAmerican Dermato-epidemiology Network (ADEN)という皮膚疾患の疫学に特化した組織があり、合同定例会(IDEA)を開催しているようです。疫学を切り口に環境と皮膚の関係を明らかにし、社会全体に働きかける事によって皮膚疾患の罹患率減少につなげています。日本でもこのような活動を期待したいところです。
職業病のセッションではEU連合が取り組んでいる金属アレルギー対策の効果に驚かされました。EUでは法的規制によって製品に含まれる金属の明示が義務つけられた結果、金属による接触皮膚炎罹患率が他国に比べ激減していたのです。疫学の結果が疾患予防につながった大きな成果の一例といえましょう。
アトピー性皮膚炎のセッションでは近年注目を集めるフィラグリン遺伝子変異が治療効果予測因子として使えるか検討されていましたが、現時点ではまだ明確な答えはないようです。アトピー性皮膚炎の一部に見られるとされるフィラグリン変異をどう臨床に結びつけるのか、現代の課題と言えそうです。
スウェーデンのグループは有病率を調べる目的で独自に作成した小児アトピー性皮膚炎診断アンケートの調査結果をISSACやブリティッシュ基準と比較し大きくそぐわなかったという報告をしていました。つまり、このアンケートはわずかな質問でアトピー性皮膚炎症状の有無を判断できるのです。アンケートの有用性を過去のアンケート結果と比較するという検証手法に違和感を覚えるものの、調査される母体数が大きな意味を持つ疫学調査では臨床症状の個々の特徴を反映しにくいという現実に私自身直面しており、臨床家としてこのような問題が解決できるような評価項目の立案を行っていきたいと思いました。
最後に、開催地であるスウェーデンのマルメという街はとてもかわいらしい街でした。ジブリの「魔女の宅急便」の舞台となった“海の見える街”はバルト海に浮かぶ島がモデルと聞きました。マルメのカラスは日本のものよりも小型で「キョッキョッ」と鳴いているのを聞いて魔女の宅急便にでてくるカラスの声と同じなのに感動いたしました。
http://www.idea2012.net/pics/1/2/karta_oresund.pdf
平成24(2012)年9月10日掲載
IDEA参加記
6th INTERNATIONAL CONGRESS ON DERMATO-EPIDEMIOLOGY (IDEA)
CONGRESS SITE: Skanes Universitetssjukhus Hudkliniken Malmo Sweden
President: Ake Svensson
26-28 August 2012
片山一朗
皮膚疾患の疫学に関する学会(INTERNATIONAL CONGRESS ON DERMATO-EPIDEMIOLOGY )がスウェーデンのマルメで開催され、阪大からも片山、室田、木嶋、松井の4名が参加した。会長はAve Svensoon教授が務められた。皮膚科における疫学研究はアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎などで行われてきたが、最近は薬疹,皮膚がん、乾癬などでも研究が進んでいる。今回の学会でもこれらの疾患を中心にKeynote lectureと一般演題の発表が行われた。会場となったマルメはコペンハーゲン空港から鉄道で20分程度で行けるスウェーデンの最も南に位置する都市で、旧市街はマルメ城や市庁舎など旧い建造物が残り、札幌に似た気候と広い公園が点在する素晴らしい環境で、学会のみでなく北欧料理や観光も楽しめた。
この学会に参加するきっかけとなったのは昨年6月にアムステルダムで開催されたアトピー性皮膚炎の国際的な疫学研究のワーキンググループHOMEII会議に出席したおり、夜の夕食会で今回の会頭のSvensson教授と隣席となり、室田先生ともども是非参加しろと言われたことにさかのぼる。昨年から厚労省のアトピー性皮膚炎の疫学研究班の班長を努める事になり、ノッテンガム大学のHowell Williams 教授やEDEN(European Dermato-Epidemiology Network)の主要メンバーであるハイデルベルク大学のDiepgen教授やイエナ大学のElsner教授など旧知の先生方も参加されていた。学会自体は特に目新しい話題はなかったが、北欧、オランダ、ドイツ,英国など皮膚科における疫学研究の現在の方向性が良く理解できたことが大きな収穫であった。ちなみに2014年のアトピー性皮膚炎の国際学会(Rajkaシンポジウム)がWilliams 教授を会頭としてノッテンガムで開催されることを聞き、今から楽しみにしている。
Howell Williams 教授
平成24(2012)年9月3日掲載
第42回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
第42回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
片山一朗教授
会長:横関博雄 東京医科歯科大学皮膚科教授
会場:軽井沢プリンスホテルウエスト
会期:2012年7月13−15日
第42回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会は7月13日午後、横関先生の会長講演から開始された。横関教授が就任された2005年からの主な研究である「IgEを介する遅発型、超遅発型炎症マウスモデルにおける好塩基球の役割」、「スギ花粉皮膚炎モデルの作成」、「痒疹のマウスモデル作成とヒト痒疹での好塩基球の役割」の3つの動物モデルの紹介とこれらのマウスモデルを用いたSTAT6デコイ、siRNAによる創薬への応用を中心に講演された。特に痒疹モデルは画期的な研究成果であり、今まで謎に包まれていた痒疹の発症機序の解明に繋がることが期待される。
その後共同研究シンポジウムで「薬疹データベースの構築」など3つの新規テーマが紹介されたあと、大会の目玉である西岡清先生の「接触皮膚炎の基礎と臨床:過去から未来へ」と西山茂夫先生の「皮膚血管炎の診方、考え方」の2つの特別講演「来し方行く末」があった。西岡先生は御自身が40年以上前から一貫して取り組んでこられた接触皮膚炎の抗原分子の研究について「ハプテンと表皮キャリアー蛋白」、「リポゾームを用いた人工膜へのクラス2抗原導入による免疫応答の解析」を中心にお話しされ、今年のNatureに掲載された、薬剤が結合するHLA関連ペプチドに関する最新の結果で締めくくられ、今後の接触皮膚炎研究の方向性を示して頂いた。また西岡先生は本学会の前身であるパッチテスト研究会を1975年に発足されたが、パッチテストのパイオニアである英国St Johns HospitalのCharls D. Calnan教授が今年4月ご逝去されたこともお話し頂いた。西山茂夫先生の座長は私が務めさせて頂いた。先生には北海道で夏休み中、学会に出席頂き、お元気なお姿を拝見し、明快な血管炎のお話しを拝聴することができた。講演後Hypersensitivity angitisの今日的な位置付けをお聞きしたが、本症はサルファ剤による過敏性の血管炎で、現在は見られないが、今後またあらたな形で登場してくるかもしれないとのお答えであった。お二人の先生の講演の共通点は、自身のデータを中心に講演を構成され、その中で時代・時代の他の研究成果や臨床分類との対比を紹介され、簡潔でありながら将来に繋がる客観的な視点が講演の背景にあることである。お二人の講演を聴くために午後を休診にして駆けつけられた先生も多かったとあとでお聞きしたが、感銘深い講演を頂いた西岡、西山先生に御礼を申し上げたい。
2日目は免疫中心のプログラムで構成され、平野俊夫大阪大学総長による招待講演「亜鉛シグナルと免疫アレルギー」を拝聴した。前日の西岡先生、西山先生同様、平野先生も総長として忙しい中、御自身のデータで肥満細胞の活性化における亜鉛シグナルの新たな知見を紹介して頂いた。
(招待講演での平野先生)
シンポジウムは「好塩基球と皮膚アレルギー疾患」、「発症機序に基づいた新規治療法の開発」があったが、小児皮膚科学会の講演があり、前橋に移動したため、参加ができず残念であった。最終日は臨床アレルギーがテーマで、私と横関教授が座長を務めた「汗と皮膚アレルギー」は朝早い開始にも拘わらず多数の先生に出席頂いた。最初に塩原教授からアトピー性皮膚炎患者における汗の役割、その考え方をお話し頂き、その後4人の先生方にアトピー性皮膚炎、コリン性蕁麻疹、掌蹠膿疱症、異汗性湿疹のお話を頂いた。特に東京医科歯科大学の西澤綾先生のOptical coherence tomography(OCT)を用いた発汗のダイナミックな映像は圧巻であった。研究を指導された佐藤貴浩防衛医大教授からは多汗症の患者では、わき上がるように汗が導管から分泌されると聞いていたが、最終的な汗の出口である汗孔の開閉機序や角層内での汗管の動態がどうなっているか、異汗性湿疹での金属の役割など今後の研究の発展を期待したい。
一般演題では、昨今OTCやジェネリック薬品の問題がクローズアップされているが、今回もクロタミトンが原因であったステロイド外用剤の接触皮膚炎など興味深い演題が多数出題されていた。茶の雫による経皮感作による食物アレルギーや牛肉や豚肉に含まれるgalactose-α-1,3-galactoseが獣肉アレルゲンとなるのみでなく分子標的薬であるセツキシマブとも交叉するなどあらたなアレルギーの登場が話題を集めた。個々の症例報告は貴重な発表が多く是非論文として記録に残して頂きたいと考える。大阪大学からは一般演題6題が発表され、荒瀬先生が「手湿疹患者の背景因子とバリア機能の解析」でポスター賞を受賞された。
最後に本学会の成功の陰でご尽力された東京医科歯科大学の先生にも深甚なる御礼を申し上げたい。
2012年7月13−15日(軽井沢)
平成24(2012)年7月18日掲載
第36回日本小児皮膚科学会
第36回日本小児皮膚科学会
片山一朗教授
会長:石川治 群馬大学皮膚科教授
会場:前橋テルサ
会期:2012年7月14−15日
第36回日本小児皮膚科学会は石川治教授を会頭として、前橋テルサで開催されたが、会場の確保の問題で日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会と同時開催になり、軽井沢と前橋を行き来された先生も多かった。
私は小児膠原病のシンポジウムで「小児膠原病、成人膠原病との違い: 皮膚科の立場からの見方のポイント」を講演させて頂いた。会場は小児科の先生が多かったが、特に今年87歳になられた川崎富作先生が最前列におられたのにはびっくりした。聞けばこの会には毎回参加されているそうで、頭が下がる思いがした。
最近の川崎先生(インターネットより)
講演は小児科のお二人がそれぞれ小児皮膚筋炎と小児SLEをお話しされ、私が小児膠原病に見られる皮膚症状とその治療を紹介した。特に小児のSLEは最近の特徴として予後良好の疾患となり、むしろ長期的な管理の重要性が強調されていた。逆に小児皮膚筋炎は我々皮膚科医の間では悪性腫瘍の合併などがなく比較的予後良好な疾患と考えられていたが、CADM140抗体陽性で急速な間質性肺炎の像を呈する患者が存在することを教えて頂いた。他科の先生の参加される学会は普段聞くことが出来ない貴重なトピックスがあり重要であることを再認識した学会であった。石川先生には最後まで参加できず、申し訳ない思いが残った。
2012年7月14−15日(群馬)
平成24(2012)年7月18日掲載
第28回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会
第28回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会
種村 篤
去る6月29日―30日、第28回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会「The Cutting Edge in Skin Cancer」が北海道大学形成外科教授 山本有平会長の元行われ、出席してきました。当科からは私の他に、横見明典助教・壽順久助教・それに現在日生病院皮膚科に勤務している岡田みどり先生に大学からの症例を発表してもらいました。私と壽Drは同じ研究セッションで、横見DrはPaget現象、岡田DrはMerkel細胞がんのそれぞれ希少な一例を発表し、大阪大学皮膚科で皮膚悪性腫瘍の臨床・研究共にしっかり取り組んでいることを少しばかりはお伝え出来たのではと思っています。
今回、第28回にして初めて形成外科の教授が主催される学術大会であったためか、例年より多くの形成外科の先生方が出席されていた印象を受けました。また、大会の一つの目玉として、第1日目にリンパ節廓清術に関する手術手技ビデオシンポジウムのセッションが設けられていました。平素皮膚悪性腫瘍の外科治療も行っている私にとって大変参考になるものであり、翌日からの診療に生かせる知識を得ることが出来ました。皮膚悪性腫瘍に対する治療に於いて手術などの外科療法の占めるウェイトが大きいこともあり、皮膚科と形成外科が時に診療のオーバーラップによる弊害を来す危険性があり得ます。一方、各々の科が共動・信頼し相補的に診療にあたる事が出来れば、医療の相乗効果を生み最終的に患者さんに還元することが可能となると考えます。当然、自分の専門分野の一つである皮膚悪性腫瘍分野を盛り上げるためには、後者の推進に努力すべきでしょう。自分に何ができるかを考え、同時に何が不足しているか把握し、それを周りの協力や自分自身の研鑚によりどのように補っていくかをプランニングし、outputとしてより良い医療の提供に結び付ければと考えています。
来年は、先日日本皮膚科学会理事長に就任されました島田眞路教授を会頭として、8月の山梨で開催予定です。臨床・研究両側面より今年を上回る演題発表を行えるよう心掛けていきたいと思います。
(今回は学会を通して写真撮影を行っておらず、残念ながら掲載出来ません)
2012年6月29~30日(札幌)
平成24(2012)年7月16日掲載
第28回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会
第28回皮膚悪性腫瘍学会 2012年6月29日‐30日
壽 順久
ぶきたの学会見聞録
札幌で行われた皮膚悪性腫瘍学会に行ってきました。参加者は、ボクと種村先生、横見先生、岡田先生(現在日生病院)で、ボクと種村先生は木曜日の夜から札幌入りしました。札幌という土地に惹かれて、なんとか演題を出した感じです。演題登録のころはまだ大学院生だったので、発表ネタも研究ネタを準備しました。皮膚悪性腫瘍とぺリオスチンの話をしてきました。発表時間は全員一律で4分で、討論は全員が終わった後に総合討論形式で、全部で5分というものであまり込み入った討論もできませんでした。僕と種村先生が発表した基礎研究セッションは、初日の金曜日朝9:00-9:25の5演題のみでやや寂しい気がしました。ほかにリンパ腫のセッションが少なかったり、これまでの皮膚悪性腫瘍学会とは異なった構成となっていました。ビデオによる手術手技の実際を流すセッションは新しい試みで非常に参考になりました。これは形成外科主催の特長が出た気がします。
札幌のもう一つの楽しみは、やはりメシでしょう。木曜日の夜22:30に札幌に着いて、種村先生と2人で、まずジンギスカン(だるま)を食いに行きました。翌日は、学会発表後、夕方からすすきのに繰り出して海鮮料理(磯金 漁業部 枝幸港)を堪能しました。締めはやはりラーメンで、みそラーメンを食べて帰ってきました(どこで食べたか忘れました)。いずれも非常においしく、磯金は、ボク、種村先生、横見先生の男3人で腹いっぱい飲んで食べても5000円弱とリーズナブルでした。
2012年6月29日‐30日 in札幌
平成24(2012)年7月9日掲載
第28回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会
第28回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会
横見明典
6/29~30、第28回日本皮膚悪性腫瘍学会学術大会「The Cutting Edge in Skin Cancer」に参加しました。札幌で涼しい印象で向かいましたが、大阪より湿度は低いですが夏日で大変暑い日でした。学会会場内も外の気温と同様に熱気こもる学会で大変勉強になりました。今回は主幹が北海道大学形成外科のため、形成外科の視点より皮膚悪性腫瘍に対する考えも学べ(基本的姿勢は同じですが)、今までになく新鮮でした。今回、大阪大学からは4演題報告させてもらい、私はPaget現象の演題を報告させてもらいました。同セッションでは形成外科医、皮膚科医共に活発な討論があり大変盛り上がりました。他のセッションでも多くの先生の発表を聞かしてもらい、皮膚悪性腫瘍に対する治療への情熱を伺うことができました。また、多くの先生方の今までの経歴、経験を聞かしてもらい、今ある自分自身、また今後目標とすべき悪性腫瘍専門医としての自分自身について考えることができた学会でした。学んだ多くのことを日常診療へフィードバックができるよう日々精進したいと思います。
(写真は札幌名物「スープカレー」)
2012年6月29~30日(札幌)
平成24(2012)年7月19日掲載
第8回加齢皮膚医学研究会、第60回日本皮膚科学会高知地方会
第8回加齢皮膚医学研究会、第60回日本皮膚科学会高知地方会
片山一朗教授
会長:佐野栄紀 高知大学皮膚科教授
会場:高知 総合安心センター、新阪急ホテル
会期:2012年7月6~7日
佐野栄紀高知大皮膚科教授が会長を務められた上記2学会に参加した。高知地方会は前任の小玉肇先生が岡山大学出身であり、高知県の先生以外に益田俊樹先生など岡山から出席された先生もおられた。9題中3題が開業の先生からの発表であり、それぞれが素晴らしい内容で、活発な討論とともに盛会であった。高知県西部ではイノシシの生肉を食べることがあり、腫瘤形成を生じたマンソン孤虫症の症例報告は興味深く拝聴した。佐野先生からは高知県は東西に広く、すべての地域を常勤医でカバーすることは困難で、医局の先生がそれぞれ数時間かけて診療に行かれると聞いていたが、発表された幡多県民病院は2人体制(?)で頑張られているとのことで、貴重な症例を詳細に検討された努力に敬意を表したい。
加齢皮膚医学研究会は神保孝一札幌医大名誉教授が組織された研究会でまだ衆知度が低く参加者もそれほど多くないと聞いていたが、今回6回目となるロート賞の受賞講演が五題あり、私には大変興味ある研究演題ばかりであった。大阪大の花房先生も今回「ケラチン5を一過性に発現し、加齢によって増加する新規Bリンパ球系細胞の機能解析」の研究で第6回ロート賞を受賞された。受賞講演は来年、もしくは都合のつく時必ず講演が義務づけられているとのことである。写真:神保先生と花房、杉田(産業医大)先生
加齢皮膚医学研究会は基本的には光皮膚老化研究が中心となっているようであるが、今回私が「加齢とアレルギー」、また富山大学の清水忠道教授が「全身性接触皮膚炎症候群」というタイトルで講演を行い、加齢に伴う金属アレルギー、薬疹、老人性紅皮症などの問題点が討論された。私自身、高齢者の汎発性湿疹の病態や高齢者のアトピー性皮膚炎が存在するかに興味があり、貴重なコメントを頂いた。もう一つの目玉は東京医科歯科大学の西村栄美教授が「毛髪のエイジングと幹細胞制御」というタイトルの特別講演で、色素細胞の幹細胞の維持にケラチノサイト幹細胞のTGFβ刺激が重要であり、幹細胞がアポトーシス、ネクロシース以外に分化というプロセスでNitchから消失して行くプロセスを素晴らしい蛍光画像で示され、白髪のみでなく色素異常症や、皮膚の発ガンにも関与している可能性を述べられ、多くの質疑応答があった。
懇親会後佐野先生のご好意で2次会場に席を移し、樽谷先生など同門の先生や花房先生、地元土佐高校出身の久米先生も交え、夜遅くまで臨床、研究、ワインの話で盛り上がった。
2日目は最後のシメで御馳走になったシジミラーメンの御陰で非常に快調で、市橋先生の「皮膚科医が果たすアンチエージング医学・医療」の講演を拝聴した後、龍馬空港に向かった。加齢皮膚医学研究会は退官された先生方もたくさん出席されており、世代を超えた討論ができるユニークな研究会で、興味ある方はぜひ出席されればと思う。また佐野先生が高知大学に赴任され、早くも5年が経過するが、シャッター通りとは縁遠い、子供から元気な高齢者まで人波で溢れる夜の高知の街で「医大の先生」の名前で通用する程有名になっておられ、心強い限りであった。お世話になった高知大学皮膚科と同門の先生に改めてお礼を申し上げる。
2012年7月6~7日 in 高知
平成24(2012)年7月10日掲載
10th Annual meeting of ISSCR
10th Annual meeting of ISSCR
井川 健
ISSCRはInternational Society for Stem Cell Researchという、幹細胞研究の世界では最も大きな学会でありまして、その年次総会がアジアで開催されるのは初めてだそうで、それはひとえに、幹細胞研究における近年の最大のスターである山中伸弥京大教授の存在があるためだろうといわれております。世間的な注目の高さを感じた出来事としては、急遽、学会のメモリアルセレモニーが企画され、天皇、皇后両陛下がご来臨されて行われるということがあり、これは非常に印象的なことでした。
日程は、2012年6月13日(水)に始まり16日(土)までという長丁場でしたが、一日の構成も9時から18時まで隙間なく予定が組まれており、18時から20時過ぎまではポスター会場での討論の時間に充てられるというかなり濃密なスケジュールでした。
若手研究者の育成、交流には特に力を入れているようでした。たくさんのtravel grantが用意されておりましたし、また、20人程度の著名な研究者が一人当たり10人程度の参加者と円卓で食事をしながらお話しをするという形のMeet the Expert Lunchが期間中2日にわたって行われたり、21時スタートの若手(と思う人もOK)研究者用のエンドレスのパーティーが開かれたりしておりました。どれも自由参加で早いもの順(予約システムあり)でした。よいシステムだなと思いました。
日本の学会にみられる懇親会のようなものはありませんで、毎晩18時すぎになると皆がポスター会場にあらわれて、そこではサンドイッチと飲み物程度のものが用意され、21時ころまでこころゆくまでの討論がおこなわれる、というスタイルでした。
さて、2012年6月13日、おなじみのパシフィコ横浜を会場として学会がスタートしました。初日の一発目にもかかわらず、あの広い国立大ホールが満員にちかくなるほどの人を集めてのPlenary Iです。学会の目玉であることは間違いなく、選ばれたスピーカーは4人。Rudolf Jaenisch、Austin Smith、John Gurdon、高橋和利の各先生でした。高橋先生は山中先生の代理という形だったそうですが、十分スターの風格でした。その中でも前2者は、それぞれWhitehead Institute (MIT)、Sanger Institute (Cambridge)と欧米の主要なStem cell研究拠点のリーダーであり、彼らが何を話すのかを皆が大いなる興味をもって聞いているという状況でした。
4人の先生のお話は、もちろん、それぞれに素晴らしいものでしたが(理解できないものもたくさんありましたが)、特にJaenisch先生の話では、これからこの分野の研究を進める上で非常に重要な考え方が披露されており、うわさにたがわぬ内容でとても満足なものでした。
学会全体で口演はおよそ150題ほどでしたが、演題名がそのままNatureやCellなどでみかけたものであったり、今週か来週かのそれらの雑誌に掲載されます、といったようなものばかりでレベルの高さをひしひしと感じました。その中から自分の興味、これからの仕事に関連するような新しい技術のようなものに関する演題にしぼって会場をわたり歩きましたが、完全に理解するところまではなかなか難しく、空いた時間は聞いた内容に関する勉強や復習をしながらのものとなりました。
ポスターの方は2パートにわかれましたが、全部でおよそ1800題という膨大な数でした。顔をみながら率直にやりとりができるということもあり、参加者の大部分の本番はこっちだろうと思われました。毎夕、混雑した地下鉄の中かというくらい大勢の参加者による熱心な討論の風景は、そのままこの学会の勢いを表しており、非常に知的興奮をおぼえたことでした。自分の仕事にも興味を持ってくれる人がおり、いくつかやり取りをしたりして、楽しい時間を過ごしました。
夜は、場所が横浜ということもあり、中華街でおいしいご飯でもと思っていたのですが、学会場を出るのが毎日21時くらいになってしまうために、お店の大部分が閉店となっており、そのあたりは残念な結果となりました。
今回、ISSCRの年次総会が日本で開催されるというチャンスに、久々に心躍る気分で学会に参加してきましたが、噂にたがわず素晴らしい学会でありました。若手の先生には、いろいろな学会に積極的に参加して、世界の広さを実感すると同時に、世の中に存在する自分たち以外の天才たちと交流する機会をぜひとも経験してほしいと思ったことでした。
2012/06/13-2012/06/16 in横浜
平成24(2012)年7月3日掲載
2nd EASTERN ASIA DERMATOLOGY CONGRESS
2nd EASTERN ASIA DERMATOLOGY CONGRESS
糸井沙織
2012年6月13日から15日まで,中国北京にて2nd Eastern Asia Dermatology Congress(EADC)が開催されました。今回,片山先生・谷先生・室田先生・山岡先生・花房先生・楊さんと一緒に参加させて頂きました。日本・韓国・中国が集結した学会だったので,たくさんの新しい知識を吸収しようと意気込んでいったものの,oral sessionでは英語のlisteningが難しく,最前列でスライドの写真や文字を凝視しながら,聞き取れた単語を並べ合わせて必死に理解しようと頑張りました。せっかくかぶりつきの席に座ったので,Oral sessionでご発表された室田先生・谷先生・山岡先生の勇姿をばっちりカメラに納めました。Poster sessionでは乾癬患者に関して,cytokeratin19・integrinα6/β1発現の増加が発表されていました。どんどん複雑になっていく病態を把握するためにしっかり勉強せねば・・・と気合いが入りました。学会最終日の夜は,釣魚台(ちょうぎょだい)国賓館で開催されたサテライトシンポジウムに参加しました(写真:学会最終日のサテライトシンポジウム,釣魚台国賓館にて)。この会場は,800年の歴史があり,最近では「六カ国協議」を開催するなど,天皇皇后両陛下・クリントン大統領や各国の首相・国賓等800名を超える国賓を迎えてきたゲストハウスでもあります。乾癬治療の生物学的製剤使用後調査の講演を聞いた後は,美味しい中華料理と紹興酒に舌鼓を打ち,VIPな気分を味わいました。中国へ行くのは初めてだったのですが,中国出身の楊さんが世界遺産,美味しい料理,カンフー鑑賞,気持ちいいマッサージ等,充実した観光コーディネートをして下さり,心身ともにリフレッシュさせて頂きました。普段の日常は片山先生をはじめ,医局の皆さんとゆっくり談笑する時間がないので,学会発表旅行の醍醐味だなと感じています。今回の発表に際して御指導くださった片山先生,種村先生をはじめ,このような貴重な機会を与えて下さり,この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
阪大皮膚科のカンフーの達人たち(6人います)
平成24(2012)年6月27日掲載
2nd EASTERN ASIA DERMATOLOGY CONGRESS
2nd EASTERN ASIA DERMATOLOGY CONGRESS
山岡俊文
6月13日から6月15日まで、中国北京で開催された第2回東アジア皮膚科学会に片山教授はじめ計7名で参加してきました。学会場はかの有名なオリンピックスタジアム(通称:鳥の巣)にほど近い場所で、近くには水泳の北島選手が金メダルを獲得した競泳場もありました。空港や市内からは少し離れた場所でしたが、周辺はオリンピック公園が整備され4年前の感動が今にもよみがえってきました。
僕自身、初めての訪中で不安もありましたが、片言の中国語と、笑顔という最大の武器で何とかなると心に言い聞かせ日本を後にしました。しかし実際には、中国から大阪大学に御留学されている楊先生と行動を共にしたため、街で笑いがあれば「なんでなんで」と間髪を容れず聞いていた気がします。
北京には万里の長城、故宮、天安門広場と数多くの観光地があり、万里の長城に関して言えば、総延長約6000kmの世界最大の城壁で、衛星写真でも見ることができるとのことで楽しみにしていましたが、ほんの数分前に営業が終了したことを聞かされ、後ろ髪を引かれる思いでその場を後にしました。また食事に関してですが、餃子の王将が本場の中華料理であると勘違いしていた僕にとって、一口目本当にこれは中華料理かと衝撃を受けました。
学会見聞録のはずが、中国見聞録になってしまいふと我に返りました。学会の感想についても触れておきます。多数のオーラル・ポスター発表がなされていましたが、その中で抗セントロメア抗体陽性のシェーグレン症候群に合併した指尖潰瘍について大変興味深く拝見させていただきました。
国際学会に参加すると、しばしば英会話力不足を痛感します。しかし学会から戻ってくると、何となく英語アレルギーから解き放たれた気分で英論文を読める気がします。それは学会前に多数の英論文を読むためだと思いますが、回数を重ねればさらに英語アレルギーがなくなり、そして英会話力が向上することを信じてこれからも国際学会に参加していきたいと思います。このような機会の与えていただいた片山教授、大阪大学皮膚科の先生方、ラボの皆様に感謝しつつ筆をおきたいと思います。
平成24(2012)年6月21日掲載
2nd EASTERN ASIA DERMATOLOGY CONGRESS
2nd EASTERN ASIA DERMATOLOGY CONGRESS
皮膚科教授 片山一朗
President: Jianzhong Zhang(張建中)
Professor, Department of Dermatology
Peking University People’s Hospital
Venue: China National Convention Center, Beijing
Date: 2012. June 13-15
6.14日 招待会での張教授の挨拶風景
第2回東アジア皮膚科学会に参加した。会頭の張教授は膠原病が専門で福島医大に留学されていた時以来の友人であり,昨年のWCDで事務局長を努められた韓国延生大学のSoo-Chen Kim教授や四川大学のRan-Yang Ping教授など日本に留学されていた時知り合った先生もたくさん参加されていた。この会は以前からあった日韓皮膚科学会と日中皮膚科学会が発展的に合同化した学会で2010年、第一回大会が 古江増隆九大教授を会頭として博多で開催され、今回が2回目になる。アジア地域の合同学会はAsian Dermatological Congress (アジア全体), Regional Meeting of Dermatology(環太平洋地域)など他にもいくつかあるが、今大会には1,500人近い参加者があり、日本からは200人前後の参加と100題前後の発表があったと会頭の張教授が報告されていた。次回は2014年、韓国がHostとなり、済州島で開催される。
私はアトピー生皮膚炎のセミナーで張教授とともにドイツのWollenberg, 韓国のKim先生の座長を、色素細胞のセッションで中国Gao教授と座長を務めさせていただいた。アトピー性皮膚炎のセッションではタクロリムスのProactive therapyがテーマで、この療法の登場により患者のQOLのみでなく、医療経済的にみても大きな改善効果があること、週一回の外用でも十分効果があることが報告され注目された。なお張教授より中国ではアトピー性皮膚炎の診断が必ずしも正確に診断されておらず、あるいはアトピー性皮膚炎自体が少なく湿疹と言う病名で片付けられ、十分な治療が受けられない患者が多いとのコメントがあった。Dr. Wollenbergからは中国はまだTh1優位の状態で今後患者が増加するだろうとのコメントがあった。実際2年前上海で小児科の先生方と話しをする機会があったが、彼らもアトピー性皮膚炎という言葉は使用せず、乳児・小児湿疹という病名と,その原因は食物アレルギーであると言っていた。かつて日本でも同じ議論があったことを思い出したが、内因性と外因性アトピーを考える時、地域差や工業化の程度なども考慮する必要があるかもしれないと感じた。
色素細胞関連では中国からCOX2阻害薬がメラニン産生を制御するとの興味深いコメントがあったが、演者が代理の方で十分なコメントのなかったのが残念であった。阪大からは室田、谷、山岡先生がORALに選ばれたが皆さんうまく発表され、質疑応答も活発であった。花房、楊、糸井先生はポスター発表された。阪大皮膚科からの海外での発表も最近は増加し、皆さんプレゼンがうまくなっており、何よりである。また海外発表の大きなメリットとして発表前に十分文献的考察をしておけば、そのまま英文論文として投稿できることで、阪大の論文発表の増加に貢献している。自分で経験した症例、発見した知見、生命現象を英語で論文として報告することは大学人の義務であることを学生や医局の先生にも言っているが、その成果がでてきたかと考えている。
北京観光は到着した日にそのまま万里の長城見物に出かけたが、現地に到着したのがケーブルカーの最終便時間を一分過ぎており、楊さんの懸命の交渉も実らず、はるか山頂の長城を見上げるのみで終わってしまった。ちなみに無事(?)観光された先生の話では長城はラッシュアワーなみのものすごい人であふれかえり、K大学の先生は50m近く崖を滑り落ち、危うく大けがを免れたとのことであった。
最終日夜は国賓招待に使われる釣魚台でJapan Nightが企画され、会場では見かけなかった先生も多く見かけた、庭園は蘇州の山水をモチーフに造られたそうでライトアップが大変美しかった。一般の観光客は入園不可で、中国側と交渉していただいた岩月会頭の御尽力とあとで聞いた。北京は10数年ぶりの再訪だったが、町並みが驚くほどきれいになり、街中に溢れていた自転車も姿を消していた。以前の公務員体質丸出しのホテルや商店の店員や受付の対応が大きく改善し、むしろ地方からでてきたばかりのようなスタッフが多く、好感がもてた。
次回の済州島の第3回大会を楽しみに会場をあとにした。
2012年6月
第111回日本皮膚科学会総会
第111回日本皮膚科学会総会
大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗
会頭 大塚藤男 筑波大学教授
会場 国立京都国際会議場
会期 2012年6月6月1日〜3日
テーマ —進化する皮膚科:知と技を磨く
第111回日本皮膚科学会総会が6月1日から6月3日までの3日間、京都国際会議場で開催された。会頭の大塚藤夫筑波大教授、事務局長の川内先生には御礼申し上げると共に、大変お疲れさまでした。私も109回総会を大阪で開催しましたが、会場が遠くはなれた京都ということで、準備など本当に大変だったかと思います。昨年の110回大会が東北大震災のために中止となったせいか、今年は5、000人近い参加者があったそうで、何よりでした。また最終日午後には医療支援のボランテイアを担当された先生方の講演があり、このような未曾有の災害時に皮膚科医として何がどのようにできるか、何を記録として残しておくべきかを考えさせられた。最後に統括・指揮された飯島正文前理事長より挨拶と感謝状が演者に贈られた。
学術大会は大塚会頭の会頭講演から開始された。20分という短時間で筑波大学の歩みを紹介された中で、初代教授の上野賢一先生がこの大会への参加を楽しみにしておられたが、4月4日に逝去されたことをお話しされた。上野先生の小皮膚科学書(通称:マイナーデルマ)で勉強した我々の世代には、いわゆる記載皮膚科学に代表されるドイツ皮膚科学の時代が終わったという感慨が残った。
その後、最終日まで、スポンサードセミナー、教育講演や特別講演などを聞いた。最も印象に残ったのは東大形成外科の光嶋教授のSuper microsurgeryの講演であった。最初のスライドから驚くようなプレゼンであったが世界の形成外科をリードされる「神の手」の凄さを初めて目にした私には、あらためて皮膚科医がやるべき仕事が何であるかを考えさせられた講演であった。またコロラド大のRoop教授のiPS細胞を用いた先天性表皮水疱症の治療の可能性に関する講演は今後の難治性皮膚疾患の新たな可能性を示唆するものだった。阪大でも7月から玉井教授の骨髄細胞を用いた新たな治療が開始されるが、今迄、全く治療法のなかった遺伝性皮膚疾患を治せる時代に皮膚科医であることを感謝している。別の教育講演で教室の金田真理先生が講演された結節性硬化症のAngiofibromaの外用療法も同じレベルで世界に発信出来る研究であることを参加した先生方から聞き、あらためて金田先生の長年の努力に敬意を表したい。
最終日、塩原先生の女性医師問題のセッションで、塩原先生は講演の最初にJohn F Kennedyの有名な大統領就任演説「ask not what your country can do for you
– ask what you can do for your country.」を紹介された。Countryは学会、教室、家族、指導者、同僚、後輩など様々な言葉に置き換えられるが、大事なのは医師を目指そうと決意した時の気持ちを持ち続けることであることを強調された。講演後の質疑応答での一人医長の女性医師の発言は逆に研究をしたくてもできない彼女の悔しさが身にしみた。我々の世代の責任として一生続けられる研究テーマをいかにして彼らに提供できるか、見つけた人の研究をいかにして支援出来るかを考えさせられた。塩原先生の行われたアンケートから浮かび上がった問題点として、指導者として残れる女性医師のサポート体制の確立が何より重要であるという結論にも同意したい。
教育講演は毎年同じテーマを行うことで、複数年の参加で皮膚科の進歩をカバーできるとの主旨で開始されたが、今後もう少し余裕を持ったプログラムとし、質疑応答の時間を充分にとる、専門医を対象としたより高度な内容のプログラムを提供して欲しいとの声も聞かれた。拝聴した講演の中では、2日目朝のMSでMRIの造影剤に使用するガドリニウムによるNephrogenic systemic fibrosis(NSF)が有益であった。名前は知っていたが、実際の皮膚症状や使用基準など参考になった。
一般演題はすべてポスター発表であり、今回からデジタルポスターが採用されたが、会場が少し離れており,やや不便であった。また企業展示も例年に比較してやや寂しい印象であった。ポスター賞はその多くが症例集積研究で,多忙な中での長年の地道なご努力の成果が報われたような仕事であり、是非英文化して世界にその成果を発信して頂きたい。最後になるが今回マルホ賞を受賞された斎田先生のダーモスコピーの一連の仕事は、先生自身お話されたように、「当初誰も注目を払わない、あるいは猛批判を浴びた研究が現在は教科書に採用されるようになった」ことにあらためて先生に拍手を送りたい。
2012年6月
第24回日本アレルギー学会春季臨床大会参加記2
第24回日本アレルギー学会春季臨床大会参加記2
小野慧美
平成24年度新入局員の小野慧美です。
この度、大阪大学の皮膚科学教室に入局し、この4月から大阪大学医学部附属病院にて後期研修をさせていただいています。
今回、平成24年5月10日から12日までの第24回日本アレルギー学会春季臨床大会が大阪国際会議場で開催され、そこで発表する機会を与えていただきました。
1日目に口頭での発表、2日目にポスター発表をさせていただきました。
皮膚科医として、アレルギー学会という大きな学会で発表させていただくのは初めての機会だったのでとても緊張しましたが、指導医の先生の熱心なご指導のもと、無事に発表させていただくことができました。思っていた以上に会場に先生方が多く集まっておられて、どんな質問がとんでくるのかヒヤヒヤしてしまいました。
発表が1日目の午前中だったこともあり、発表が終わったあとは、落ち着いていろいろな講演を聞かせていただくことができました。
2日目のポスター発表では、数人の先生方に質問していただきました。どの先生も私のつたない回答を熱心に聞いてくださり、もっと自分自身でも勉強が必要だと実感しました。
講演では、私は皮膚科1年目とういうこともあり、まだまだ勉強することが沢山あるなか、教育講演を中心にみさせていただきましたが、日々の臨床での医療に活用できるようなことも多くとても勉強になりました。
2日目には懇親会もあり、普段お会いできないような先生方とのお話もできてとても楽しかったです。
学会での発表は緊張することも多いですが、自分の発表するテーマについて集中的に勉強することで、その疾患への理解が深まりました。
今回学会で発表させていただくことで、皮膚科医として一歩を踏み出せたような感覚でした。また、次回7月の皮膚アレルギー学会でも発表させていただくことになり、今回の反省を心にとめて、しっかり発表させていただきたいと思います。
平成24(2012)年6月15日掲載
第24回日本アレルギー学会春季臨床大会参加記1
第24回日本アレルギー学会春季臨床大会参加記1
松井佐起
2012年5月10日から12日まで、大阪国際会議場で日本アレルギー学会春季大会が行われました。アレルギー学会は皮膚科の先生方だけでなく、内科、小児科、耳鼻科、眼科などいろいろな科の先生方のお話を伺うことができ、新鮮な発見があるので毎回、楽しみにしている学会です。今回も受け付け開始直後から多くの先生方、メディカルパートナーの方々で会場は賑わっていました。
スタッフとしての参加だったので、不測の事態に対応するよう割り当てられた自分の担当部署があったのですが、気にしていたのは初めのうちだけで、面白い演題、講演ばかりで、気がつけばプログラムに書き込みをしながらあちらこちら、自由に会場を渡り歩かせていただいていました。
12日の朝一番のセッションで発表を終えたあと、すこし気が抜けて学会本部にもどったところ、室田事務局長からGideon Lack先生と大阪観光に行ってもてなしてくるように、との指令!!修士2年目の加藤さんと保健学科4年生の油谷さんと一緒に大阪城をご案内させていただきました。ラッキーなことに迎えにきてくださったドライバーさんが大阪の観光ガイドも兼任される方で、大阪城の由来や歴史について細かく教えてくださいました。関西出身の私たちもはじめて聞くようなお話でLack先生にどれだけお伝えできたかは疑問ですが、天守閣にのぼり、みんなで兜をかぶって戦国武将をきどって記念撮影をしました。
大阪といえば、ということで、日本最古の官営のお寺、四天王寺をそとから眺めて日本の宗教観についても興味を持っていただいたようです。やはり私の英語力では八百万の神様について説明するのは難しかったですが。
短い時間でしたが、今回の学会のトレードマークにもなっているたこ焼きと、加藤さんお勧めのみたらし団子をとても気に入っていただき、楽しんでいただけたのではないかと思います。
その後もお疲れのご様子でしたが、打ち上げに参加していただき、アレルギーについてあつく語っていただきました。特に、御講演でもお話されていましたが、免疫寛容の観点から、食物アレルギーの原因物質も乳児期早期から経口摂取してよいというお話は印象的でした。
今回の学会は幅広い分野のお話を楽しめただけでなく、英会話教室の生徒のようにたどたどしい私の英語にお付き合いいただきながらLack先生とめぐった大阪城、四天王寺など素敵な思い出がつまった学会になりました。
平成24(2012)年5月24日掲載
第24回日本アレルギー学会春季臨床大会
第24回日本アレルギー学会春季臨床大会
「事務局長通信:バックステージより愛をこめて」
事務局長 室田浩之
本大会で事務局長を担当しました室田です。このような大きな大会の運営には不慣れなため何かと不備もあったかと存じます。皆様のご協力のおかげで無事盛会に終了することができました。この場をお借りして御礼申し上げます。
片山教授より大会内容の紹介がございましたが、私よりいくつか大会の裏エピソードをご紹介させていただきます。
ロゴマーク:たこ焼きと肥満細胞の融合はこうして生まれた
片山先生「ロゴマークを作ろう。考えてみてくれないか?」
室田「え、私がですか?」
奇妙なロゴマーク作成秘話はこのような片山先生からのお話で立ち上がりました。片山先生はかねてより私が紙カルテに描く皮膚病変の絵やプレゼンテーションに用いる自作のイラストを評価してくださり、私の行く末として場末の似顔絵描きとしてやっていけるだろうという将来の展望までいただいておりました。そのような経緯もあり、当初は大阪大学のマスコット「ワニ博士」や地域の「ゆるキャラ」などの利用を考えましたが、全くのオリジナル作成を手がけることにいたしました。片山先生からはさらに具体的に「キャラが手旗信号でナビゲーションする」という指示をいただきました。
大阪は「千成瓢箪(ひょうたん)」のイメージがあります。まず瓢箪の上のふくらみに顔を描いてみたところ意外にかわいいものとなりました。しかしアレルギーと何の関係もありません。アレルギーといえば肥満細胞です。「そうだ!瓢箪の2つのふくらみを肥満細胞にすればどうだろう?」そこで2つのふくらみを肥満細胞らしく描き、2つとも顔を入れました。かわいいのですが今度は瓢箪に見えないのです。奇跡はここで起こりました。「瓢箪を諦めてふくらみの1つをたこ焼きにしてみよう・・」。この機転があのロゴマークを生み出しました。次に手旗信号のメッセージです。手旗信号で上げている旗には“tolerance(寛容)”、下げている旗には“recurrence (再発)”という思いを込めました。いかがでしたでしょうか?
ポスターには大阪の古地図
大阪は運河が発達しており、古地図に記された水脈はまるで脈管のようです。山下和正様のご協力により、所蔵されておられる古地図をポスターに使うことができました。この場をお借りして御礼申し上げます。
なぜホームページに「太陽の塔」の「未来の太陽」が?
ホームページの左下に「未来の太陽」が描かれているのにお気づきの方がいらっしゃったかと思います。私どもの教室の窓の外には「太陽の塔」が見え、その風景がホームページのバナーになっています。「太陽の塔」の裏には黒い太陽「過去の太陽」があり、大阪大学の方に向いているのでなんとなくソワソワしてしまいます。でも「太陽の塔」は未来を向いていると言われています。つまり私達は同じ方向、「未来」を向いているのです。この意味において「太陽の塔」は“未来にナビゲーションする羅針盤”とも言えましょう。 「未来の太陽」を是非使わせていただきたいという申し出に岡本太郎記念館の許可をいただき念願がかないました。関係各位に改めて御礼申し上げます。
海外からの招請講師
1) 雲の上の存在!?Zuraw教授と片山教授
ルビー先生のご尽力によりWAO-JSA合同のレクチャーが企画され、Bruce L Zuraw教授にHAEについてご講演いただきました。レクチャーの前に打ち合わせ室でZuraw教授と片山教授がお話されていたのですがお二人とも身長が2メートルクラスと高く、会話を見上げる私にとってお二人はまさに雲の上の存在でした。
2) 大変な親日家 Lack教授
今回、ピーナッツアレルギーが経皮感作されることを発表され世界的な注目を集めたGideon Lack教授が初来日されました。日曜日朝6時半頃、私はスタッフ室に向かっていくエレベーターの中で疲れたLack先生に偶然お会いしました。フライトが9時間遅れたために前の日の深夜に到着されたとの事。翌日早朝には日本を去るため是非日本の文化を知りたいとリクエストがございました。医局スタッフが「たこ焼き」と「みたらし団子」を振る舞ったところとても喜ばれ、「みたらし」という言葉を真剣に覚えてらっしゃいました。さらにおどろいたのは初来日でいらっしゃるにも関わらずお箸を上手に使われる事です。実は大変な親日家でロンドンではかなりの頻度で和食を楽しんでいらっしゃるそうです。大会終了後も遅くまで残られ日本の文化やアレルギーについて議論しました。次の朝大丈夫かなと心配したところ「飛行機で寝るからいいんだ」とおっしゃいました。本当にパワフルな方でした。
2012年5月 室田浩之
第24回日本アレルギー学会春季臨床大会を終えて
第24回日本アレルギー学会春季臨床大会を終えて
学会テーマ
「臨床アレルギー学の新たな座標軸:Navigation 2012」
大阪大学教授 片山一朗
(第24回日本アレルギー学会春季臨床大会: 会長)
2012年度の第24回日本アレルギー学会春季臨床大会を5月12日(土)~13日(日)の2日間、大阪国際会議場にて開催させて頂きました。会期中3,800人を超す方の参加があり、大変な盛会裡のうちに無事大会を終了できたことを会頭として、会員の皆様方、協賛を賜りました企業の方々、コンベンション事務の方々、大阪大学皮膚科同門会ならびに教室員一同に深く感謝申し上げます。また会期中、ご講演、ご司会の労を賜った先生にも心より深謝の意を表します。2015年度からはアレルギー学会は年一回の開催となる予定で、その意味でも我々にとって、感慨深い学会となりました。
日本アレルギー学会が大阪で開催されるのは第11回春季臨床大会以来13年振り、また大阪国際会議場での開催は初めてとのことです。大会は幸い天候にも恵まれ、初日も早朝から多くの先生が登録をされ、最終的には3,800人を越す先生に参加頂きました。
日本アレルギー学会春季臨床大会は2010年の第22回春季臨床大会よりの3回の春季大会において新しい時代の大会の在り方を問うスタイルで開催することとなり、今回の24回大会はその取り纏めを行う重要な大会となりました。
私自身、国民から期待されるアレルギー診療を提供していくためには医師、看護師、薬剤師、臨床栄養士など関連するメデイカルパートナーの連携による横断的なアレルギー診療の推進、その成果の国民への還元とアピール、よりアクセスしやすく、役に立つ情報開示が必要と考えプログラム委員の先生共々、臨床分野と教育に重点を置くこと、メデイカルパートナーとの連携や市民、社会への貢献をより強く打ち出せる企画をプログラムに反映させて頂きました。特に第22回より開始されたテーマ館では他科の診療技術や典型例の診断と治療、管理法などを、ハンズオンセミナーをとおして学べる機会を提供して頂き、大変好評だったと聞いております。
1会長講演
初日の午後20分間の枠で「生体の恒常性とアレルギー」をテーマに21世紀に生きる我々がどのように生体のホメオスタシスを維持していくか、その破綻によるアレルギー疾患の発症をいかにして予防しうるかを教室の研究を中心にお話しさせて頂きました。恩師である西岡清東京医科歯科大学名誉教授に座長の労をとって頂き、また岸本忠三大阪大学前総長を始め多くの先生に私の考えるアレルギー診療や研究の視点を聞いて頂くことができ、私自身、満足のいく会長講演でした。
※講演スライドは→こちらでご覧下さい
2会長企画プログラム
「総合アレルギー医の育成」は2日の午前に開催されました。座長の宮本昭正前アレルギー学会理事長より、専門医制度の導入時の厚生省との交渉の苦労話や、その中で厚生省より意見のあった専門医制度の延長線上に位置づけられる総合アレルギー医の育成の意義について興味深いお話しがありました。秋山一男理事長は日本と海外における専門医制度の現状をお話しになり、今後Total allergistとOrgan specific allergistの枠組みで制度を整えていく必要があるとお話しされました。また西間三馨前理事長は基盤診療科の専門医が総合アレルギー医として複数のアレルギー疾患を合併する患者を診療でき、次世代のアレルギー専門医の育成、生涯教育などを提供できるアレルギーセンターの設立やEBMに基づいたガイドラインを整備していくことも重要であり、総合アレルギー医の資格を得るための指針や研修制度の具体案を提示し,論議を深めていく必要があることをお話しされました。現在専門医認定機構が進めている第三者による認定、評価の方向性と現実の専門医、総合医の教育をどう制度化し、行政にアピールしていくかが重要と考えます。
3特別講演
8つのテーマで海外、日本の著名な研究者に講演頂きました。近年問題となっている食物抗原の経皮感作に関しては世界で最初に報告をされた英国のSt.Mary’s Hospital, London の Gideon Lack先生に講演頂けることができました。来日は初めてとのことで、フライトのトラブルで大阪への到着が9時間近く遅れ、大変心配しましたが、2日目のモーニングセミナーの「牛乳アレルギーの新たな予防戦略」共々疲れも見せずに多くの聴衆を前に講演されました。先生には閉会式後の医局打ち上げ会にも参加して頂き、教室の若い先生とワインを楽しみながら遅くまで歓談頂きました。また花粉抗原が免疫原性を持つのみでなく、ダニ抗原などの抗体産生も促進させることを世界に先駆けて報告された順天堂大学の高井敏朗先生の講演や大阪大学の熊ノ郷淳先生の「セマフォリンによる免疫制御」、竹田潔先生による「自然免疫と消化管疾患」など最新の基礎免疫学の研究成果をお話し頂きました。
4教育講演
第24回日本アレルギー学会春季臨床大会 15講演を企画させて頂きました。京都大学の渡邉武先生には「2次免疫組織の人工的構築」というタイトルで現在急速に進展している再生学的な手法によるリンパ節の構築に関する最新の研究成果をお話し頂き、立ち見の出る盛況だったそうです。兵庫医大学長の中西憲司先生を含め皆さん岸本忠三先生の愛弟子で、大阪大学の免疫学研究の凄さを会員に示して頂けたと思います。大阪大学の関係としては感染制御部教授の朝野和典先生に「感染症とアレルギーの新しい視点—Newtrophil Extracellular Traps」という新しい概念を、微生物研究所教授の大石和徳先生に細菌ワクチンの臨床免疫学に関するホットな話題を提供頂きました。このほか会長企画として琉球大学教授の益崎裕章先生には「メタボリックシンドローム病態解明の進歩と免疫」、徳島大学疾患酵素学研究センター教授の松本満先生には「Aireと自己免疫疾患」など臨床、基礎免疫学の最先端の研究成果を講演頂きました。
5招請講演
海外からのゲストスピーカーは以下の4名の先生に講演をお願いいたしました。特に抗痙攣剤であるカルバマゼピンによる重症の薬剤アレルギーが台湾人でHLA-B*1502と強く相関すること、HLA-B*1502を持つ患者でカルバマゼピンを内服させなかった群で薬疹が一例も生じなかったことを報告された台湾のChung先生のご講演は先生自身、非常にActiveな皮膚科医であり、圧倒的な迫力がありました。
● Guideline of urticaria and allergic rhinoconjunctivitis
Torsten Zuberbier (Charité – Universitätsmedizin Berlin Gernmany)
● Atopic Dermatiti:Update 2012
Jean Piere Alan (University of Bonn Medical Center Germany)
● Eosinophils: multifaceted biological properties and roles in health and disease.
Hirohito Kita (Mayo Clinic USA )
● Drug hypersensitivity: pharmacogenetics and clinical syndromes.
Chung WH (Chang Gung University College of Medicine Taiwan)
6 WAO-JSA合同シンポジウム
世界アレルギー学会と日本アレルギー学会の合同シンポジウムではBruce L Zuraw (カリフォルニア大教授)の「Hereditary ANgioedema」の講演を頂きました。
7シンポジウム
27のシンポジウムが開催されました。この中で看護師、薬剤師、栄養士などのメデイカルパートナーを対象とした4プログラムを開催し、多くの看護師、薬剤師の先生に参加頂きました。特に「経皮感作とアレルギー」は現在問題となっている加水分解小麦含有石鹸の健康被害の診断ガイドラインや実態調査の結果に関しても講演頂き、講演会場に入りきれない方が廊下にはみ出して聴講する熱気に溢れたシンポジウムとなりました。
8ミニシンポジウム
一般演題よりテーマ別に演題を選び、8ミニシンポジウムとして185演題が発表されました。
9一般演題
209演題がポスターとして発表して頂きましたが、日曜午後にもかかわらず3階のポスター会場は参加者で溢れかえり、活発な討論が行われました。今回は特に若い先生の参加が目だった学会でした。
10 テーマ館セミナー
22回の春季臨床大会より3回の予定で企業によるテーマ館セミナーが開催され、24回大会では9企業が参加しました。
11 教育セミナー
テーマ館でのセミナーを含め、37セミナー(ハンズオンセミナーを含む)が開催されました。特に皮膚のアレルギー検査の施行法とその判定法、保湿剤や化粧品の選び方と外用法、喘息患者でのピークフローの測定法、アナフィラキシーショックへのアドレナリン注射など実際にどのように行うかもセミナーで行われ、大変好評でした。ただ今回の参加者数が予想を遙かに越え、ランチが売り切れになりご迷惑をおかけしました。
12市民公開講座
第24回日本アレルギー学会春季臨床大会市民公開講座 大会前日午後に行われた市民公開講座「子供から大人まで~食物アレルギーの正しい知識と対策を学ぼう!」は初めての試みとしてライブ中継も行われ、質疑応答も活発に行われました。
その他GINA世界喘息デー2012/日本、専門医教育セミナーが開催されました
今回、大会長を務めさせて頂きましたが。残念ながら皮膚科医の参加が他科に比べて少なく、今後若い皮膚科医の先生にもアレルギー学の面白さを伝える啓蒙活動を積極的に行うことの重要さを再認識した大会でした。あらためて関係者の皆様に御礼を申し上げます。
その他GINA世界喘息デー2012/日本、専門医教育セミナーが開催されました
今回、大会長を務めさせて頂きましたが。残念ながら皮膚科医の参加が他科に比べて少なく、今後若い皮膚科医の先生にもアレルギー学の面白さを伝える啓蒙活動を積極的に行うことの重要さを再認識した大会でした。あらためて関係者の皆様に御礼を申し上げます。
本部スタッフ(阪大皮膚科)
各セッションの参加人数
日程 | プログラム | 人数 | テーマ |
5月11日(金) | 市民公開講座(WEBを省く) | 40 | ~子供から大人まで~食物アレルギーの正しい知識と対策を学ぼう! |
5月12日(土) | 開会式 | 80 | |
5月12日(土) | 特別講演1 | 140 | Th2アジュバントとしてのアレルゲン:バリアと自然免疫系に対する作用 |
5月12日(土) | 特別講演2 | 170 | アレルギーならびに生体防御における好塩基球の新たな役割 |
5月12日(土) | 招請講演1 | 180 | 好酸球とAlarminの気道炎症における役割 |
5月12日(土) | 招請講演2 | 130 | Updating the etiology of atopic dermatitis |
5月12日(土) | 会長講演 | 330 | 生体の恒常性とアレルギー |
5月12日(土) | 特別講演3 | 330 | 自然免疫と消化管疾患 |
5月12日(土) | 特別講演4 | 130 | セマフォリンによる免疫制御-疾患への関与を中心に- |
5月12日(土) | 招請講演3 | 105 | Global trends in management of urticaria and allergic rhinitis |
5月12日(土) | 特別講演5 | 200 | アレルギーに関与する基礎免疫の進歩1-IL-18とIL-33で誘導されるアレルギー性炎症- |
5月12日(土) | イブニングセミナー1 | 400 | 上気道・下気道の気道炎症 |
5月12日(土) | 教育講演1 | 120 | アレルギー疾患に対する補完代替医療のエビデンス |
5月12日(土) | 教育講演2 | 220 | 慢性咳嗽の診療 |
5月12日(土) | 教育講演3 | 200 | アレルギーと自己炎症症候群 |
5月12日(土) | 教育講演4 | 180 | 好酸球性副鼻腔炎の病態と臨床 |
5月12日(土) | 教育講演5 | 180 | 汗とアレルギー |
5月12日(土) | 教育講演6 | 200 | 細菌ワクチンの臨床免疫学:今後の定期接種化を見据えて |
5月12日(土) | 教育講演7 | 100 | Aireと自己免疫疾患 |
5月12日(土) | 招請講演4 | 50 | Explore a new approach to prevent and manage severe drug hypersensitivity reactions |
5月12日(土) | 教育講演8 | 150 | 二次免疫組織の人工的構築 |
5月12日(土) | シンポジウム1 | 150 | アレルギー診療の連携:臨床各分野間の相互理解と現状 |
5月12日(土) | シンポジウム2 | 58 | (日本眼科アレルギー研究会)重症アレルギー性結膜疾患と免疫抑制剤点眼 |
5月12日(土) | ランチプログラム1 | 290 | 高齢者喘息とCOPD「鑑別診断と長期コントロール」 |
5月12日(土) | シンポジウム3 | 395 | アトピー性皮膚炎治療の新たな展開 |
5月12日(土) | シンポジウム4 | 189 | 好酸球増多症候群とその周辺疾患 |
5月12日(土) | イブニングセミナー2 | 280 | ガイドラインに載らない蕁麻疹診療のこつ |
5月12日(土) | ミニシンポジウム1 | 80 | 好酸球/サイトカイン、ケモカイン |
5月12日(土) | シンポジウム5 | 170 | バイオマーカー |
5月12日(土) | ランチプログラム2 | 150 | アレルギー性炎症病態からみる抗IgE抗体療法の最新の知見 |
5月12日(土) | シンポジウム6 | 170 | リモデリングの新たな視点 |
5月12日(土) | シンポジウム7 | 95 | 疾患感受性遺伝子解析とアレルギー疾患の発症・進展防止への課題 |
5月12日(土) | イブニングセミナー3 | 150 | Diagnosis and Treatment of HAE |
5月12日(土) | シンポジウム8 | 105 | 特発性肺線維症と慢性過敏性肺臓炎 |
5月12日(土) | シンポジウム9 | 300 | 口腔アレルギー症候群と食物依存性運動誘発アナフィラキシー |
5月12日(土) | ランチプログラム3 | 250 | 喘息治療におけるロイコトリエン受容体拮抗薬の最新知見~テーラーメイド治療を目指して~ |
5月12日(土) | シンポジウム10 | 320 | 免疫療法 |
5月12日(土) | シンポジウム11 | 300 | 重症喘息患者での背景因子と治療 |
5月12日(土) | イブニングセミナー4 | 250 | 乾癬における生物学的製剤の応用と展望 |
5月12日(土) | シンポジウム12 | 80 | 食物アレルギーに関与するメディカルパートナーをいかに育てるか |
5月12日(土) | シンポジウム13 | 85 | 地域で見守るアレルギー疾患 |
5月12日(土) | ランチプログラム4 | 150 | アレルギー疾患における特異的IgE抗体検査法の変遷と高感度アレルギー検査法の臨床的有用性に関する検討 |
5月12日(土) | シンポジウム14 | 80 | アレルギー疾患のストレスマネージメント |
5月12日(土) | 教育講演9 | 130 | 抗アレルギー薬の適正使用に向けて |
5月12日(土) | イブニングセミナー5 | 210 | 小児のアドヒアランスを高めるAD治療 |
5月12日(土) | ミニシンポジウム2 | 190 | 成人気管支喘息1 GJ、疫学 |
5月12日(土) | ミニシンポジウム3 | 200 | 成人気管支喘息2 基礎 |
5月12日(土) | ランチプログラム5 | 206 | アトピー性皮膚炎のトピックス:アトピー性皮膚炎の発症とバリア機能 |
5月12日(土) | ミニシンポジウム4 | 60 | 自己免疫疾患 |
5月12日(土) | ミニシンポジウム5 | 225 | 小児気管支喘息1 |
5月12日(土) | イブニングセミナー6 | 210 | アトピー性皮膚炎外用療法を再考する-“Tight but Safe control”の意義とタクロリムス外用薬の位置づけ- |
5月12日(土) | ミニシンポジウム6 | 120 | アトピー性皮膚炎 |
5月12日(土) | ミニシンポジウム7 | 140 | 食物アレルギー1 |
5月12日(土) | ランチプログラム6 | 120 | 食物アレルギー診療ガイドライン2012の実地臨床への応用 |
5月12日(土) | テーマ館講演1 | 130 | COPD治療薬New-LABA インダカテロールの効果と期待 |
5月12日(土) | ミニシンポジウム8 | 90 | アナフィラキシー/化学物質過敏症 |
5月12日(土) | スイーツセミナー1 | 100 | エピペン処方医師登録講習会 |
5月12日(土) | ランチプログラム8 | 140 | Urticaria Impact Management and International Guidelines |
5月12日(土) | スイーツセミナー2 | 170 | 小児のアレルギー疾患と睡眠 |
5月12日(土) | ランチプログラム7 | 120 | Optimal treatment of asthma |
5月12日(土) | テーマ館プログラム | 30 | アレルギーエディケーターによるスキンケア教室 |
5月12日(土) | テーマ館プログラム | 40 | アレルギーエディケーターによるスキンケア教室 |
5月12日(土) | テーマ館プログラム | 40 | 医療従事者のための好感をもたれるメイクアップ法 |
5月12日(土) | テーマ館内プログラム1 | 100 | 免疫療法の実際~皮下注射による免疫療法(SCIT)の手技を中心に~ |
5月13日(日) | 会長企画プログラム | 65 | 総合アレルギー医の育成 |
5月13日(日) | 特別講演6 | 110 | アレルギーに関与する基礎免疫の進歩2-アレルギー、錯綜するシステムの変調の中のマスト細胞- |
5月13日(日) | シンポジウム15 | 325 | アレルギー疾患のステロイド治療 |
5月13日(日) | 招請講演5 | 230 | Pathogenesis and Prevention of Food Allergy |
5月13日(日) | WAO/JSA合同シンポジウム | 85 | WAO – JSA Lecture |
5月13日(日) | 教育講演10 | 190 | アレルギー疾患のガイドライン |
5月13日(日) | 教育講演11 | 320 | アスピリン喘息の最新情報と治療 |
5月13日(日) | 教育講演12 | 400 | 食物アレルギーの最新治療 |
5月13日(日) | 会長企画講演 | 200 | メタボリックシンドローム病態解明の進歩と免疫・アレルギー疾患との関わり |
5月13日(日) | 教育講演13 | 180 | 光アレルギーの診断と治療 |
5月13日(日) | シンポジウム16 | 250 | COPDと喘息:治療の接点 |
5月13日(日) | 教育講演14 | 100 | アレルギー性鼻炎の診断におけるピットホール |
5月13日(日) | 教育講演15 | 80 | 感染症とアレルギーの新しい視点-Neutrophil Extracellular Traps(NETs) |
5月13日(日) | モーニングセミナー1 | 180 | アトピー性皮膚炎の外的・内的増悪因子アップデート |
5月13日(日) | シンポジウム17 | 290 | 重症喘息の背景と治療戦略 |
5月13日(日) | シンポジウム18 | 265 | 小児の上気道・下気道炎症 (小児における one airway one diseaseの病態と管理) |
5月13日(日) | ランチプログラム9 | 290 | NEXTstage of asthma treatment |
5月13日(日) | 専門医教育セミナー1 | 220 | 【内科】気管支喘息と関連疾患 |
5月13日(日) | 専門医教育セミナー2 | 【皮膚科】皮膚アレルギー疾患の治療-アトピー性皮膚炎- | |
5月13日(日) | 専門医教育セミナー3 | 【基礎】免疫学・アレルギー学の基礎 | |
5月13日(日) | 専門医教育セミナー4 | 【小児科】小児アレルギー疾患 | |
5月13日(日) | モーニングセミナー2 | 90 | 漢方とアレルギーの新しいエビデンス |
5月13日(日) | シンポジウム19 | 80 | 重症薬疹の診断と治療 |
5月13日(日) | シンポジウム20 | 90 | 思春期喘息の特徴と悪化因子:どう治療し、予防するか? |
5月13日(日) | ランチプログラム10 | 170 | 包括的アレルギー診療における喘息治療のあり方 |
5月13日(日) | ミニシンポジウム9 | 110 | 成人気管支喘息4/小児気管支喘息2 |
5月13日(日) | ミニシンポジウム10 | 150 | 成人気管支喘息3 臨床 |
5月13日(日) | モーニングセミナー3 | 120 | 小児アレルギー性鼻炎 |
5月13日(日) | シンポジウム21 | 260 | 小児気管支喘息治療・管理ガイドラインに基づいた治療 |
5月13日(日) | シンポジウム22 | 370 | 経皮感作とアレルギー |
5月13日(日) | ランチプログラム11 | 270 | ADのかゆみを考える |
5月13日(日) | シンポジウム23 | 260 | スギ花粉症治療の最前線 |
5月13日(日) | シンポジウム24 | 70 | アレルギー疾患が労働勉学およびQOLに与える影響:現状と対応 |
5月13日(日) | シンポジウム25 | 100 | 「知っておきたい」アレルギーの話~看護ケアに必要な知識あれこれ~ |
5月13日(日) | 世界喘息デー | 300 | ガイドラインの活用術 |
5月13日(日) | ランチプログラム12 | 300 | 食物アレルギーの日常診療における特異的IgE検査の活用 |
5月13日(日) | シンポジウム26 | 90 | 認定小児アレルギーエデュケーター制度の現状と展望 |
5月13日(日) | シンポジウム27 | 280 | 食物アレルギー診療ガイドライン |
5月13日(日) | モーニングセミナー4 | 210 | 食物アレルギー Management of food allergy |
5月13日(日) | ミニシンポジウム11 | 140 | 花粉症/鼻アレルギー |
5月13日(日) | ミニシンポジウム12 | 170 | 食物アレルギー2 |
5月13日(日) | ランチプログラム13 | 205 | 花粉症対策夏の陣~眼科医の眼、皮膚科医の眼~ |
5月13日(日) | ミニシンポジウム13 | 220 | 食物アレルギー3 |
5月13日(日) | ミニシンポジウム14 | 45 | 薬物アレルギー |
5月13日(日) | ミニシンポジウム15 | 55 | 皮膚アレルギー(アトピー性皮膚炎を除く) |
5月13日(日) | ミニシンポジウム16 | 56 | その他1 |
5月13日(日) | スポンサードセミナー | 100 | アレルギー疾患の最新の知見と漢方の位置付け |
5月13日(日) | ランチプログラム14 | 120 | 免疫療法について 特に小児領域における免疫療法を実施する際の問題点・注意点など~ |
5月13日(日) | ミニシンポジウム17 | 20 | その他2 |
5月13日(日) | スイーツセミナー3 | 50 | エピペン処方医師登録講習会 |
5月13日(日) | ランチプログラム16 | 160 | 小児アトピー性皮膚炎における外用療法と注意すべき皮膚感染症 |
5月13日(日) | ランチョンイベント | 75 | |
5月13日(日) | ランチプログラム15 | 90 | アレルギー性鼻炎治療のあり方と今後の展望 |
5月12日(土) | テーマ館プログラム | 30 | アレルギーエディケーターによるスキンケア教室 |
5月13日(日) | テーマ館内プログラム2 | 90 | パッチテストの実際~日常診療でパッチテストをうまく行っていくためのコツとは~ |
2012年5月 片山一朗
第35回皮膚脈管膠原病研究会
第35回皮膚脈管膠原病研究会
大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗
2012.2.16-17 東京(京王プラザホテル)
土田哲也教授(埼玉医大皮膚科)
毎年恒例の皮膚脈管膠原病研究会に出席した。今回は伊丹始発の羽田行きに乗り、なんとか血管炎のセッションに間に合った。済生会中央病院の陳科栄先生、聖マリアンナ医科大学の川上民裕先生、北里大学の勝岡憲生先生などの熱い討論を大いに楽しんだ。特に抗リン脂質抗体症候群の最近の病因論やワーファリンの使用法など大いに参考になった。
午後は壊疽性膿皮症とバイオロジックス療法、IgG4関連Mikulicz病の話題、SLEなどの新しいトピックスが発表され、初日の最終セッションは私もシェーグレン症候群関連の座長を務めた。2日目は皮膚筋炎、強皮症、成人Still病関連の演題が発表された。特に新しい自己抗体(TIF1γ)の悪性腫瘍合併皮膚筋炎の早期診断での有用性に関してはホットな討論が繰り広げられ、今後の日常臨床での測定への普及が望まれる。大阪大学皮膚科からは糸井沙織(水疱と白斑をともなった男子SLE),中野真由(トシリズマブによる好中球性皮膚症Paradoxical SLE)、北場俊(悪性腫瘍を伴わない皮膚筋炎におけるNSEの意義)、田中文(Flame figureを認めた蕁麻疹様紅斑)の四演題が発表され、いづれも多くの質問、意見が出され得るところも大きかった。
本研究会は我々にとっては二世代以上前になる西山茂夫先生(北里大学名誉教授)、植木宏明先生(川崎医大名誉教授)、坂本邦樹先生(奈良医大名誉教授)など錚々たる先生達が中心になって設立された会で、奇しくも私が医者になった年に第一回が開催された。80年代当時は膠原病のみならず血管腫や腫瘍などの演題も多く出題され、多くの高名な先生方が熱い議論をされていたのが若い私にとり刺激的でまた診療や研究意欲を大いに高めてくれた。この会はスライド一枚で問題点を呈示し、十分な議論を行うことがポリシーであり、最盛期には夜10時を過ぎても会が終了せず、会長の先生がやきもきする姿を今も懐かしく思い出す。昨今インターネットの普及により多くの情報を瞬時に手に入れることが可能な時代になり、また画像診断なども普及してきたが、やはり臨床の現場の最前線で患者を診る医者が本音で病気の成り立ちや治療を討論することが若い先生方にはなによりの勉強になるかと考えた次第である。大学院改革や初期研修制度の導入前後のある時期、世代交代と重なり、一時的にこの会もやや勢いを失いつつあったが、ここ2〜3年は若い世代の参加が徐々に増加し、熱い議論で会場が盛り上がることも増えてきたと感じる。臓器別診療が主流の現在、患者の皮膚から得られる情報を治療にフィードバックできる皮膚科医の存在価値は益々重要になってきている。是非教室の若い先生もこの会に参加して、今膠原病、血管病変の診療に何が求められているかを肌で感じて頂き、討論の輪に積極的に参入して頂きたい。
2012年
第28回日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会
第28回日本臨床皮膚科医会総会・臨床学術大会
片山一朗
2012.4.21-22 博多(ホテルニューオータニ博多)
会長:津田眞五(津田皮膚科クリニック)
昨年に引き続き、日本臨床皮膚科医会臨床学術大会に出席した。昨年の27回大会は笹川征雄先生が大阪で開催され、過去最高の参加者であったそうだが、今年はさらに多くの会員でフロア、会場が溢れかえっていた。
この大会(学会とは呼ばない)はもともと開業の皮膚科の先生が中心になって運営されており、勤務医、大学関係者はあまり参加しない会だったが、昨年からかなり多くの勤務医の先生の参加が見られるようになってきた。その理由としては会長のカラーを打ち出したプログラムが増え、必然的に臨床の第一線の現場で患者を診る医者であれば、誰にでも声がかかるようになってきたためかと考える。私も薬疹のシンポジウムに呼んで頂き、薬疹の皮疹や検査成績の診方を講演させて頂いた。このセッションでは勤務医として国立がんセンターの山崎先生は最近患者が増加し、また治療に苦慮する分子標的薬による皮膚障害の管理法を、また開業医として松山市の町野先生がサプリメントによる薬疹を多数呈示された。総会ではあまり聞けないタイプの薬剤アレルギーの最近の話題を聞くことができた。また宮崎県皮膚科医会による帯状疱疹の疫学調査、加水分解小麦石鹸によるアナフィラキシーの取り組みや診療報酬に関する話題などいづれも充実した内容だった。今回はさらに韓国、中国、インドネシア、タイの皮膚科の先生がそれぞれの國で問題となっている皮膚疾患の話題を講演された。皆さん興味深い感染症の話題が多かったが、特に大洪水に見舞われたタイの救援活動における皮膚科医の活躍を述べられたSindhvanada教授のお話しは昨年の東日本大震災時の皮膚科医の活躍の話と重なり、胸に迫るものがあった。
ポスター賞は笹川先生の「靴の中の気候と白癬」、浅井俊也先生の「非定型的成人手足口病」、神奈川県皮膚科医会のイボに関するアンケート調査などが受賞されたが、いづれも多忙な開業医の先生方による立派なお仕事であり、心からお祝いしたい(実際私が投票したポスターが金賞、銀賞を受賞された)。
懇親会は多くの懐かしい先生方と旧交を温めることができ、楽しい時間を過ごすことができた。某教授との話で「開業の先生方による大会がこれだけ充実してくると日本皮膚科学会もおちおちしておれない」という言葉が印象に残った。
今回は大阪大学からは私と室田浩之先生のみの参加であったが、若い先生も聴講するに値する学会と考える。
2012年
Drug Hypersensitivity Meeting 5
Drug Hypersensitivity Meeting 5
2012年4月11日〜14日
Munich, Germany
花房崇明
演題名
Evaluation of drug-specific T-cell population by flow cytometric drug-induced lymphocyte stimulation test
Takaaki Hanafusa M.D., Ph.D.
ドイツで行われたDrug Hypersensitivity Meeting 5(DHM5)に参加しました。前回2010年にローマで行われたDHM4に続き、私の大学院の指導教官の小豆澤先生と二人で2回連続の参加です。今回私自身は、米国の研究室見学(4/1-4/7)から帰国後、中2日での渡欧でしたが、意外に時差に苦しむこともなく、ミュンヘンに到着しました。DHM5はその名の通り、薬剤アレルギーにfocusした学会です。前回と同様、米国からの演題は少なく、日本、ヨーロッパ、台湾からの演題が中心です。フランスのProf. Roujeauを始め、薬剤アレルギーの分野でご高名な先生方が一同に会し、質疑応答も盛んで、大変刺激的な学会でした。DHM4からDHM5の2年間の、この分野の進歩を肌で感じ、自分の知識を最新のものにupdateするとともに、自身の研究の課題が分かりました。
私自身の演題は口頭発表に採択していただきました。総231演題中、口頭発表に採択されていたのは、たった12演題でしたので、大変光栄で嬉しかったです。海外での英語の口頭発表は初めてで緊張しましたが、直前に米国の研究室訪問をして度胸を付けていたことが良かったのか、発表自体はまずまずのqualityだったのではないかと思います。ただし、質疑応答でスムーズに答えるのは(引き続きの)今後の課題です。
夜はもちろん毎晩ドイツビールを飲んで、他大学の先生と交流を深めました。小豆澤先生はポスドクとしてドイツに留学していたため、ドイツ語が堪能で、レストランでの注文の時などは頼りっぱなしでした。ドイツ料理は日本人の舌には合わないですが、そんなことは忘れて、前回DHM4で顔を覚えていただいて以来お付き合いをさせて頂いている先生、今回初めてお話させていただいた先生と、楽しい時間を過ごしました。(海外でのお酒は美味しく、ついつい飲み過ぎ、帰国後10日間はお酒が欲しくありませんでした。)
DHM6は2014年にスイスで行われる予定です。このDHM5では、ヨーロッパはもちろん、台湾の研究グループの勢いを感じました。日本人研究者として、もっともっとよい仕事をしてDHM6でその成果を発表したい、という気持ちで帰国しました。
2012年4月 研究生 花房崇明
Keystone Symposia 2012
Keystone Symposia 2012 “Fibrosis” に参加して
壽 順久
演題名:
Periostin, a matricellular protein, accelerates wound repair by activating dermal fibroblasts 壽 順久
ぶきたの学会見聞録
写真1:Big Sky Resortの写真です。非常にきれいなところでした。中央に鋭くそびえるのが、ロッキー山脈のLone peakです。かっこよかったです。
今回、Periostin and Wound healingで共同研究させていただいた佐賀の出原教授のお誘いで、2人でモンタナ州のBig Sky Resortで3月29日~4月4日に開催されたKeystone symposiaに参加してきました。正直僕みたいな下っ端が、他大学の教授と、しかも2人きりで海外の学会に参加する、というシチュエーションは、気が重い以外の何者でもありませんでした。3月28日朝9:00に自宅を出発し、伊丹→羽田→成田→シアトル→デンバーに着いたのが、ちょうど24時間後のアメリカ時間の3月28日夜19:00でした。デンバーのホテルで一泊し、翌朝6:00に出発、デンバー→ボーズマン空港→バス移動→Big Sky Resortに到着がちょうど12:00です。これまでいくつかの海外の学会に参加させていただきましたが、これほどしんどい移動はありませんでした。会場は、びっくりするぐらいのど田舎で、スキーリゾートのホテルのワンフロア(でっかい結婚披露宴会場くらいのサイズ)1部屋のみです。そこに大体400人弱(日本人は20人ほど)の参加者が入れるようになっています。どこにも行くところはありません。ただでさえ重い気分で出発した学会でしたが、到着時には参加するのも嫌な位テンションはだだ下がり状態でした。
写真2:Northwestern大学のJohn Varga先生のラボのエース、Jun Wei先生です。僕のつたない英語にも気軽に対応してくれました
そんな中学会がスタートし、僕は初日は後ろから3列目くらいに座り、ボーっとしていましたが、驚いたのは、前の席をみんな狙って着席し、ほぼ全ての席がぎっしりと参加者で埋まり、みんなが必死になって講演を傾聴し、ディスカッション時間にはみんながこぞって質問する、という参加者のスタンスでした。もう一つ驚いたのが、Fibrosisというもの、そのものです。僕という一人の皮膚科医がFibrosisと聞いてイメージするのは、創傷治癒やケロイド、強皮症といったところで、あとせいぜい肺線維症が浮かぶくらいです。この学会は違うんです。心、肺、肝、腎、そして皮膚と、ありとあらゆるジャンルの臨床と研究を行っている人たちが、Fibrosisに関していろんな角度から議論する会なんです。むしろ皮膚のFibrosisに関しては、少ないほうでした。皮膚の線維化を少しかじっただけの僕としては非常に衝撃的でした。気づいたら数時間で僕自身も activateしてしまい、午後は真ん中の席をなんとか確保して、わからない英語を必死になって聞いていました。そして翌日からは、学会が始まる1時間前に会場に行き、前の席をとり、午前午後3時間ずつ必死に話を聞いてメモをとる4日間でした。最近研究のアイディアが浮かばず、スランプ状態だったんですが、3日目くらいからいろいろなアイディアがどんどん浮かんできて、非常に有意義な5日間となりました。あまり自慢できることではないですが、これほど必死になった学会はいままでにありませんでした。また東大の循環器の先生や広島大学のインテグリン研究室の先生とも知り合いになり、自分が全く知らない世界を知るいい窓口となる学会でした。
写真3:今回お知り合いになった先生方です。左が広島大学の西道先生で、インテグリンの専門家です。いろいろと教えていただきました。中央の方はNorthwestern大学小児科の林田先生です。腎硬化症の専門家で、こう見えても准教授でらっしゃいます。慶応大学からChicagoに留学し、そのまま居ついてしまった女傑です。
自分のポスター発表はというと、皮膚科領域の先生が少なかったにもかかわらず、心臓や肺、腎臓、そして癌のFibrosisをやっている先生方から多数質問を受け、英語の得意でない僕はしどろもどろでした。(だいぶんと出原先生に助けていただきました)
学会は朝8:00から11:30くらいまであり、午後は一旦休憩、夕方17:00から再開し、20:00に終了といった感じで、昼間は一応ポスター鑑賞になっているんですが、おそらくスキーでもしてろよ、というものでした。なにも道具を持っていってませんでしたが、僕も最終日にはスキー板と靴だけ借りて、ジーパン姿でスキーをしてきました。食事は悲惨でした。5日間ほぼパンとバーガー(マシだったのが、エルクバーガーとバッファローバーガー)で、ライスは存在しませんでした。今まで行った学会で一番悲惨な食事でした。
まとめると、今まで行った学会の中で、最も勉強になり活性化した学会であり、最もしんどくてめしの不味い学会でした。Keystone Symposiaは様々な場所で開催される学会で、アメリカ3大学会(ほかゴードン、コールドスプリングハーバー)に挙げられるほどの先端的な学会のようです。また是非行きたいですが、もう少し行きやすくて食事がおいしいところでの開催を願う学会でした。皆さんもぜひ一度味わってみてください。
(正確には、学会ではなく、会議、研究会が正しいと思います。)
2012年
光皮膚科学研究会設立大会
光皮膚科学研究会設立大会
大阪大学大学院医学系研究科分子病態医学
皮膚科教授 片山一朗
日本の皮膚の光生物学研究は古いようで新しく、1975年に設立されたUV-ABClub(紫外線研究会)に始まる。この会は故佐藤吉昭先生、故三浦隆先生、市橋正光先生が創設され、その後、野中薫雄先生、堀尾武先生、松尾聿郎先生など光生物学を専門とする先生方が次々と参加され、日本の光生物学の発展に寄与された(Visual Dermatol 10:442,2011 市橋正光。光皮膚科学の歩み)がClosedの会であったため、昨年の第40回を区切りとして、今回の光皮膚科学研究会へ引き継がれることになった。私も発起人の一人として第一回の本会に出席し、市橋先生のキーノートスピーチの座長を務めさせていただいた。今後この会の発展に寄与できればと考えている。ただ今回はまだその概要が充分衆知されていなかったためか、若い先生方の参加が少なく、今後光生物学の重要性を若い皮膚科医に広げていくことの必要性を痛感した。皮膚科においては紫外線発ガン、光老化、光アレルギーの研究が主体であるが、臨床においても光線治療は益々重要な武器になりつつある。検査法、診断法と合わせ学ぶことは多い。若い先生方にも今後積極的にこの研究会への参加を勧める次第である。代表世話人になられた上出教授のお話では今後ホームページの立ち上げや、学会への移行のための組織造りなど大変なご苦労があるかと思うが、世話人一同結束して支えて行きたいと考えている。
光皮膚科学研究会設立大会
2012.3.25 東京(東京慈恵医大)
上出良一教授(東京慈恵医大第三病院皮膚科)
2012年