The 34th International Diploma Course in
Dermatology and Dermatosurgery, Bangkok, Thailand
バンコクからの新しい風
大阪大学大学院医学系研究科
情報統合医学皮膚科学
教授 片山一朗
11月下旬からの1週間、今回で4回目となるバンコクでのDCDD(Diploma Course in Dermatology and Dermatosurgery)に講師として出席した。今回の参加者は24人とやや少なめであったが、あらたにフィジーから二人目となる方や、東チーモル、パキスタン、カンボジアなどアジア諸国からの参加者がおられた。例年参加者の多いミャンマーからは2人と少なかった(写真1)。友人のヤンゴン総合病院教授のKein Kein ZAW教授の話では、ミャンマーも皮膚科を志望する女性医師が増加しており、産休、育休の問題が現実化しつつあるようで、講義をさせていただいた折の集合写真はで男性医師は准教授、講師クラスの二人のみであとは若手からベテラン医師まですべて女性医師であった。(写真2)。今回のコース参加者の職種は研修医から開業医まで多様であったが、1年間バンコクに滞在し、勉強や、研修に取り組む彼らの姿勢は、昨今日本では見られない熱心さで最終日には全員からのメッセージとティ―カップを頂き、久しぶりの教師冥利の楽しさを味あわせて頂いた(写真3)。このDCDDは以前にも書いたがアジアにおける若手皮膚科医を養成するためJAICA、タイ皮膚疾患研究所(タイ政府)のサポートで今から30年前に当時の小川秀興順天堂大学皮膚科教授(現理事長)がスカイクラブ会長であった安田利顕東邦大学名誉教授(前日本皮膚科学会理事長)とタイのInstitute of Dermatology のPreeya先生を中心に開始されたと聞いている。日本側の講師は鈴木先生や北島康夫先生などの重鎮の方が今年で任期を終えられ、旭川医大の山本明美教授、京都大学の椛島健治教授が新たに参加された。私以外では島田先生や岩月先生、渡辺晉一先生など我々の同世代の先生が講師を務められている。私の前週は山本先生が講師を務められており、FBにその印象を挙げておられた。今年の受講者は、私の話に興味を持っていただいたようで、講義スライドのコピーが欲しいと何人かの受講者から頼まれた。アジアにおける皮膚科のレベルも日本の水準に近くなりつつあるし、研究では中国、シンガポールのみでなく、タイなど日本凌ぐ研究者が育ちつつある。今年の受講者の中にもチャンスさえあれば日本でPhDコースに進みたいという方も何人かおられたが、彼らの視点はアメリカやシンガポールに向いていくかもしれない。帰国後、某教授と話し、した折、マイナー科における女性医師のサポートの重要性に加え、激減しつつある男性医師を取り込むことの重要性、AI診療がごく近い将来診断、診療の分野に参入する可能性やアメリカ型保険制度の導入など高額医療へどう対応していくかなどの話をしたが、今、私の教室にいる留学生やアジアの皮膚科医のActiveな生き方を見ているとあらためて若い皮膚科医に対する教育の重要性を再認識した。皮膚科の若い先生方も留学だけでなく、身近な所からどんどん世界の先生方との交流を深めて頂きたいと思う。我々の次の世代の頑張りに期待したい。
私の講義は以下の内容で1.5時間x9コマを行ったが、日本での講義に比べ、皆さん真剣に話を聞いてくれ、途中でもどんどん質問をしてくれるスタイルで、毎回結構ハードではあるが久しぶりに味合う、心地よい充実感、達成感を伴う講義であった。
Nov. 20 (Mon) | PM | 1) Introduction himself and Allergic skin diseases: 2) Drug eruption, Contact dermatitis, Urticaria |
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Nov. 21 (Tue) | AM
PM |
3) New role of histamine in the skin, 4) Collagen Vascular Disease :Review and SLE, DM 5) Scleroderma, Sjogren’s syndrome |
Nov. 22 (Wed) | PM | 6) Guideline of atopic dermatitis, 7) Itch and stress management, Pruritis and Prurigo |
Nov. 23 (Thu) | AM PM |
8) Pathogenesis and guideline of vitiligo vulgaris 9) Excimer Light treatment of skin diseases |
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The 3rd Indochina Conference of Dermatology
第三回インドシナ皮膚科学会
2017. December 01-02
President. Prof. Tran Hau Khang National Hospital of Dermatology and Venereology; Professor, Hanoi Medical University, Vietnam ベトナム皮膚科学会理事長
タイでの講義に引き続き、ハノイで開催された第3回インドシナ皮膚科学会に参加し、「New and old game players in vitiligo」というタイトルで講演した。この会への出席は一昨年、池田志斈順天堂大学教授を会頭として浦安で開催された日中韓皮膚科学会にて大阪市大の鶴田先生から紹介して頂いた、今回の会頭であるハノイ医科大医学教授のProf. Tran Hau Khang先生からの招待であり、白斑などがメイントピックスである学会を楽しませて頂いた。日本からは池田、鶴田教授とが参加されていたが、懇親会の席ではホーチミンを拠点としてカンボジア、ラオスなどで感染症の疫学研究をされている甲斐先生のグループや日本に留学されていた先生方とも知り合いになることが出来た。この学会が開催されたハノイは初めての訪問で、旧共産国とは思えないような活気と多くの食材で溢れた都市であり、また学会参加者の多くは若い女性医師が中心で、これからは、これら若い先生方の活躍でアジアの皮膚科学の発展が大いに期待されるかと思う。展示ブースは美容皮膚科関連が多かったが、若手の大学勤務医は優秀な方が多く、また感染症や重症皮膚疾患の病態研究や治療にも熱心であり、タイ、ミャンマーなどの大学皮膚科と良く似た傾向のようである。今後も是非インドシナ各国の皮膚科の先生方との交流が深まることを願う次第である。